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9、衝撃的な事実

「螺緒が蹴られてた時ね、なお見てたの。家の窓から。だからね、走って行こうとしたんだけど、家政婦さんたちに止められて。

だから、助けられなくて…。ごめんね。」


「うん、大丈夫だぞおれは。見てたのに助けられなかったのは辛かったな。

目の前で人が死ぬのはな。」


気がつくとおれの体に頭を埋めている那緒の髪を撫でながら続きを促す。


「それでね、いろいろあって、玉樹くんのところに行ったの。

行ったら、襲われかけたから、刺しちゃったの。正当防衛だった。

でも、申し訳ないなって思ってる。もっといい断り方あったかなって」


「なるほどな。そのいろいろを知りたいんだが?あと、辛かったのはわかるし正当防衛もするべきだったとは思う。あれも立派な防衛だよ。

けど、玉樹が悪いのに、那緒が刺しちゃったことで那緒が責められたらどうするんだ。那緒ならもう少し他の方法も知っていたんじゃないのか?」


「うん、ごめんなさい。次からは気をつける…。

あそこね、なおの家なの。あのあと、ぱぱに頼んでいろいろと証拠隠滅とかしてもらって、玉樹くんは家の地下にある場所に移したの。

そして、刺しちゃったから、ぱぱが経営してる病院でどうにかしてもらったの。

鈴木はなおの偽名で…」


「那緒?嘘はだめだよ。全部じゃないけど嘘のところもあるよね?」


「っ。う、うそなんてついてないよ」


「おれを誰だと思ってるの?那緒とずーっと一緒にいたんだよ?那緒の嘘つく時の癖くらいわかるさ。ちゃんと話してみ?」


那緒は嘘つく時に右手の親指をきつく握り締めるのだった。

人の癖は簡単に変えられるものではないから、嘘をついているとすぐにわかる。

おそらく那緒は悩んでいる。那緒が大事な話の時に嘘をつくのは、その話が関係を壊してしまう場合か、相手を傷つけてしまう場合のみ。

だが当事者であるおれは聞く必要があると思うのだ。

少し怖いが…。


「やっぱばれちゃうんだ…。言いたくはないけど、螺緒もここにきた時点で知らなきゃいけないことだし…んー。


…嫌いにならない?」


「ならない。約束しよう。那緒が理由もなく人を傷つけるわけじゃないってわかってるから。

だけどね?もし興味本位とか遊びとかでやってたら、嫌いにはならないけど、おれはすごく怒ると思う。玉樹は、おれの大事な友達だからな。」


「うん。こんなになっても玉樹くんのこと友達って言うんだね。優しい。螺緒の大切な人、刺しちゃってごめんなさい。

事情はちゃんと説明する。怒られるのも我慢する。


けど、すっごい現実離れしたこと言うけど、嘘つきって言わない?」


「言わないよ。那緒が嘘ついてるのはわかるから、嘘じゃなきゃ言わない。」


「うん。なお、、」

「…神様なの!」


「っ」


一瞬動揺を出してしまったようだ。が、すぐに沈めた。

無条件に嫌いにならないし疑わないし、那緒が不安になるようなことはしちゃだめだ。

たとえこんな状況で冗談を言ってきたとしても、それは那緒なりの理由があるのだ。

しかも、右手の親指を握っていない。

そして、那緒の目を見るとわかる。那緒が大事な話をするとき、勇気を持って何かを打ち明ける時、目が少し青くなる。ほんのりと。

今は目の色が変わっているのでそれほど真剣だということだ。


まさかそんなファンタジー的なことを言い出すとは思わなかった。

しかし、これは嘘じゃない、そんな確信が持てるほどには一緒にいたはずだ。


だがそう容易に認めるのには情報が足りない。

おれが今、天国にいるのは確かなはずだし、面白いモニターがあるのも生きている現実にはあり得ないということは示している。

だが…やはり信じ難いのだ。

今までおれは神と接してきたということなのか?

あくまでも動揺は隠して言う。


「そうなのか。神様ってどんな人なんだ?」


「えっ。信じてくれるの…?」


そりゃそうだ。神様って言って簡単に信じられてもびっくりだよな。

まあでも、おれは那緒の兄(仮)なんだ。どんだけ信じられなくても、真剣に言ってくれたことは大事にして、信じられるように、真剣に応えてやらないといけない。

信じ難いというのはただのおれの経験が邪魔しているだけで、あり得ない話ではないのだ。


ただ、だからと言って、殺人が許されるわけではない。神様だからなんなんだ、神は殺人をしてもいいのか。でも今は状況把握できていないから何か正当な裁きだったのかもしれないし、話を聞く他おれにできる選択肢はないのだが。


「当たり前だろ?那緒が真剣に言ってくれたんだ。おれだって、信じるよ。

けど…」


「けど…?やっぱ怖い…?」


「いや、そんなことはないよ。

那緒は那緒だろ?

だが、まだ実感が湧かないんだ。だから、教えてくれ。」


「え…?なおの話聞きたい?」


「ああ、那緒がどんなことをどんな想いでしてきて、神様なんて凄そうな那緒が、どうしておれたちと過ごしていたのか。たくさん話してくれ。

もちろん言いたくないことは聞かない。

だが、おれは、もし叶うなら知りたいんだ、那緒のこともっとちゃんと。

あと少しでも話すことでおれに何かできたりしたらいいかなとも思ってる。だって、おれたち家族だろ?困った時は助け合おうよ。

まあ、困ってないかもしれないけどな。それならそれで本望だ。

けど、おれも当事者だと思うんだ。だから、話せることは教えてほしい。やっぱり神様だからって殺人を犯していいわけではないと思うし、とにかく事情を聞きたい。」


一気に言いたいことを捲し立てて那緒の反応をみる。


「螺緒〜うぅっ」


泣いていた。


「螺緒にっ。信じてもらえないってっ。思ってたからぁぁよかったよぉ。」


「大丈夫だ、泣くなよもう」


緊迫な空気が急に柔らかくなった。

おれはその空気に便乗するように微笑んでみせた。

のだが、


「…螺緒だって泣いてるじゃん。うぅ嬉しいよぉ」


失敗のようだった。

クスリと笑いながら言ったなおは、また泣いた。

そしておれは、気づかないうちに泣いていたらしい。目から水が垂れてくると思ったらそう言うことだったか。

あれから10年たった今も、まだ、おれは17歳だった。まだ、子供だった。みんなの10年をおれは過ごしていない。

そして那緒も、その神だということが関わっているのか、おれの知っている10年前の那緒のままだった。


「嬉しいって言って泣くなよ!

これ周りに人いたら何してるかって不審がられるだろっ!


クラスの人に羨ましいっていじめられるかもしれないな」


揶揄うように言ってみる。


「嬉しいんだもん

周りに人いたら、カップルか姉弟きょうだいかって思われるね。


いじめられるって不謹慎だねぇ」


今姉弟していって思っただろ姉弟って。カップルも無いな。家族だな兄妹。

不謹慎も何もそれで死んだんだっ!」


那緒といると緊張した感情がほぐれて、死ぬ前に友達と話しているような口調に戻る。

とても、安心したし、天国についてからずっとくつろいでいたと思っていたけどやっぱ不安や緊張が自分の中にあったのだと、気付かされた。

読んでくださりありがとうございます。


誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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