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2、カンゴウとの出会い

グギャァァァァ!


おれを囲む恐竜のうち、一番大きそうなやつが叫んだ。

何を言ってるのかは不明だ。

ただ、その叫びと共に周囲の他の恐竜が大人しくなり、厳格な雰囲気に変わった。


グギャ!グギャァ!ギャァァァ!?


おれに向かって叫んでいるような気がするのだが、おれは恐竜の言葉なんてわからないし、わかったとしても未だに声が出ない。

よく漏らさずに済んでいる、と自分を褒め称えたい。しかし、おれのことを食べるぞ!と言っているとして、というかそれ以外あまり想像がつかないのだが、そうだとして、おれはもう腰が完全に抜けているため、逃げることもままならない。

ただ、神と友達権限で死んでもまたやり直せないか、とかって願うことしか。


「あーあーマイクテストマイクテスト、坊主聞こえるか」


どこからか低めの、少しガラついた声が聞こえた。マイクテスト、とは呑気な人だ。どこだろうか。おれの知っている言語を話す者が近くにいる、というだけでとてつもなく安心感がある。急に聞こえたこの声に、周囲の恐竜は警戒して荒立てる雰囲気もなく、先ほどのままおとなしい。

声の方向からすると前の方なのだが、何せ目の前のでかい恐竜がとにかくでかすぎて、人間の姿なぞ見えない。ただ、唯一の救いを逃すのはまずい。

おれが声を出したら、恐竜に食べられるかもしれない。だが、声を出さなくても食べられるだろう。だとしたら、少しの可能性に賭けるしかない。


「誰かいるんですか!?聞こえてます!恐竜に食べられそうなんです!声の主の方助けてくださいお願いします!」


「はっ。助けるも何もないけどな。」


「えっ?」


その瞬間再びおれの体は浮遊し、目の前の恐竜の顔が見える位置へときた。見上げても顔が見えなかったのに今は見えている。

ではなく、口が目の前にある。

ついにこの時が来たのか。先ほどから何度も覚悟を決めているが、口の前に来ると震えが止まらない。


「我はドラゴンだ。恐竜じゃあない。」


聞こえた声と同時に、恐竜の口が動いた。

そこでやっとおれはもしかして、と思う。


「恐竜がしゃべったあああああ?!」





そこでおれの意識は途絶えた。らしい。


というのも、現在おれは、もてなされている。


「いやー坊主結構話せるやつだな、飲め飲め」


「ですから、おれは未成年なんで飲めないんですよ」


「未成年って、んだそれ。ガッハッハ、チキってんのかよ。うちじゃ生まれてから1転もすればみんな飲んでるぜ?」


「「「飲ーめ、飲ーめ、一気!一気!」」」


「あーもう、じゃあ行きますよ!…うまい。何これ」


「だから言ってんじゃねーかよ、ほれ、もっと飲めよ」


「ありがとうございます…じゃなくて!ですね、なんでこんなことになってるんですか…!」


「こんなことってどんなことだよ。忘れたのか?坊主が我を見て大声を出すせいで、我の臣下が警戒して坊主を眠らせて、そしたら起きたんじゃねーかよ。」


「そしたら起きた、ってとこから気づいたら着替えて飲ませれてるんですがね。あなたたちは一体なんなのでしょうか?あの恐竜ですよね?ギャーギャーおっしゃってた」


「あんたそれはねえんじゃね?ああ?やんのか?」


「やめろ、坊主が怖がるのも当然だろ、人族ぽいからな。

それにしても坊主もドラゴンだと何度言ったら理解すんだ、我らは恐竜ではないし、2度と恐竜だなんて言うな。ドラゴンという名に我らは誇りを持っているんだ。」


今までフラットだった恐竜、否、ドラゴンも、恐竜と呼ばれることに関しては嫌なのか、急な威圧感を放ってきた。

ドラゴンも恐竜もあんま変わらなそう、と思うのはおれがおかしいのだろうか。


さて、おれは現状を未だに理解できていない。

先ほどまで食べられる寸前であったのにも関わらず、意識が飛んで起きたら大きい手に着物ぽいものに着替えさせらた。子供が着せ替えを人形にするかのように、でかい恐ry…ドラゴン、がおれを着替えさせてくれた。女性らしいが、見分けはつかない。申し訳ないが大きさ以外全て同じに見えてしまう。

