1、飛ばされて初めて見た生き物
うわぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!!
落下する!このままでは地面に激突して…うっ!ぶつかるっ
うっ
反射的に閉じていた目をさらに強く閉じる。そして体が強張り、ついに、、
…あ?
あれ、当たら…ない。そして
ぽすん
地面に体がついたようだ。軽く尻餅をつくかのようにソフトに着地。
が、眩しすぎて目が開かず、目眩もする。
おれは裕酢螺緒。いろいろあって、高校3年生にして人生が終わり、かと思えば神界という場所にいて、今は神界から異世界へと飛ばされたところだ。
おれの記憶は、 那緒、 虎信さん、 沙奈江さんのいる場所で途切れ、その瞬間に目の前が暗転した。先ほどまであまりにも白く明るかった世界が急に何も見えない黒一面に染まり、そして体感的にはおれの体は急速に回転しながら落下して行った。
そのままの勢いで地面に衝突する、と思いきや、地面の気配を感じたところから感覚的にゆっくり降っている気がして、そして地面に尻餅をついた。
んー!まぶしっ!
やっと目を開くことができたおれは辺りを見渡す。
おれのいる場所は広い草原のようだが、前方には人の住む場所があるらしい。かなり頑丈な門が見える。そして空には小さな恐竜ぽいものが遊び飛び回る。鳥かもしれないのだが、おれの知る鳥にあのようなザウルスチックなものはいない。
虎信さんが言っていた通り、やはりここが地球ではないと認識する。内心、神界というところでさえも、死んだということさえも、実は疑っていたところもあった。凝ったドッキリか夢なのではないのか、と。だが、ここまで立体的に世界が構築されていると、やはり現実なのだと認めるのには十分だ。
準備はしていなかったから心配ではあるものの、よくある転生・転移系の物語のように、思いもよらずに来て戸惑いまくることはしなくてすんだ。
だが、優位なのはそれだけだ。
あとは物語と同じ、おれは何もできない。
ここがどこなのか、おれがどのような状態で飛ばされたのか——虎信さんの言い方から、彼はおれの年齢や見た目を変えて異世界に送ることができるらしい——、言葉は通じるのか、お金は稼げるのか、生きることができるのか、そして、神になるためには何をしたらいいのか。
何一つわからない。
ただ一つ言えることは、
おれは今ピンチかもしれない
ということだ。
いやはやぁ、ねぇ?わかるでしょ?
恐竜的なものが只今こちらに向かってずしずしと歩いてきています。はい。
考え事に熱中していて、気づかなかったわけではないのだが、現実離れしすぎていて対処もできず、ある意味現実逃避のようにより考え事に熱中。
うん、おれ、食べられるね。
いや待てよ、恐竜なら草食かもしれない!しかもこいつが恐竜に似ているだけで本当はこの世界では野良猫みたいなそんな扱いなのかも!そうに違いない、戯れてきているのだ。
悪い方へと考えてしまうと足が竦んで流石に一大事だ。なので自己暗記で乗り切る。
こいつは可愛いやつ、こいつはいいやつ、こいつは何もしない、大丈夫…。
近づいてくるのには変わりはなくて、近くに来られてわかったのだが、こいつが歩くたびに地面が跳ね上がる。常に揺れる星なのかと思ったが、おそらくこいつが歩いているからだろう。周囲の木は切り倒され、踏んだ摩擦なのか体温なのかで煙が上がり、ドシンドシンという大きな音が頭に響く。
おれの命の危機!!
…ん?
あ、そういえば、おれはもう死んでるのだった。神にもまだなれていないから、今はどのような枠なのかは不明だが。
とりあえず、死んでるから、これで恐竜もどきにやられても仕方がない。最後に那緒たちに会えただけ良いと思う。死ぬことは怖いに変わりないが、腹を括るしかないのも現実だ。
が、どうせ死ぬなら、今思いついた策に挑戦してから死にたい。
そうその名も!
死んだふり…!!!!!
我ながら名案だ。熊には効かないらしいので、こいつが熊の一種でないことを祈る。もし効かないにしても、ダッシュしても間に合わないし、大声で叫んでも刺激してしまう恐れがある上に、声は誰にも届きそうにないし、とにかく苦肉の策だ。
というか、この世界に飛ばす前にいろいろと教えて欲しかった。
そしておれは、
グダパタっ
死んだ(ふりをした)。
死んだふりをしている最中もドシンドシンという振動と猛スピードで近づいてくる気配。
おれはもう怖くて、瞼がが震えるほど強く目を瞑った。
ギャオッ!ギャオッ!
ついに耳元で鳴き声が聞こえ、気配もすごく感じられるようになった頃、
おれの身体は空中に浮いた。
ギャー!
恐竜もどきの鳴き声と共に、富士緩ハイランドのジェットコースター並みの浮遊感。
背中が痛く恐る恐る目を開くと、案の定そこは空で、そして、おれは恐竜もどきの足に掴まれていた。
ぅっ!!
大声で叫びそうになり、おれが今死んだふりをしていることに気がついた。
ここで大声を出して振り落とされでもしたら骨も残るかどうか…。
さて、死んだふりをしているおれはどうなるのだろう。
この恐竜もどきは、死んだふりをしているものを死んでいるから食べるのが楽だと食すのか。それとも、生きていないならと捨てるのか。まあ、捕まえられた時点で前者だと予想はできる。
要は、わざわざ運んで、食べない以外の選択肢が考えられないということだ。
ここで暴れたら落下して粉々、このままキープしていても食されて粉々。
生きるという選択肢はなかったりする。
ならば、好きな死に方を選びたい。
…はぁ、いや、好きな死に方なんてあるわけないだろ。
まあ、消去法で、食される方かな…。飛び降りは途中で意識飛ぶとかっていうことを聞いたことがあるけど、ジェットコースターまじで苦手だから無理。
食べられる方もじわじわきて怖いが、食べるということはどこかに降りるはずだから逃げられる可能性もなきにしもあらず0.0000000…1%の確率で。
もうパニック通り越して無関心になりそうだ。
何とかパニック状態を恐竜もどきに察知させないように固まる。
と、
ギャオッ!ギャー!
と鳴きながら急降下を始めた。
死ぬっ!死ぬっ!やばい!まじで!!
死を予想はしていたものの、本当に訪れようとする目前の死に、おれは、頭が働かず、体も動かず、声も出ないという状況に陥った。目を思い切り瞑る。
そして、急降下の勢いで恐竜もどきは急に止まった。
ドンッ!という音とともに止まり、鼻の中には呼吸と共に砂が舞い込んでくる。
バレないように少しずつ目を開けると、恐竜もどきは地面についていた。
だが、先ほどの着地の砂埃がなかなか収まらず、周りを見ることはできない。
ギャー!
と鳴くのと同時に、おれは落とされた。
そして背後からの鳴き声は風を起こし、視界が開いた。
それから気づいた。
おれは、恐竜に囲まれていたのだった。
読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




