表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/251

ゴール騒乱 17

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

マミューは軽い世話話でもするように話を続ける


「本当に残念ですよ

本来ならゴールがズース城を攻め、落城寸前に人面樹が発芽する予定だったのです

そう正にゴール大公の悲願が成就する時です」


マミューは本心で残念がっている


「その時コティ姫はゴーランド帝国のザイレーン城で人面樹として発芽する

本当に僕はポゥ様になんと言い訳すればいい事か

しかし、聖騎士長と使徒の首を持ち帰ればお釣りが来ますか

オマケに黒騎士の剣まであるのですから」


「黒騎士の剣?」白騎士じゃないの?


モエナが思わずナナシを見る


「ありゃりゃ

知らなかったのですか

騎士もどき君が持っているのは旧魔王軍の親衛団長黒騎士の愛剣ですよ

しかも僕の呪い付きです

早く鎧脱がないと彼寿命尽きてしまいますよ

ケケケケケケケェ」


マミューは楽しそうに笑う


しかし実際のマミューは怒っていた


7年も色々な人族の皮を被ってゴール大公国を裏で操ってきた


幻影将軍ポゥ様の命令は、いずれ成人する勇者をゴールに呼び寄せ混乱の中で葬る事


それが台無しになった


聖騎士長と使徒の首くらい持って帰らないと本当に自分に後がなくなる


「出し惜しみはできませんね

ここは闘技場、闘技場ではよく人族は死ぬのですよ

ましてやこの闘技場が建つ場所はゴール独立戦争最大の激戦地です

立ち上がれ我がしもべ、死人兵よ」


ネクロマンサーマミューの呼び声に答えるように地面からぼろぼろの鎧を着た弓兵や銅剣や槍を構えるグールが現れる


その数100体以上


「まぁ個々の力では皆さんには到底及ばないでしょうが

軍団の力をお見せいたしましょうか」


そう言うとマミューは一直線にキースに向かっていく


「まともに戦えるのはあなた一人でしょう聖騎士長様

後の二人は素人同然ですよ」


「見くびられたものだ

ルーンの聖騎士が

貴様程度の魔族に後れを取るとでも思ったか

他の助力など必要なし

我が単独ですべての魔を打ち滅ぼさん」


キースの武器は【破邪の大剣】


本来キース自身は動き回らず大剣を自由自在に操って魔物を殲滅する


その為同僚の聖騎士ならともかく、他者との連帯は大変難しい


逆に周囲を気にせず思う存分大剣を振るえば絶対無双できるのである


今キースはマミューを引き付け、モエナと白騎士を闘技場から引き離そうとしていた


「ナナシ君

そんな物騒なもの着ていて大丈夫なの」


モエナが引き気味にナナシに尋ねる


「問題ありません

そもそも呪いを受けるような柔な魔道具ではありませんから

それよりキャシュ様が魔族を引き付けてくれている内に人面樹になってしまった人々を弔いましょう」


ナナシは決意を込めてモエナに伝える


もう人に戻れないなら、戻してあげられないのならルーンの民として弔う


ナナシとモエナの結論である


「判ったわナナシ君

私が人々をルーンの元へ送る

それまで死人兵を何とかして」


そういうとモエナは、その場で膝を着き、目を閉じてルーンの祈りを唱えだす


本来死者の魂を弔うには、ルーン教会の祭壇で多くの司祭・神官と共にルーンに祈りを捧げるか、戦場などの特殊な場所では【清めの聖具】を使わなければならない


しかし今はどちらもない上に、近くに死人使いネクロマンサーがいるのだ


ネクロマンサーをキースが倒すか、奴の支配をモエナが超えて魂を弔わなければならない


モエナ命懸けである



その間ナナシは一人で死人兵と人面樹を相手にしなければならない


全方位で攻めてくる死人兵と人面樹


ナナシはモエナを庇うように立ち


白い兜を脱ぎ捨て、手甲足甲を外す


外された兜と手甲足甲は霧となって鎧に吸収される


龍の骨でできた兜は防護力も耐久性もあるが


どうしても死角ができる


手甲足甲も素早い動きを阻害する


これより先は防御を考えては戦えない


シスターモエナも命を懸けるんだ


人面樹が動きを止めた


一定間隔に広がり牢獄の鉄格子のようにナナシたちを取り囲む


死人兵が、規則正しく7匹が横一列で並び、槍を構える


「ウォォォォォォヤァ」


死人兵の掛け声とともに前列の槍持ち死人兵が人面樹の檻の隙間を抜けてナナシ達に向かって走り出す


同時に後列の弓持ち死人兵が弧を描くように弓を射る


ナナシが飛んでくる弓に向かって剣を横一線すると剣先から黒い刃風が飛び出し、弓矢を巻き散らす


返す剣で突入してくる槍持ち死人兵を一閃する


まるで剣先が伸びたように一列に並んで槍を突き出してきた死人兵が両断される


死人兵が一人でもナナシを抜けば、無防備に祈りをささげているモエナはひとたまりもない


現に今、剣持死人兵がナナシの後ろへ大きく廻り込もうとしている


「よいかぁ貴様が受け継ぐ龍剣はぁ

大地を砕き、海を割り、空さえも引き裂く剣だ

龍剣は貴様の願いに答える

すべては貴様がそうありたいと願うことから始まるのだ」


黒騎士クゥの言葉がナナシの心に蘇る


魔力のないナナシでも龍剣なら魔法剣になる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