そして、案内されるのは広い廊下であった。おれは困惑しかなかったから誘導されるままついていった。おれにとっては広いと感じる廊下も、ドラゴンは2人が並ぶので精一杯だった。廊下はところどころ金の装飾がされていて、それ以外は特に何もなく、質素で、なんとなく前世(?)で習った足利さんたちを思い出す。銀閣寺のような素朴な良さ、だがまあ金なので金閣寺との融合、だろうか。そんな廊下を通って着いた先は、結婚式場の10倍以上の大きさのある会場だった。シャンデリアや机もあり、とても華やかである。ただ、ここに料理としておれは出るのか、参加者として出るのか、それは接待されてる今でも不安だ。やはりいつ食べられてしまうかはわからない。

おれにとっては広すぎるように感じる会場は当然ながらドラゴンらにとってはちょうどいい。おれは見上げるしかできないし、そもそも机に背が届かないし、と思っていたら、おれにちょうど良い大きさくらいの椅子が出てきた。ただ、梯子になっていて、登るとドラゴンと同じ目線になれる。これでも子ドラゴンサイズらしいが十分だ。そしてそれに座ると、なんと車椅子的な感じで動くので便利で仕方ない。ドラゴンたちは立食式だ。

出てくる料理の素晴らしさにおれは、いつ食べられるかわからない、という不安を頭の隅に押しやって夢中で食べた。

そこに現れ話しかけてきたのが先ほどの大きなドラゴンであり、面白い話を要求されたため、前世に伝わる「梨太郎」や「草咲かばあさん」などの昔話を語った。これが思ったよりも好評で、気をよくしてもらい、お酒を飲まされた。のだが、意外とこれは行けた。甘くて飲みやすかったのだ。


さて、そんなこんなで現在に至る。


「申し訳ありません。ドラゴンさんと、その臣下さんも。」


「わかったなら良いのだ。それと、我の名はカンゴウだ。

久しぶりの客だからな。皆の者、今日は無礼講で盛り上がれ!」


その途端、先ほどまで流れていたクラシック系の音楽が急にアクティブなものとなり、ゆっくりと舞っていたドラゴンたちはパリピとダンスし始める。その変わりように驚きつつ、あっと目を奪われそうになった。まだドラゴンのカンゴウさんとの会話中なのだ。


「カンゴウさん、おれは螺緒です。」


「ラオ、か、よろしくな!あと、今夜は無礼講だと言っただろ?その気持ちの悪い口調はやめろ。まあ、敬語なのに自分をおれ呼びしてる時点で若者だな!ガッハッハ」


食べられると思っていた相手に親しみを向けられた。おれの対して使えない脳は危険を察知せず、従うべきだという。

使えないが今おれが頼れるのは自分のみなので仕方がない。


「じゃあ改めて、カンゴウ、よろしくな。

ところで聞きたいんだが、おれはなんでここにいるんだろうか?おれはカンゴウらの明日の朝食か?」


「ガッハッハ、ラオは面白いやつだな。

この誇り高き我らが人族などを食べるとでも思うか?心外だが人族からしたら仕方あるまい。

我らが食すのは人族の魔力と普通の飯だ。まあ、飢餓に陥ればヒト族も食うんだがな。普段はあんなまずい肉食いたくもねえ。」


「魔力…それはどういう」


「…。ラオ、お前…。魔力を知らない、のか?」


先ほどまでアクティブなミュージックに合わせてダンスをしていたドラゴンらが急に沈黙と化し、カンゴウが哀れみの目で見てくる。

魔力、うっかり知らないと言ってしまったが、この世界では普通なのだろうか。だとすると、知らないことがおかしくなり、転移だとかを話さなければならない。まあ、隠したい理由は特にないが。

