10、話を合わせてあげたはずが
「そういえばさ、なんでおれのいじめ気づかなかったんだ?
神なら気づきそうだが。」
お互い泣き止んで落ち着いたところでおれは切り出した。
天国にいるだけのおれでもこんな何でも見れる機能があるのだから、那緒がおれを監視できてもおかしくないのだ。
流石にストーカー行為はしてないだろうが。
「その話なんだけど、んーー。
さっきの続きになるんだけどね、今回はほんとなんだけどね、」
「ああそうだったな。そういえば神だから玉樹をどうしたかとか、謎の刃についてとか、看護師についてとか色々聞いてなかった。」
「なおのこと不信がらないでね…?」
「事情次第だな。好きで殺人してたらさすがに怒る。
だが、ちゃんとした理由があるなら、まずは聞くさ。さっきも言っただろ?」
すると、急に那緒の目が青くなった。先ほどより濃い色だ。おそらく、さっきより大事な話なんだろう。
「まずなんだけど、なおね、螺緒のことがね……
んー!」
なるほど、おれ関係で大事なことがあるのか。まあそうなのかもしれない、神と幼馴染だったし、死んで再会しているんだから、おれ関係で伝えなきゃいけないこともあるだろう。
それにしても、永遠に真っ白な空間を那緒は高速で転げ回っている。とても早いし、目が回らないのがすごい。
「おい、あんま遠くに行くなよ
で、どうしたんだよ大丈夫か?急に転がるな
おれのことがどうしたの」
「…き!」
「え?」
「…すき!」
「…え?え?えー!え?
あ、も、もちろん家族としてだよな
あははー勘違いするとこだった」
「ううん違うの好きなの」
「…あ、あぁ、友達としてな」
「…うぅっ
とりあえず伝わってよ…。」
目を潤ませて泣きそうな那緒を見て、おれは悟った。
なるほど、神にも神の事情があるのか。
那緒が地上で暮らせたのは何かしらの条件があったのかもしれない。
だっておれのイメージでは神は地上に対して不干渉で、空の上に滞在してるイメージだから。
事情や条件がなきゃ勝手に地上に出られないのかも。
となると、那緒の神としての親がここら辺にいて盗聴していて、
そして那緒が送り込まれた時の言葉はよくあるやつだな。
『さっさと彼氏でも作ってこい!』
『まだ彼氏もできないのかいこの子は』
『子供ができなきゃ引き継げないじゃないか』
とか何とか。
だから、それを達成できたと伝えたいと。
彼氏を作らないと神として親に会えないから、演技をしてでも親に伝えたいと。
なるほど。
おれもよく親や親戚にに言われていた。
『早く彼女はできないのかい?』
と。
テレビとかでよくあったな。友達に彼氏役を頼むやつ。
おれもやろうと思ったのだが、そういうことを気軽に話せる女子が那緒しかいなく、それを話すと毎回積極的にやろうとしてくれた。だが、仮に彼女役だとしても可愛すぎると疑われるし、本当は違うとバレた時が大変だ。幼馴染だからといろいろ手伝ってくれようとしている那緒には悪いが遠慮していた。
そう考えるとおれは、親に彼女の紹介すらできていない。別にどうってことないのだが、謎の罪悪感がある。
まあ話は飛んだが、那緒はおれに彼氏役を頼みたいのだと思う。
きっとそうに違いない。
だって、那緒がおれのことをそういう感情で見るはずがないから。
おれらは家族愛なんだ。いや、神だとわかった今、神に愛情を持たれているのは自惚れすぎかな。でも転がった後もちゃっかりと現在進行形で膝の上に乗って甘える那緒を見ていると家族愛くらいはあってもおかしくないような…。神だと慈愛とかなのか?
