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14、騒がしい一家団欒

周りにいた神々が全員退出し、この場にナンゴと トラヤ様(虎信さん)だけになった今、沈黙の見つめ合いが続き、ついに トラヤ様(虎信さん)が口を開いた。


「ああ、久しぶりだな螺緒。人払いはしたから無礼講で行こうか。というか、螺緒にとってはいつも通り、でいいぜ」


ここにきてから那緒以外にはラヤとし呼ばれなかったため、妙な嬉しさが込み上げてきたが今はそれどころではない。


「お久しぶりですお父さん

質問したいことが山ほどあるのでちゃーんと答えてくださいね?」


「…お前にお父さんと呼ばれる筋合いはないっ!ナオは俺の娘なんだ!!

だが、無礼講の時はトラヤではなく虎信で結構だ。」


そう、虎信さんは大の那緒好きだ。とてつもなく親バカなのだ。



例えば、前に挙げた学校のぬいぐるみの件も、那緒の願いを叶えるために校則を変えてまで通した。


他にも、那緒がごっこ遊びにはまっていた頃は大変だった。

もちろん幼馴染のおれも参加していて、大抵は那緒が妻役でおれが夫役だ。虎信さんは歯を食いしばりながらギシギシとこちらを羨ましそうに睨んでいた。そんなこともいざ知らずおれの妻役を楽しむ那緒。おれは当時5歳ほどながら、すでに板挟みのこの状態に耐えようと頭をフル回転させていた。


そして、何がというと、例えば那緒が、「女社長としておもちゃ屋さんをやって自分も遊ぶ役をする!」と言う。普通のごっこ遊びならば、そのごっこ遊びの延長線のまま、ありもしない会社を経営するふりをする。

だが、虎信さんは親バカであり甘く、子供の夢を叶えてあげたいと願う人であり、そして何より、簡単に願いを叶えてしまうほどの財力があった。それに加え、虎信さんは那緒にその大手企業の相続——今考えると、彼が必死になっていたのは神トップの座の相続をさせるためで、企業はついででやっていただけなのだろう——をさせるつもりだったので、那緒がやりたがったことを経験させるだけでなく、なんとかして知識を得させようとしていた。それによって形成されたごっこ遊びは本格的なものであった。

つまり、ごっこ遊びのためにおもちゃ屋さんの中小企業を買い取るのだ。そして、社長として経営させる。1人でさせるのは厳しいが、那緒が社長なので、社長の教師をつけ、徹底的に儲けさせた。よくニュースで話題になっていた。おれも一緒にごっこ遊びをしていたので、必然的に秘書等の仕事をすることになり、気づけば知識を得ている。というか、おれはおれで秘書の先生に知識を詰め込まれた。時にはおれは主夫役だったので、家事も仕込まれた。が、おれの家は普通の一般人だし、おれもそう思われている以上、あまり有名になりたくなかった。なので、親にも軽くごっこ遊びをすると話すだけにとどめ、そこで稼いだお金の何割かはもらえることになっていたので虎信さんに銀行口座を作ってもらい貯金してもらった。報道に関しても徹底的におれの情報を流さないようにしてくれた。

本当に感謝している。が、虎信さんからしたら、

おれを家族の遊びに入れたくないが、それによって那緒の知識が増えているし、何より那緒が笑ってるなら我慢…

という感じだろう。


とにかく、ごっこ遊びと称していても、数ヶ月に渡るため、軽々しくやりたいだなんて言えないのだ。

ちなみに、買い取った企業は、飽きれば元の人へと返す。儲かって有名になってから戻ってくるので、一部中小企業からは「新井フィーバー」と呼ばれていた。

ちなみに、今まで数社あった、有名になりすぎて経営しきる自信がないから戻されても困る、という場所に関しては、虎信さんの会社の一部として経営し、元の会社の社員等もそこで働かせる、という方法をとっていた。

よって、多くの人にとってウィンウィンなのだ。ライバル社からしたら飛んだ迷惑だが。

会社にとっては宝くじのようなものだと捉えられていた。だが、那緒に経営させる以上、整備が悪いところはやらせられないという 親バカ(虎信さん)は、きちんと今までの情報などを見た上で購入していた。だから、選ばれた企業の今までの努力が実ったということだ。


スポーツ選手になるごっこ遊びの時は、世界的な選手を呼んで専属でトレーニングさせて子供の大会で優勝させたりもした。

ただ、画家系だけは本当に向いていなく、虎信さんも避けさせるように誘導していたくらいだ。それでもやりたがればさせ、那緒だけの絵の展覧会等を行ったものの、本当に絵についてはお金にならなかった。強いて言うのなら、那緒の熱狂的なファンがお金を大量に落としていた。


他にもこれと同等のようなとんでもなくやりたい放題であったが、ただやりたい放題でわがままなのではなく、勉強の一環であったために、しかも会社経営にもなるともちろん他会社との取引も那緒本人も参加するので礼儀作法も身につき、ということで、世間知らずのワガママお金持ち、にはならなかった。

