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3、玉樹①

前話では、

螺緒が玉樹に殺された後、死んだ後が見える世界に行った。おそらくここが天国なのだろう。

そして、螺緒が死んだ後の玉樹について見ることにした。



よろしくお願いします。

「死ねっ!死ねっ!お前が悪いんだよ!!死ねよ!」


俺、駒澤玉樹はそう叫んだ。消えろよまじで。こいつが那緒と仲良くするから…。


俺は、螺緒が那緒との幼馴染という特権で仲良くいるのを利用して、俺も那緒と仲良くすることで自分のものにできると思ってた。

まあ、今まではそんな気なんてなく、純粋に親友でいようと思っていたのだが、好きな人ができるとここまで人間は変わるのだ。

恋は盲目というが、この状況が嫌いではない。意外と俺は追いかけて自分のものにするのが好きなようだ。


だからこそ、一向に振り向かない那緒に嫌気が差していた。


そう、俺は那緒に数ヶ月前告白した。


『俺は那緒のことが好きだ。俺ならお前と釣り合うと思ってる。他の人には絶対に渡さない。俺のものになれ。』


自信満々だった。

あんなに近くにいたから、あんなに自分に向かって笑ってくれたから、脈ありだと思っていた。両片思いとかいうものだと思っていた。


『えっ、ほんとに??なおなんかのこと好きなの…?ありがとう。すごく嬉しい。

けど、ごめんね、玉樹くん。なお、他に好きな人がいるの。だから玉樹くんの想いに応えられないの…。

で、でもね!なお、玉樹くんのこと、友達としてすっごい大好きだから!

だから、これからも5人で仲良くしてくれるかな…?』


戸惑いながら首を傾げる那緒は可愛かった。

那緒はモテるから今まで多くの告白を受けてきたと思っていたが、この様子を見るに、皆俺に遠慮して陰ながら応援していただけだったんだな。

とても初心な姿にさらに愛おしさが増す。


それでも振られたのはショックだった。

この当然成功すると思い込んでいた告白への回答は、とても長く感じられ、重く、痛かった。


しかし、ここでグダグダとするのは男としておかしい、そんなプライドもある。


『ああ、これからも仲良くしてやるよ。』


ここからは記憶があまりない。

おそらく、振られたショックで、というよりも、当たり前に付き合うことになると信じていた自分のプライドがへし折られたことで、頭が真っ白になっていた。気がついたら家についていて、自室の布団に寝転がっていた。


本当に理解不能だったのだ。

ああ、なんで俺が振られたんだろうか。

完全に俺のこと好きそうだったよな。何でだろう。そういえば、他に好きな人がいるとか言ってた気がする。

誰なんだろそいつ。俺より那緒に好かれてるやついんのか。おかしいだろそれは。俺が1番で、那緒は俺のもの。

そうだ、そいつがおかしい。そいつは俺の敵なんだ。


『螺緒!帰ろ!』


『行こっか』


那緒が誘って、螺緒が答える。

幼馴染だから、で済まされるよくある光景。

羨ましそうに周りも見ているものの、男女関係がないことがわかっているから我慢している。

いつもの光景だった。

特に何もなく、ただ仲が良く、家がすぐ近くだから、と言われると何の不思議もなかった。


はずなのに。


あ?那緒って

螺緒のことが好きなの、か…?

…そういうことか。ははっ。


裏切られた。あぁそういうことか。

螺緒は那緒のこと、恋愛感情で見たことないって言ってたのに。

俺は那緒のこと好きだって螺緒に言ってたのに。

俺から取ったんだ。

裏切られた。


俺に一つの恐怖心を抱いた。


螺緒は、俺が那緒のことが好きだと知っておきながら、


那緒を取るつもりなんだ。


ここからは早かった。

段々と脅迫まがいのことをしていった。

典型的に机にゴミを入れてみたり、上履きを濡らしてみたり。

そういえば、全て、俺が大変だった気がする。これよりさらに大きなことをしているいじめは加害者も大変なんだなぁ、と思いつつ、自分自身がいじめをしていることには気づかなかった。


ここまで螺緒は、大人や周囲の人に言うような素振りは見せなかったが、画鋲とかを入れて怪我されて問題になられても困るからな。怪我しない程度なら、いたずら、で済むだろう。