魔力がおれにないのならば、ドラゴンに食べられることもないし良いことだ。

ただおれは小説などで見てきた。魔力が普通の世界では魔力なしでは生活が苦しいことを。

先が思いやられる。

とは言っても、おれにほんの少し、1mm、1nmでも魔力があれば、それをこの世界の平均まで持っていくことが可能である。とおれは予測している。おれの、「頑張ればその環境の平均にはなれるが、平均以上にはなれない」能力が異世界でも発揮されることを祈るのみだ。欲をいうならば、異世界なのだから、チート能力を活性化させて平均以上にもならせてほしい。が、求めすぎるのも良くないだろう。

ほんの少しでも魔力があれば良いのだが…。


「ラオが魔力を知らないということは、親はどうしていたのだ?魔力がない生き方は、苦しくなかったのか?」


「親は、魔力というものをを使わない生活をしていたと思う。今まで魔力という言葉すら知らなかったので、苦しいとも感じなかったな。」


「そうか。我らは全地方を把握していると思っていたが、そのような場所があるのだな。ラオが今まで知らなかったということは、周りの者も使っていなかったのだろうから、集落単位とかなのだろう。」


集落単位ではなく地球単位なんです、などとは言えない。なんか今雰囲気的に悲劇のヒーローすぎて言いづらい。

後で言えば良いよな…?


「あと、ラオはなんであの場にいたのだ?我らはあの場にいる人族は助けることにしているのだが。それくらい危険な場所なんだ。」


助ける…?なるほど、ドラゴンらからしたらあれは救済であったのか。まあ今はもてなしてくれているし、信じるほかないだろう。これで疑うと神経がすり減ってしまう。

一度死んだからか、死んだらそこまで、というような考えが少しついてしまっているような感じがするな。


「あそこに自ら行ったというより、なぜかいたんだ。信じられないかもしれないが…。」


今度は、ざわめきが起こる。


「まさかラオは異世界転移者か…?」


異世界転移は対して珍しくないのだろうか。別に否定する訳もないので肯定する。だが、神になるため!!などと言うのは危険だと脳が訴えるので、理由は曖昧にさせていただく。


「そうだ。おれは訳あって異世界転移をしたらしい。なんで分かったんだ?あんま珍しくないのか?」


「いや珍しい。珍しいからこそ分かる。異世界転移をした者は我の知っている限り1人。そして我は約1億年生きている。1億年前はほとんどの住人が我らドラゴンであった。だから人族は当時はいなかった。いたとしてもすぐに亡くなることは明白な環境だ。そして1億年の間におれは転移者に1人出会っている。名を確かドニャと言った。他の場所で転移・転生者が出たという話は一切聞かないのでラオは二人目だ。ドニャも同じところに落ちていた。彼も同じように魔力を知らなかったのだ。ただ彼は、なぜか強力な魔力を保持していて、世界を旅し、最後に『ここでの修行は十分だ、他の星に行く』とだけ告げ旅たった。他の星に願ったら行けるだなんて夢物語だが、彼はその瞬間に消えていた。彼はこの星に多くの偉業を残したので、いろいろな人が名残惜しんでいた。

まあそんな感じで、ラオと同じような人がいたのだ。

ただ、ラオには魔力がないかもしれないが…。ならなおさら、人族に混じって生活を学んだほうが良い。とりあえず大船に乗ったつもりで任せてくれ。」


ドニャ。前に虎信さんから聞いた、ご先祖様の娘婿、だろう。神話ではないか、と言われていたが本当にいたらしい。本人とは特定はできないが、おそらくそうであるとの謎の自信がある。