そこは教育の賜物だろう。


小中は那緒の存在はお金持ちということで目立ったり、先生もご機嫌とりに走ったり、などあったため、おそらくそんな状況もあって、普通に接するおれと仲良くなったのもあると思う。高校に入ってからは最上位の高校ということで、かなりの数の人が大手企業の社長の子だったり、お金があったり、としていたので、その中でも特に有名ではあったもののそこまで気遣われることなく過ごせていたと思う。



まあ、長くなったが、とりあえず、那緒の親は那緒のことになると熱心なのだ。


そういえば、那緒の母親の 沙奈江(さなえ)さんはどうしたのだろうか。


「虎信さん、お母さんはどうしたんですか?」


「だからお前がお母さん呼びする筋合いはないっつの。

沙奈江はここだとサナという名前で過ごしている。もちろん神だ。サナは多分寝ているから呼べば出てくるぞ。会うか?」


「あっ、やっぱ神なんですね。寝てるならだいじょ…」


「螺緒くぅぅぅーーーーん!!久しぶりっ!」


断ろうとした瞬間、目の前にいて、抱きつかれた。

本当にいつも思うのだが、変なところで動きが早いのだ。


「…お母さん。おれも会いたかったです。寝ているのに起こしてしまって申し訳ないです」


「いえいえ!大丈夫よ!!ところで、螺緒くんは元気にしてたっ?!」


「は、はい元気でした。元気でしたから離してください…。ちょっと苦しいです」


「元気なら良かったわぁ。ここ数年間螺緒くんからのお母さん呼びがなくて寂しかったのよぉ。ナオは螺緒くんが死んじゃってからテンション低くて話にならないしぃ。もう困ったものね。ぷりぷり」


もうわかるだろう。口に出していうぷりぷりは素である。那緒の「ぷい」と同じ種類だ。

那緒の天然さは遺伝だ。


「ちょっとままぁぁぁぁ!!何言ってんのっ!なおは螺緒いなくても特に変わらなかったんだからっ!ぷい」


飛んできた。そしておれの腕の中に着地。この連携プレー。

じゃなくて!


「おい降りろよ、てか体調大丈夫なのか?」


「…もう大丈夫。ありがと。 

ぷい」


まだ怒ってる…。


「きゃぁ!ナオが久しぶりに怒ってるわ!そんな姿も可愛いわね」


「誰だ!俺の大切な娘を悲しませたのはぁぁぁぁお前か!!!」


「ぷい」


おいおい…混乱に混乱を重ねてみた結果だこれは。

やはりこの一家は騒がしい。地球にいる頃から少し何かがあればこれだ。


しかし、久しぶりに「家族の一家団欒」って感じで、少し楽しい。懐かしい。

と思っていると、


「「「螺緒くん?!大丈夫?!」」」


「急に息をそろえてどうしたんですか…あ…」


本日何回目の泣きだろうか。

意識するとどんどん涙が溢れてくる。


「どっか痛い?お母さんに教えてみ?」


「…うぅっ。痛くっないっですっ

っあぁ…ちょっとっ家族って感じで嬉しくてっ」


「まま!螺緒が困ってるじゃん!

螺緒、ごめんね?なおがあの時助けられなかったから、家族と離れ離れにさせちゃって辛かったよね」


「ナヨ様は悪くありません!(わたくし)の部下が、助けに行こうとしていたナヨ様を止めてしまったのが悪かったのです。後で教育し直しておきます。ですからナヨ様は謝らなくて大丈夫です!」


「メ、メニア…?

…どうしてここにいるのですか?私はここに入ってこないように言ったはずですわ

それと、私の家政婦なのです。自分のものの責任は自分で取りますわ?」


「ナヨ様方がラヤ様をご心配する声が聞こえましたので、何か問題が起きたかと思い…申し訳ありません。」


「いいえ、大丈夫だわ。問題ないのはわかったでしょう?私がラヤを見るからメニアは自分の職に戻って良いわ。」


「…畏まりました。失礼しました。」


「えぇいっ!ナオが螺緒を見るだとっ?!俺だってナオに看病とかしてもらった経験ないのに…生意気なぁぁっ!」


「「螺緒くんが怖がるでしょっ!やめなさい!!」」


「しょぼん…」


「あ、螺緒くん泣き止んでる。良かったぁ。もう大丈夫かしら?」


那緒や那緒の家族の騒がしく明るい様子を見ていると、泣いてばかりいられないような気がして、気づけば涙は乾いていた。

メニアが入ってきたことにより那緒の口調が変わったのもギャップが凄くて面白かったな。


「ああ、もう大丈夫です。

ご心配おかけしてすみません」


「いいのよ、私は螺緒くんのお母さんでもあるんだから。子供なんだからたくさん迷惑をかけなさい?」


「おれはもう17歳なのでもう次期大人ですよ

生きてれば27なのでもうアラサーです

ですが…今日だけは甘えさせていただきますね」


クスリと笑いながら答えると、気分が軽くなった気がした。


「いいのよ、私にとっては那緒と螺緒くんはいつまでも子供なんだから。」


そう微笑む サナ(沙奈江)さんは、母性あふれる女神にピッタリだった。

読んでくださりありがとうございます。


誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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