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プロローグ
私は、とある詩人と旅をした。
それは私の人生の中で
最も苦しい時であり
最も愚かな時であり
最も美しい時だった。
これから話す物語は、私が今まで誰にも明かすことのなかった過去のお話だ。それは煌びやかでも、ましてや心揺さぶる英雄譚などではない。泥臭い私の下積み時代のお話だ。
なぜ今になって話す気になったのか、それは私の寿命があと僅かであること、そして私の中の彼女の記憶が朧気になってきているからだ。花のような彼女の笑顔にモヤがかかってきているんだ。
その椅子に座りなさい。
長いお話になる。
どうか最後まで聴いてほしい。
私と彼女の旅物語を。