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ゴール騒乱 14

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

モエナの大声が聞こえたのかナナシが振り返る


意識が戻ったナナシは混乱していた


さっきまでナナシは洞窟にいて黒騎士と戦っていた


黒騎士に殺されかけた。否、数回は死んでいた。夢じゃなければ


そして目が覚めてもその時のことははっきり覚えている


「龍剣の鞘は鞘にあらず、それは剣を持つ者の鎧となる」


今まさに鞘は解けナナシの体に全身鎧となって完成した


同時に龍剣も形を変え、まるで黒騎士の伸長からナナシの伸長に合わせるように

刀身が短くなる


「龍剣は所有者に合わせて姿を変える」


これが所有者の引継ぎか


黒騎士クゥの言っていた意味がようやく理解できたナナシである


それにしても闘技場の有様は一変している


見たこともない植物、大きい物は7メトルを超えている


そんな植物が闘技場全体に多数生え、貴賓席も観覧席も植物の根によって破壊され

見渡す限り動いている人族はもう誰もいない


いや、確かに自分を呼ぶ声が聞こえた


その時、体全体に【聖威の光】が浴びせられる


光は鎧を抜けナナシの体に吸い込まれる


これはルーンの光、やっぱり僕は魔族じゃない


モエナがびっくりした顔をして植物の陰からこちらを見ている


「シスターモエナ、いったい何が起こっているのですか」


「ナナシ君、意識があるのね、私の事が判るのね」


ナナシは台座から飛び降りてモエナの方へ走る


龍剣を怪植物に横一線すると怪植物は太い幹から真っ二つになって倒れる


ナナシは続け様に怪植物を両断する


だが怪植物の根によって黒く澱んでいた土は、そのまま濁ったままだ


ナナシはモエナと合流する


「ナナシ君は変色した土の上でも何ともないの」


「多分この鎧が守ってくれているんだと思います」


「剣が抜けたのね、ナナシ君どこもおかしい所はないのね」


「ええ、とんでもない悪夢を見ただけです

この植物は何なんですか」


今はナナシの悪夢より目の前の現実を理解したい


モエナは手短に、人が黒く固まり、怪植物になったこと


怪植物は人々を根から取り込んでいること


動ける人は避難したが、下の広場でも騒ぎが起こっていること


幸い?怪植物は根を延ばすだけで動かないし、移動もしない


闘技場に生えている怪植物は60本あまり、龍剣で排除できない数じゃない



ナナシが怪植物を一掃しようと決意した時、次々に怪植物のつぼみがゆっくりと

開きだす


「きゃゃゃゃゃゃ」


開いたつぼみの中には青白く変色した人間の顔があった


その顔の一つが先ほどまでモエナとお茶をしていた人物と気づいて


モエナは思わず後下さる


「ゴール大公様」


風もないのに人面花はうねうねと周囲を見渡すように回りだす。幹がよじれ、根本がよじれ、地中から根が持ち上がる。持ち上がった根が更によじれながら束となり、太い数本の根になって行く

そして束となった根を器用にうねらしながら怪植物が動き始める


「何なのよ。これ」モエナが独り言のようにつぶやいた時、空から剣が降ってきて、闘技場の怪植物を破壊しながら地上に突き刺さる


長さはゆうに10メトルを超え、横幅さえ大人の伸長を超えている


ぱっと見は剣と判らない大きさだ


巨人でもなければ、とてもこんな剣を振り回せるはずがないと、普通の人なら思うだろう


【破邪の大剣】


これが現れるということは・・・


「シスターモエナ 無事ですか」


大地に真っ直ぐ刺さった大剣の天辺(てっぺん)にキース聖騎士長が立っていた


彼はモエナの隣に立っている白い全身鎧の騎士が何者か怪しんだが


モエナが警戒していない事、騎士から禍々しさを感じられない事から、怪植物の始末を優先することにした


剣の柄から地上まで10メトルほどを難なく飛び降りるキース


「シスターモエナ 下は片付きましたよ

人々の中に隠れていた怪植物は【破邪の大剣】で一掃しました

残念ながら数人は黒い塊を砕くことになりましたが、あの塊がこんな・・」


「あぁぁぁぁぁ助けてぇぇ助ヶケケケケ」


広い闘技場の出入り口当りから女の悲鳴が響く


いや違う、そこら中から助けを求める声、すすり泣く声、何を言っているのか


判らないうめき声が聞こえてくる


ナナシは気が付いた


その声を発しているのが今まさにつぼみが開いて現れた人の顔をした花であることに


「どうやら悠長に自己紹介をしている暇はなさそうだね。白騎士君」

「君はシスターモエナを守ってくれ。僕がうっとうしい木を伐採する」


キースは右手を高く上げ【破邪の大剣】を振るおうとする


「待ってください騎士キャシュ

あなたもシスターモエナ同様すごい騎士だというのは良く判ります

しかし彼らは助けを求めている

人としての意思があるんだ」


「白騎士君、怪植物になった人々を救う手段を今の我々は持ち合わせていない。怪植物がゴーラットの街中に出れば、この場を無事に逃れた人々を含めて多くの民が犠牲になる

ルーンの聖騎士としてそれは容認できないんだよ」


キースは思い出していたダンズウェルス枢機卿の言葉を


「マルル様の予言がそのような事で収まるとでも思っているのか」


キースの体から聖威が漏れ出す


ナナシの剣が小さく震えだす


ゴール騒乱がいよいよ後半戦に突入しました

これも読者の皆さんの応援のおかげです 感謝

後書きで補足説明をさせていただきます


破邪の大剣

四人の聖騎士が持つ特別な聖具の一つ

使徒と同様に聖具によって選ばれた者が聖騎士になれる

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