幕間 01 ゲロゲロとガラガラッティ 1
今月はショートストーリーを投稿していきます
今回が記念すべき100話目の投稿になります
読者の皆様のおかげでここまで来れました。感謝
「親分、短い間でしたが・・ゼィゼィ」
短パンを履いた全身黄色のカエルの魔族ゲロゲロは水分不足でそれ以上は声が出なかった。全身から流れ出る毒液も干からびて背中にはひび割れが現れている
ゲロゲロから呼び掛けられたガラガラッティは白目で、すでに意識を失っている
見渡す限り砂漠の砂と晴れた空、照りつける太陽
魔王軍17独立小隊はここターネシア大陸南部に広がる砂漠地帯で全滅(二匹のみ)の時を迎えつつあった
「お前らそこで何やっているんだ」
ゲロゲロは意識朦朧で掛けられた声に応えるすべはなく、聞き取れるか聞き取れないかのか細い声で「みす、みず、水」と繰り返す
ガラガラッティに至ってはもうすでに意識を失い干からび始めている
その二人の魔族に大量の水が降り濯がれる
「すまねぇ。助かったぜ。赤鬼君」
意識を取り戻し一息ついたガラガラッティから礼を言われながらロンは別に善意で助けた訳じゃないと思っている
「カラカラがどこにあるか知らないか」
ロンはウルウルを飛び出したのはよいが夜の砂漠でウルウルの方向を見失い、日が昇ってもどっちに向かえばよいか判らず困り果てていた所で彼らを見つけたに過ぎない
カラカラと聞いてゲロゲロもガラガラッティもロンを魔軍参謀ダン・ガルーの部下だと思い込む
「助けてもらったのに力になれなくて申し訳ねぇ
俺達もポゥの野郎に言われてカラカラ攻めに加わったんだが、木偶の坊の野郎から砂漠へ吐き出された上に聖光に追い立てられ、竜巻に飛ばされて、今じゃ右も左も判らねぇ」
「赤鬼兄ちゃん
どうせカラカラに行くなら俺達も連れて行ってくれないか。こう見えてもおいらは毒のエキスパートだしガラガラッティ隊長は居眠りの天才だ」
ガラガラッティがゲロゲロの頭を自分の尻尾でパチンパチンと叩く
ロンが二人の魔族に尋ねる
「お前ら空飛べるのか」
「・・・・・」
「風よりも早く砂漠を走れるか」
「・・・・・」
ロンは今、右にゲロゲロを左にガラガラッティを抱え、飛空魔法で砂漠を飛んでいる
夜明け前に強大な波動が砂漠を覆いつくした。その波動が余りに強大だった為に大まかな方向は判っても距離や位置までは判らなかった
兄貴に危機が訪れている事は間違いない
「しっかり四つの目でカラカラを見つけてくれよ」
ゲロゲロがロンに尋ねる
「赤鬼兄ちゃん
なんでおいらの体液に触れても何ともないんだ。おいらの体液は岩さえも溶かすはずなのに」
ロンはゲロゲロの問いかけに答えることなく波動が向かってきた東へと飛び続ける
「赤鬼兄ちゃん
あっち、あっち、今、光が見えた」
ゲロゲロが右側の砂山の向こうを指さす
ロンは大きく右旋回してゲロゲロが指さした方向へ向かう
たどり着いた、その場所には何もなかった
かろうじて石畳みが彼方此方に点在し壊れた壁の土台がある事で以前ここにカラカラがあったと判る程度、それらも砂の中に呑まれようとしていた
「あ・に・きぃぃぃぃぃぃ」
ロンが大声で呼びかけても砂風にかき消されて返事は返ってこない
ガラガラッティとゲロゲロはカラカラの廃墟でなぜか震えていた。それは【龍威】の残像がまだまだ色濃く残っているからだ
「終わっていいいるな」
「終わっていぃぃぃますね」
「置いて行かかかれたな」
「忘れられていますすすね」
ガラガラッティが大声で叫ぶ
「ポゥォォォォォォォォォ」
ガラガラッティの声はむなしく砂漠に消えていく
「あのののの野郎、またまた俺達を騙しやがったな」
ロンが平地となったガラガラ跡を一人飛び廻りナナシを探す
ダン・ガルーの予想に反してカラカラへ急行している者が二人いた
一人は魔王子デロン
もう一人は四つ星ハンター赤毛のエンヤ
彼はオアシスの町ウルウルの病院で目を覚ます
「・・・・マーヤ」
エンヤはベッドから飛び起きて周囲を警戒するが、びっくりして尻もちをついている看護婦と隣のベッドで寝たままこちらを見ている男を見ると尻もちをついている看護婦に詰め寄って尋ねる
「マーヤは何処にいる」
看護婦が首を左右に高速で振るとベッドで寝ている患者を睨みつけて尋ねる
「ここは何処だ」
エンヤに睨まれてベッドの男は何も答えられず口をパクパクさせる
エンヤはいら立ちながら病室から出ようとして自分の剣が見当たらない事に気が付く
エンヤの体から炎の魔力があふれ始める
「落ち着け。赤毛のエンヤ殿」
病室のドアが開いてゴルドバンと医者が暴走仕様になりかけのエンヤを止める
「詳しい事情は、俺が説明する。俺はカラカラ評議会議長のゴルドバンだ」




