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04 脱出 1

聖騎士アレンは大揺れの中、法王ルゥイ3世の元へ走っていた


南街の住民はルーン山の中腹が噴火し爆炎が上がるのを棒立ちとなって見ていた


法王ルゥイ3世はゴール大公国で変事発生の一報を受けホムラ枢機卿に対応を一任、執務室で報告を待っていた時に大揺れに襲われる


ホムラ枢機卿は倒れてきた棚の下敷きとなり意識を失っている


総本山は現在大混乱に至っていた



総本山の行政を預かるアチコチ枢機卿は法王ルゥイ3世の無事を確認すると各地区の状況と安否確認に部下の神官を走らせる


「マルル様の安全が早急に確認されたは吉報なれど、揺れで【水鏡】が使用不能とは」


「アチコチ卿

俺は噴火被害が心配だ。南街へ行く

魔物はいないだろうが避難は早い方がいい」


「アレン殿

ルーンの盾第3師団を向かわせている現地で合流してくれ」


アレンはルーンの印を組むと部屋を飛び出していった


「疾風のアレン

まったく通り名そのままな聖騎士殿だな

しかしルーン山が噴火するなど聞いたこともなければ記録にさえ残っていない

現地がどうなっているか判らん以上、速やかな聖騎士投入は正解かもしれん」


アチコチはテラスから見えるルーン山から立ち昇る煙が薄れていくのを見て、南街避難をこれ以上広げずに済むと安堵すると同時に、吹き飛ばされた山石がどんな影響を及ぼすかと危惧していた



ナナシは想像以上の大爆発に困惑していた


黒龍剣は界壁を抵抗なく切ることができたが、深く切っても傷になるばかりで穴が開くわけではない

ならばインパクトスラッシュで砕こうとしたが逆にナナシが爆圧で吹き飛ばされそうになる


『火力が足りんな』


黒龍王は何て事ない様に言う


龍剣と同化した神龍様はナナシがなぜこんな簡単な事もできないのか理解できない風だった


「普通出来ませんよ神龍様

普通の人族は壁に立つなんてことさえ出来ないんですから」


『何を言う。黒騎士とて元人族だが

普通の人族が【龍剣の継承者】になれる訳がなかろう』


衝撃の事実発覚である


あのドクロ騎士が元人族


元々々・・・


「でも黒騎士は僕が魔族だから【龍剣の継承者】になったと・・」


『だから黒騎士は元人族のスケルトンじゃ

龍剣を抜いた時は確か・・???とにかく魔族じゃな』


「僕は魔族でもスケルトンでもありません

今も人族です」


『それが龍剣を抜いて、あやつめ魔王アッカバッカの腰巾着になりおった』


「黒龍王様は魔王の事詳しいんですか」


『・・・・・家族会議の・・・もめ事の・・・

そのような事はどうでもよいわ

今の問題は火力不足じゃ』


火力不足と言われてもナナシは魔法力も聖威も持っていない


『神威があろうが』


神威?


『知らんなら知らんでよい

それは人族として知る必要のない知識

ルーンは人族の創造神なり、世界の創造神ではないし、我ら龍族の創造神ですらない

判らんのなら判らんでよい

ただ今はあるがままに受け入れよ』


黒龍王はそう言うと『✕✕✕✕✕』と唱えた


『ナナシよ

強く念じ【界壁】をぶち破れ』


ナナシは黒龍王の言われるままに剣を【界壁】に振り下ろす


  ドォォォーーーーーーン


界壁に3メトル程の穴が開く

いや、いや、いや、穴はいい、穴は

そのつもりで剣を振るったんだから

だけど、この爆発と揺れは何ですか

煙出ていますけど神龍様



ナナシは走っていた


【龍激】で開いた穴を駆け抜ける


穴の中は煙で何も見えず、半端なく熱い


だが不思議と息は苦しくない、熱も耐えられなくもない熱さだ


しかし、ゆっくりはしていられない


穴は今にも崩れそうだし、火口の中に吸い込まれるように煙風が吹いてくる


まるで壊れた山が元に戻ろうとしている様でナナシは穴がいつ崩れるか気が気ではない


一足で数メトルを走り、足元の岩のゴツゴツも全く気にならない


視界ゼロの穴を駆け抜けルーン山の中腹当りに飛び出すナナシ


時間は深夜、空は曇り空、眼下には飛ばされてくる時見えた街灯りが山を囲むように見える


「意識をしっかり保て

魔封石(タリスマン)じゃ」


魔封石(タリスマン)】      

魔法力を封じる石

人族・魔族を問わず、めまいや吐き気をおこす


ルーン山の外壁は魔封石で出来ていた


ナナシに魔法力がないからなのか、それとも黒龍の鎧が守ってくれているからなのか、ナナシの意識ははっきりしたままだ


山の傾斜に合わせて数十メトルを飛び走り一気に駆け降りる


ルーン総本山南街の人々はルーン山の中腹から立ち昇る煙を見ていた


最初の音と揺れにびっくりしてルーンに祈りを捧げ、その場で跪く人々が多数出たが、その後は煙も徐々に晴れ、人々は落ち着きを取り戻していた


ルーンの盾第3師団が到着し魔封石が降り注いだ地区から優先して避難を始めた頃には避難より、後片付けを優先しようとする人が多数をしめる


そんな時、噴火口から一直線に駆け降りる黒い人影を街人が見つけ指さす


走る距離も速度も常人のものではなかった


ルーンの盾神官が大声で住民に注意を呼び掛け、迎撃に向かう


ナナシが下山した時、周囲をルーンの盾神官によって二重に取り囲まれる


ルーンの盾神官からすれば、突然のルーン山の噴火口からの現れた黒い鎧騎士


怪しさ満載の上に、だれも到達できない高さから降りてきた


人とは到底思えない、魔族か魔物か


何としても無力化せねば


まだ民の避難は済んでいない


ナナシは両手を高く上げ戦う意思のない事を示そうとするが、鎧を着たままで抜身の黒剣を高く持ち上げることになる


その瞬間ナナシの後方の盾神官が二人、ナナシに飛び掛かる


単装槍持ち神官はナナシの左肩を、片手剣の神官はナナシの右足を掃いに行く


ナナシが斜め後ろに気を取られたと思った正面の長槍神官三人がナナシの首筋目掛けて槍を突く


 『 無 礼 者 』


ナナシの足元から黒い影が渦を巻くように伸び周囲の盾神官全員を薙ぎ払う


その刹那、空中に飛び跳ねた盾神官二人がナナシの真上から槍を投げおろし


30メトル以上離れて、女性神官が弓を放つ


薙ぎ払われた神官たちはさらに距離を取ってナナシを取り囲む


全ての攻撃をしのいだナナシは剣を構えざる得なかった


強い


ナナシが港町ユンで知っている武装神官とは動きもスピードも桁違いだ


死人兵はただ数の力で殺しに来るだけだった。


目前の戦士は互いに連帯し助け合ってナナシを殺そうとしている


一瞬でも気を抜けば・・・危うい


読んでいただきありがとうございます。


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