と思っていたのだが、


気がつくと俺は我慢できずに螺緒を蹴っていた。

血を吐いて、

そして、


螺緒は死んだ。

俺が殺した。


『死ねっ!死ねっ!お前が悪いんだよ!!死ねよ!』


と蹴り続けた。

それが今だった。


「た、玉樹!こいつ本当に死んでないか…?」


甘見と券鵞がビビり始めたので、まあ大丈夫だろうと思いながらも一応生存確認をした。


「っ!!」


息がなかった。


「あ…あ…や、やばい、…。あ…。」


俺はその時も俺のことが1番だった。

ピンチの時に出る性格が1番本人を表している、はよく言ったものだ。

俺は、


「お、おい!甘見!券鵞!こっちこい。」


とりあえず口止めは絶対だな。

あとは口裏合わせて事故だったことにしよう…。やばい。どうしよう。本当にそれでバレないのか?

いやいざとなったら甘見たちに脅されたと言えば…!


「い、いやだよ…今近づいたら共犯だと思われるじゃんか…」


「だよな…。流石に、やばいよ。

だけど、螺緒が死んでる時点で関与してたのがバレるのは時間の問題…。


…あぁぁぁ!どうしてくれんだよ!なあ!!

いっつもいっつも偉そうに命令して、本当は玉樹の態度気に入らなかったんだ!

いつかやらかすと思ってた!


…こんなやつと一緒にいなきゃよかった。


甘見、行こうぜ。これは玉樹がやったことだ。俺らは何も知らない」


「け、けど、こういうのって、見て見ぬ振りとか、そもそもやっちゃえって言っちゃったし…」


「違う、俺らは玉樹に脅されてただけだよ甘見。

実際、パシリとかはやらされてたし、そんなん割と知ってる人は知ってるし、証言は大丈夫。

それで警察に捕まったら、それはそれだ。潔く認めて認めた上で玉樹の行いを自白すれば刑は軽くなる。


とりあえず逃げるぞ。」


ここで逃げられたら困る。俺が殺人犯にされる。

俺は、那緒を取られた正当防衛なんだ。悪くない。


「逃すわけねえだろ!おい!お前ら来いよ!あぁ?!今来なきゃこの先どうなっても知らねえからな!」


俺が叫ぶと2人は怖くなったのか、急に沈黙した。

あぁ、それでいいんだ。2人は俺の身代わり人形だ。

今までこんなことは思わなかったはずなのに、俺は恋をしてから随分と変わったな。だが、俺と那緒が無事ならそれでい。

そんな時だった。


ピコン、と静寂を破る一つの音が鳴った。気づいた時にはもう遅かった。手遅れだった。


「バカだな玉樹。おい甘見さっさと行くぞ。」


録音されていた。焦りで録音開始の音が聞こえていなかった。


「う、うん。わかった。螺緒…っ。ごめん…本当にごめんっ…うぅっ」


そう言って、2人は去っていった。

甘見は弱いから、泣きながら、

券鵞は不安だが証拠があるから早く逃げれば安心、というところだろうか。


これから、どうなるんだろう。

券鵞たちにさっき言ったのは脅迫に近かった。それを撮られていた。もう、終わりか…?


いや、ここで諦めて殺人を認めるのが俺か、いや違う!

俺は飽くまで正当防衛だ。

俺が先に暴力振るわれてたことにするか。それで俺が過剰防衛でやっちまった。過剰防衛なら少しは罪が軽くなるだろう。


甘見と券鵞の証言は、螺緒が死んだことで動揺して言ってしまったことにしよう。そして、螺緒が先に暴力を振るったのだ。よしそういうことにするか。


いや、それとも、2人が見てない時に既に俺は陰でいじめられていて、それをやめてもらうために必死だった、とかはどうだろうか。


まあそこらへんでいけるだろう。


俺は悪くない…!

だが、これがもしバレたら、原因がどうであれ、那緒に嫌われるかもしれない。螺緒が消えたことで那緒の恋愛対象が俺に変わったことは間違いないと思うが、それでも悪印象を持たれたら困る。

その不安はあった。

だけど、これがアドレナリンなのか、いつもより冷静に考えられている気がする。

読んでくださりありがとうございます。


誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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