13、トラヤ様との出会い、再会
コンコン
コンコンコンコン
コンコココン
そういってリズムをとってするノックがここへ入るための合図なんだろう。
そうしてナンゴが、ドアをあけた途端、
『ラヤ様のお通りです』
との声が部屋の中から響いて聞こえ、ナンゴがドアの前で深くお辞儀をした。
おれはそれに倣う。
「行くぜ」
と小声で合図されたおれは、なるべく舐められないようにと堂々とナンゴについていった、つもりだ。
周りには30人ほどの人が立っている。人というか、神か。神は30 神でいいのだろうか。
そして、先ほどおれのいた部屋と比にならないくらいの装飾がされている。基本が真っ白に永遠と続く場所のはずなのだが、きちんと壁があることにより、家のようになっている。
おれの部屋が白い空間だったことから、ドアの先は一つの広い空間だが、それはまっさらな星一つと同じで、そこに家を建てるかなどで此処のようになるのだろう。
これもまた来てみないと口頭ではわからないかもしれない。
誰も話さず、おれの服の布が擦れる音しかしない、沈黙の状態。
急にやってきたおれを試すような視線も少し感じるのは気のせいではないだろう。
その間を通り歩くおれとナンゴ。急にナンゴがピシッとし、執事と自称していたに相応しく見える。
向かう先には豪華な椅子。その脇には、2人——彼らが神なのか、ナンゴと同じようにわからない存在なのかは不明だ。ただ、オーラはすごい。——立っている。
そして、ナンゴは立ち止まり、地面に膝をつけた。
おれもまた倣う。
膝をつけ深く頭を下げ、無礼のないように気をつける。
そして体内時間で1分ほど経ったあと、
『トラヤ様の権現です』
またもや沈黙の部屋のなかに響く声。
コンコンと歩く音、スッと椅子に座り、
「こちらが今回やってきたラヤの情報でございます」
という小声。おそらく椅子の隣にいたどちらかだろう。
そしてついに
「ラヤよ、顔を上げよ。」
その言葉は、言葉のはずなのに、とても重く感じられ、これが上に立つものの威厳か、とおれに感じさせた。
礼儀正しく、を心がけ、
「はい」
と答えて、上を向く。
と、
「…は?」
思わず声が出てしまった瞬間、
サッと約30人、全員の視線がこちらに向いた気がした。あまりの怖さに、そしてトラヤ様(?)に対して失礼であるため後ろを振り向くことはしないが、もし見えていたら相当鋭い目をしているのだと想像はつく。
ナンゴにも少しの焦りが見える気がする。
なぜおれがそんな無礼な声を出したかというと、そのトラヤ様が見覚えのある人だったからだ。
彼は、地球では、【 新井 虎信】と名乗っていた。
そう、地球にいた頃に那緒の父だった人だ。
那緒がいるからもしや虎信さんもいるのではとは思っていたが、まさかトップであるとは思わなかった。すると、那緒はトップの娘、上手くいけば次期トップということなのだろうか。
今まで、相当すごい方々と接してきたらしい。
「ラヤよ、どうしたのか」
トラヤ様から声がかかった。どうしたのか、と聞かれても、おれのことは覚えていないのだろうか。もしくは公の場であるからトップとしての地位相応の対応をしているのか、そうであってほしい。ただの似ている人という可能性もあるにはあるのだが、那緒の父だけあってとても整っているその顔は、そう何人もいるものではない、と思う。
だがこちらの事情がどうであろうと、この場において一番の権力者に対して無礼を働いたことは確かであり、それによって周りの神々に対して不快に思わせてしまったことも事実である。
「いえ、なんでもございません。大変申し訳ありませんでした。」
謝ったが、なんでもないのにも関わらず声を出してしまったので、余計に怪しまれるか、不快に思われたのか、周りからの視線がさらに痛くなった。
「なんでもないことはないだろう?我の顔に何かついていたか?」
そう トラヤ様が言ったことにより、 トラヤ様の顔に何かついているとはなんてことを!心外な!と、視線に込められた感情がさらに濃くなった。
そしておれの心臓はさらに痛くなった。
多分、素直に言ったほうが身のためかもしれない。だが、もし虎信さんのがお忍びだとしたら、バラすのもまずいだろう。
ということで、
「いえ、違います。死ぬ前に知り合いだった方と顔が非常に似ていたものですから、驚いてしまいつい声が出てしまいました。本当に申し訳ありません。」
するとどうだろうか、先ほどまで無言の圧力視線だった周囲の者がついに囁き出したのだ。
「トラヤ様と地上の者を見間違うなんて、なんて無礼だろうか」
「排除するに値するな」
「トラヤ様が不憫でならないな」
はいー悪影響でしたー
言わなきゃよかったか…
ともう何も進まず、とてつもなくだるいと心の中で思っていると トラヤ様が口を開いた。
「お前ら、無礼や不憫かどうかは我が決めることだと思うのだが、違うか?排除するかどうか、そして地の人の価値は、我しか口にできないと思っていたのだが、違うか?我が、間違っているか?」
「ち、違いますトラヤ様!出過ぎた真似を…も、申し訳ありませんでした!」
「今回はこのラヤにも非があるから許す。次はないと思え。」
「はいっ!」
どうやら、 トラヤ様はおれの味方をしてくれているらしい。
先ほどまでの囁きが急になくなり、居心地が良く…
ならなかった。
次は妬みや恨みの視線な気がする。
もう、無視しよう。
「さて、もうみんなは知っていると思うが、ラヤよ、自己紹介をせよ。」
急なね、練習なしのね、来たよこれはきつい。
が、皮肉なことに トラヤ様の地上での特訓のおかげで自己紹介は苦手ではないのだ。
「お初にお目にかかります、ラヤと言います。
この度はこのような神聖な場所にお招きいただき心から感謝いたします。私は地上から参ったばかりでして、至らぬ点が多いと思いますがよろしくお願いいたします。
また、先ほどはご無礼を働き大変申し訳ありませんでした。」
ゆっくりとはっきりと、緊張の様子を見せないように、を心掛け挨拶をすると、先ほどまでの視線がほんの少し弱まった気がした。 トラヤ様が彼らに睨みを効かせたこともあるだろう。
「良い。」
「さて、我はラヤと2人で話したい。他の者は退け。」
「は、はいっ!で、ですが…トラヤ様の安全が…」
「発言失礼します。お二人になりますと、万が一の時に危険ですので、 私がつかせていただきます。
それで宜しいですよね、皆さま。」
「はい。失礼いたしました。それでは退出させていただきます。」
やはりトップの執事ともなると、権力としては強いのだろう。あのチャラかったナンゴが畏まっていることも驚きだ。
ギャップにかなり驚いた。
読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




