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07 常闇の谷 2

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

ナナシの予想に反し駐屯兵舎の武装神官が待っていたのはルーン総本山からやってくる第8槍騎士隊120名だった


武装神官は黒鎧の魔物に警戒と槍騎士隊の指示に従うように命じられていただけで彼らが到着するまで動くに動けなかったのだ


絶壁沿いに移動していたナナシは今までナナシのいる方向からは見えなかった谷間がある事に気が付く


その谷間は10メトルほどの幅で絶壁を貫くように奥へ奥へと曲がりくねって伸びていた


「もしかしたら絶壁の向こう側へ続く通り道かもしれない」


ナナシは谷間に踏み込んでいく


ムギュ


ナナシの足元でスライムを踏んだような違和感がした


ルーンの建物から聞いたこともない音がなる


ウィーーーンウィーンウィーーーン


「しまったぁ。結界だ」


ナナシの頭上から槍が降ってくる


地面が抜け、落とし穴が開く


普通絶壁の通り道なら門番とかいるよね


あまりに無防備なのはおかしいよね


普段のナナシならそう考える


空腹と睡眠不足、疲労困憊のナナシは・・・


そんなことゆっくりと考える余裕もなく空中を蹴って飛び上がる、黒龍剣で落ちてくる槍を両断する、

谷間の壁を蹴って奥へ奥へと走り込む


『なるほどのう

人族とは元々飛ぶようにはできていないからな

飛ぼうとしても飛ぶイメージができないのか

良いか小僧

飛ぼうと思うな

天翔けるのじゃ』


いえ、もう今やっていますけど、神龍様

心の中で突っ込むナナシだった


谷の奥は思った以上に広かった


曲がりくねった10メトルほどの通路を抜けると左右に大地が広がって黒い絶壁に挟まれるように森が見える


川も流れ、遠くには小さな湖も見える


ナナシは絶壁の上へ昇ろうと空中を蹴け上がるが、もう少しで絶壁を抜けられるという所で急に空気が重くなる


上に進めなくなる


黒龍剣を使い強引に空気を切り裂くと空気の切り口から突風が吹き出しナナシは急降下する


再度挑戦しようとした時、空飛ぶ魔物が襲ってくる


スカイスネーク 羽の生えた蛇の魔物


長さ3メトルほどのスカイスネークが十数匹、いつの間にかナナシを取り囲む


ナナシは鞘を鎧に変えて黒龍剣で迎え撃つ


早い


スカイスネークが一気に距離を詰め、大きく口を開け鋭い牙で全方位から襲い掛かる


ナナシは更に急降下してスカイスネークの方位から抜け出す


『なるほどのう

中々に面白い場所じゃ

良い狩場ではないか、ここは』


ナナシは自然落下を止め、再度空を蹴って上昇する


すれ違いざまに二匹のスカイスネークを両断すると後方のスカイスネークが毒液を吐く


思わず顔を手で庇うと体当たりをまともに受けてしまい、ナナシは地上まで吹き飛ばされる


慌てて立ち上りスカイスネークの追撃に備えるが、なぜかスカイスネークはそれ以上攻撃してこない


『油断するな小僧

奴らの縄張りの外に出たから追ってこないだけじゃ

別の魔物がおるぞ』


ナナシはゆっくり警戒しながら移動し森の中に隠れる


「神龍様

ここは何なのでしょうか」


『【迷宮】じゃな

もっとも大したことはない【迷宮】だがのう』


【迷宮】閉ざされた異空間

迷宮核から無限に魔物が発生する

迷宮主を倒すか出口を見つけないと空間の外へ出られない


「【迷宮】

神龍様、ここ【迷宮】なのですか」


『空に空気の膜がある

入口に結界、唐突な魔物の出現の仕方

どう考えても【迷宮】だな』


ナナシの足元から龍の尾のような影が伸び、周辺の木々を薙ぎ払う


バリバリバリィ


木に擬態していた木鹿が吹き飛ばされる


「これ食べられるでしょうか。神龍様」




夜が明けた


ホムラ枢機卿はアチコチ枢機卿と共に痛む体を押して早朝より【空中庭園】と呼ばれる場所へ来ていた


ここは総本山の中ほどにあり、奥へ行けばルーンの祭事を行う奥院があり、手前は一般参拝や礼拝を行う場所になる


この【空中庭園】は小高い丘に立ちルーンの街が一望できる公園であると同時にルーンの行政を動かす会議の場でもある


庭園のあちこちにガゼボと呼ばれる東屋(あずまや)が建っていて関係者が日々集まって会議や情報交換を行っている


各ガゼボには飲み物の手配をする給士や連絡要員がそれぞれに控えている


今回、席に付いた者は四名


ホムラ卿とアチコチ卿そして聖騎士アレン


そして先に来て彼らを待っていたルーンの槍騎士長ダンダリアン


アチコチ卿が口火を切る


「早朝からお集まりいただき感謝する。事は一刻を争う

先ずはホムラ卿 ゴール大公国から飛ばされてきた黒鎧の魔物の件を」


「キースと直接連絡が取れた

【龍の剣】を抜いたのは西外教会で臨時雇いのナナシという少年

ゴールの騒乱を起こしたのはネクロマンサーの魔族

ナナシ少年はキースたちと協力して魔族と戦ったそうだ」


ホムラの説明を聞く三人はけげんな顔をする


特に直接黒鎧の魔族と戦ったアレンは


「決着は使徒モエナがネクロマンサーをルーンの大穴へ飛ばして勝利に終わる」


ホムラはあえて使徒モエナが【浄化の虹】でゴーラット全域を浄化したことを伏せる


これは次期法王選考にも関わる別問題にも繋がるから


「だがその時ナナシ少年がネクロマンサーに捕まってルーンの大穴に一緒に飛ばされている。その後はゴールでは不明だ

補足すれば、その時鎧は白かったそうだ。更に未確認だが、以前の剣の所有者は前魔王軍の軍団長黒騎士らしい」


聖騎士アレンがホムラの話を引きついで話し出す


「俺の戦った魔物は黒鎧を着ていた。鎧は確かに特級品だが使い手は素人だな

そうか龍の剣だったのか」


「となるとネクロマンサーに体を乗っ取られたか黒騎士に心を呑まれたか」


ダンダリアンがアレンの言葉を受けて答える


「アチコチ卿

【常闇の谷】の状況はどうなっているのですか」


「寄宿学校長コン・リンザイ師が今朝から第8槍騎士隊と共に駐屯兵舎へ向かわれた


これが今【常闇の谷】に潜っている新人のリストだ」


アチコチがそれぞれに紙を配る


「黒鎧の魔物が【常闇の谷】に侵入したのは間違いない


あの【迷宮】は、出口は一つだが入口は複数ある


結界を抜け、罠を破って侵入された」


「狙いは勇者か」

アレンが忌々しげに答える


「ダンダリアン騎士長

黒鎧の魔物が【常闇の谷】に入った以上、多数で【迷宮】に挑むのは無理だろう

第8槍騎士隊から精鋭を5から6名選抜し、新人パーティと付添いの盾神官を救出して、【迷宮】を脱出させよ」


ダンダリオンは立ち上りルーンの印を組む


「待ってくれ。アチコチ卿

俺も行くぞ」


「もちろんだ。アレン殿

体調は大丈夫なのか」


「万全とは言わないが、回復薬もルーンの癒しも受けた

【迷宮】の中なら遠慮はしない、遅れはとらない」


読んでいただきありがとうございます

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