「あぁ、それは助かる。ありがとう。とりあえずおれも魔力を測りたいのだが、どうすれば良いかわかるか?」


「そうか、測るか。ラオには魔力がないかもしれないが落ち込むなよ?あと、ドラゴンの測り方は少々独特らしいが、頑張るんだ。」


そう言っておれにお尻を突き出してきたカンゴウ。


「ほら、早く尻に手を突っ込め」


「え、、?え?えぇ!!無理無理無理無理!本当に言ってるそれ?!」


「まともな話だぞ。ドラゴンの長の尻は魔力をも測れる。まあ、あまり知られていないがな。そういや、ドニャも嫌がってたな。我が汚いと言いたいのか…。」


知られてても誰もやろうと思わない。

汚いのか、と落ち込むカンゴウに、汚いから無理!だなんて言えるはずがなかった。


「…よし分かった、行くぞ。」


「来い!」


勢いよく拳をお尻に当てる。するとスイーっと吸い込まれるように肘までがお尻の穴に入っていた。


「っ!!」


精神的に気持ちが悪く声が出かけたが、失礼極まりないのでなんとか抑える。


「うぅん…ラオ、もう出していいぞ。結果を伝える。

ただ、落ち込むなよ。」


落ち込むなと言うことは、ゼロなのだろうか。もう魔力は諦めて、体力面で騎士のような存在に…いやどうせ騎士も魔力で強化するのだろう。

本当に生きていけるか不安でしかない。

手を出した瞬間、何かついていないか、匂いは、と確認したが、なんの異常もなかった。不思議だ。


「この世の人族の平均は、体を100%としたときに、魔力は50%だ。全身の50%の量の魔力が循環する。ドニャは100%だった。だから、飽和状態だ。そして、魔力は鍛錬次第で増やすことは可能である。100%より上に行くことも理論上可能だ。ただ、100%より上だと逆に病の原因となったりもするし、危ない。しかも、鍛錬で100%より上になれたのはドニャだけだ。あいつは規格外だから無視をする。

しかし、鍛錬次第と言っても、50の人がどんだけ努力をしても、大抵は増えて60だ。そして最高記録は52から72。これはかなりすごい。ドニャを除いての最高記録だが。

そして、ラオは、0,01/100だ。正直この数字は人族、いや、ヴォルタ初かもしれない。ヴォルタというのはここの星の名前だ。この星で初の1未満だ。

ただ、鍛錬次第で1にはなれると思う。さっき言ったように、他の人は+10〜20の記録があるのだが、0,01という数字が初なので、1行けばいい、と考えた方が良い。もっと悪く考えるのならば、上がらない可能性だってある。」


反発的な心が暴れるかと思ったが、案外冷静に聞いていられる。最初から期待していなかったのが良かったのだろう。ただ、冷静だからこそきつい。

冷静にどう考えても生き残れる気がしないのだ。奴隷のように働かされる気がする。


ただ、冷静ながらもおれは自分を心の底から過信する。これは過信ですらないのかもしれない。


「おれは、地球という星にいた頃に、かなり特殊な能力を持っていた。地球には魔力も何もなく、チート能力と言われるものも何も存在しない。だが、おれは持っていた。努力すればどんな環境の平均にまで上げられる、という能力。平均以上にはなれないのだがな。試していないからわからないが、0のものを上げることはできないと見ている。だから、もしこの能力がこの星でも発揮されるのならば、おれは0,01でも十分だ。すぐに平均50まで、いや、秀才だらけのところで生活すればその場の平均の60まで、上げてみせる。」


「…ラオは強い者だ。心が強い。そしてそれは、そんな能力がもしあったとしても、平均になるためには多大な努力が必要であっただろう。だからそれは、能力なんかじゃなく実力だ。平均以上になれないのは不思議だが、ラオは努力ができる人だな。」


「お褒めに預かり光栄です…??」


「ガッハッハ!堅いぞ!

さぁ、もう一度宴を始めよう!皆の者楽しめー!

ラオが努力できる人間と決まれば、明日からはみんなで特訓じゃああー!」


「「「「「おー!!」」」」」


そしておれは疲れからか、いつの間にか夢の世界へ入っていた。

読んでくださりありがとうございます。


誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。



時間が空きました。すみません。

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