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ゴール騒乱 13

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

台座から飛び降りてオロロン司祭の元へ走り始めた時、闘技場のあちこちで人々が苦しみ倒れだし闘技場は大混乱に至る


次々と人々が意識を失って倒れていく


倒れた人々は体を丸めるような姿勢になり黒く固く変色していく


モエナは【聖威の光】を届く限り多くの人々の元に広げていく


10メトル20メトル30メトル【聖威の光】の粒は苦しむ人々の中に吸い込まれ、体全体が淡く光る


光の粒が吸い込まれた人々は大きく呼吸をして、まだ立ち上がることはできないが意識が戻ったようだ


しかし体全体が黒く変色してしまった人は【聖威の光】が体の中に吸い込まれず弾かれる


「聖威の力がたりないの。それならば」


モエナは光を集め黒く変色した人にぶつける


カキィィィン


黒く変色した物は小さな欠片となってバラバラに砕けた


「なんでそうなるの」モエナには理解できない


人が石のように砕けるなんて


キース聖騎士長からルーンの民を守れと言われたからではなく


今モエナは自分の力不足に腹が立っていた


「モエナ様ぁ、お急ぎください」


オロロン司祭の再びの呼び声に我に返るモエナ


今どうすればいいか判らないモエナは【聖威の光】を周囲に飛ばし


黒く変色する前の人々を助けながらオロロン司祭様の下に向かうしかない


オロロン司祭のいる貴賓席にモエナがたどり着いた時、コティ姫はすでに黒い塊になっていた


それだけではない貴賓席にいた半数の者たちがコティ姫と同じように黒い塊になっている


そしてゴール大公さえも


本来なら人々の混乱を沈め、事態の対処しなければならない大公が


「モエナ様、一刻を争います

今はどうすることもできません

モエナ様は【聖威の光】で民が黒く変色する前に一人でも多く民を救ってください

我々動けるもので館の外へ民を避難させます

ここに留まる事は良くない」


オロロン司祭は西外教会からやって来た神官や槍騎士、周囲の異変に巻き込まれていない人々に支持を出して、倒れている人々を連れて競技場から脱出を図る


「判りました。司祭様は民の避難を、おそらく下の広場も同じ状況のはずです」


オロロン司祭の言葉に従い、モエナが再び【聖威の光】を届く限り多くの人々の元に広げていく


「このままでは駄目だ

いつまでも【聖威の光】を使い続けるなんてできない

何か別の方法はないの」




カリカリカリ・・・固く黒い塊の表面に縦にひびが入り、真ん中から2つに割れる


中からゆっくりとゆっくりと濃紺の植物が伸びていく


根本は大人の胴よりも太く、先に行くほど細く長い幹が1本だけ、先端に人の頭より大きいつぼみがあり枝も葉もない。その植物は大地に根を伸ばし、根が伸びた大地は黒く濁っていく


「なんと禍々しい。ルーンの槍騎士よ、魔を打て」


オロロン司祭は随行の槍騎士二人に避難を妨げるように伸びる植物を打てと命じる


命じられた槍騎士は奇怪な植物に近づくが、黒く濁った大地に踏み込んだ瞬間に意識を失い倒れる


大地から伸びてきた根によって槍騎士二人は地中へ引きずり込まれようとした時、オロロン司祭の癒しの力が放たれる


槍騎士に伸びていた根は癒しの力を受けて干からび、大地の濁りも元に戻る


神官たちが決死の働きで倒れた槍騎士二人を引っ張り出す


「気を失っているだけです。魔力欠乏と思われます」


「それではあの【龍の剣】と同じではないか」


オロロン司祭は思わず【龍の剣】が置かれている台座に振り替える


そこには【龍の剣】を鞘から引き抜いた臨時雇いの下級神官が立っていた


オロロン司祭は大声で叫ぶ


「動けるものは速やかに館の外へ

決して怪植物の側に近づいてはならぬ

行くぞ。ルーンの民達」




次々と黒い塊は芽吹いていく


闘技場だけではない、館の中でも、広場でも、ゴーラットの街中でも濃紺の植物が芽吹いていく


元々人であったその植物は周囲の人々をその根によって黒い大地に引きずり込んで栄養とし、さらに太く大きく成長していく


街中が大混乱に陥っていく


モエナによって黒固化を免れた人々も動けぬままに植物の根によって大地に呑まれていく


モエナは【聖威の光】を集め怪植物にぶつけると怪植物は干からびて枯れてしまう


しかしそれをしていると次々と芽吹いてくる怪植物に意識を失って倒れている人々は呑み込まれてしまう


このままじゃ救えない


駄目だ、どうすればいい【聖威の光】も徐々に弱くなってきている


その時モエナの左足からガクリと力が抜ける


いつの間にか怪植物の根がモエナの足元まで伸びてきていた


「しまった」倒れそうになる体を必死にこらえ【聖威の光】を自分の周囲に満たす


闘技場内で動ける人は・・・もはや動ける人々は場外へ避難している


意識を失い倒れている人がいれば引きずってでも助けようと決意したモエナは台座の上に立つ下級神官ナナシに気が付く


彼の手には龍の剣がしっかりと握られていた


そして剣を包むように龍の骨で編まれた鞘が静かにほどけ、ナナシの体にまとわりつく


それはモエナには怪植物の根に飲み込まれる人々と同じように見えた


モエナは台座へ走る


しかしその先には数本の怪植物が根を伸ばし、ナナシの所までたどり着けない


ナナシは鞘だった骨に飲み込まれようとしていた


「ダメェ~」モエナが叫ぶ


ゴール騒乱がいよいよ後半戦に突入しました

これも読者の皆さんの応援のおかげです 感謝

後書きで補足説明をさせていただきます

武装神官

武器を持った教会職員

各地の教会の警備をしている

聖威をもたない


ルーンの盾神官

聖威を持った武装神官

主に重要施設や人物の防衛にあたる


ルーンの槍騎士

聖威を持った武装神官

主に魔物討伐や要人護衛にあたる

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