頭の理解が追いつかないが、相手の言葉の裏の裏みたいのを読んで理解させた。
そのはずなのだ。
なぜ動揺しているのかというと、「ずっと一緒にいたい」とか言われることは今まであったが、「すき」という言葉で伝えられたのは初めてだったからだ。
小さい子が初めて自分の名前を呼んでくれたかのような嬉しさ。
しかも、話の流れがわからない。先ほどまで玉樹の話をしていたはずだ。好きというのは関係があるのだろうか。
まあばかなところがありながらも賢い那緒が見当違いのことをするはずがないのでとりあえずは那緒の話に乗ろうと思う。
だからおれはちゃんと演じ切らなければならない。頑張ってくれた那緒に応えなければ。
「なお、ごめんな、やっと理解した。
おれということが鈍感だった。
那緒、おれからも言わせてくれ。
那緒のことが好きだ。結婚しよう」
うんうん、これで上手く行った。
「ーっ!」
あれ、?
ってあれ!?顔が真っ赤…なんですけど…。
おれ、やりすぎたかな…。
いくら演技だとしても言いすぎたよな。
恋愛感情で見れないのにきつかったか。
そりゃそうだ、おれだって、急に言われたら怖いと思ってしまうかもしれない。
怒りで赤くなっている。
「あ、那緒、ごめんな。
おれそういうつもりじゃなかったんだ」
弁解したいにも、どこで那緒の神親が聞いているかわからないし、だとすると、「今のは嘘だ、那緒の演技に合わせただけだ」なんていうと、那緒のさっきの頑張りが…。
「那緒、ちょっと耳借りるぞ」
「っん。」
結局おれは、俗に言うこしょこしょ話で話すことにした。
急に近寄って囁くのは、余計に嫌な気分にさせてしまうかもしれないと思ったそこのあなた!
那緒は、自分から膝に乗ってくるんですよ。スキンシップは大丈夫なんですっ!
恋愛感情がなきゃ!
好意に鈍感だけど、一回言われると過剰に意識しちゃうから。でも神なら恋愛感情と友情の違いくらい理解できるよね??いやできてくれ…。
あ、そこのあなた、思ってなかったらごめんなさい?
「那緒、ごめんな。
那緒のこと困らせたり不快な気分にさせるつもりはなかったんだ。
ちょっと過剰演技だったな。
これからは気をつける。
けど、おれは那緒のこと、本当の家族のように好きだから、これからも好意を見せてしまうかもしれないけど、恋愛感情じゃないから、今まで通り接してくれると嬉しい」
ちゃんと弁解できた。
そう思ったのに、
「…」
泣き出した。
大粒の涙が溢れて、またもや嗚咽。
うぐっうぐっなんて声出して、そりゃ、そうだよな。
急に恋愛感情持たれて怖くて緊張したよな。そんなことないってわかったら緊張感途切れて安心する。
わかる。
しかも、自惚だが、本当の家族のように好きとか言われたら那緒なら泣きかねない。
「泣かなくてもいいじゃないか
ほら、これあげるからさ」
なぜかポケットに入っていたナオキャンディー。
那緒はすぐ拗ねるが、飴をあげるとほとんどの場合は元通り。
この飴を前に友達にあげたら、那緒は怒った。
自分の好きなものを取られるのが本当に嫌なのだろう。
それからこの飴はナオキャンディーと呼ばれるようになった。
と言うのは余談だ。そして、もちろんこの名前を考えたのは那緒。
絵が下手なのは前に言ったが、わかる通り、ネーミングセンスもない。
まあ、わかりやすくて良いが。『ナオキャンディーなのにぃなお以外にあげちゃだめぇうぅっ』という感じで泣き続けた。
そして現在、
「ぷい」
え?
何でぇ。
あぁ、やっぱ傷は深いよな。
飴で賠償できると思ったおれが悪かった。
ちなみに、音付きぷいはあざといのではなく素なのだ。慣れた。
本当に拗ねた時によく音付きになる。
「今一人になりたいから螺緒こっち来ないでっ!」
怒られた。
顔や手足、耳は真っ赤。
だが、目は青い。相当勇気がいる行動だったのだろう。
とても、悪いことをしてしまったようだ。
どんだけ拗ねても泣いても、無視されることはあれど、一人にしてほしいと言われたことはなかった。
だからこそ、シスコンな兄が妹に捨てられたかのように辛い。
妹がいたことはないが、本当の妹なら余計辛いだろう。
…いや、。
那緒のことは本当の妹のように想っているのでめちゃくちゃ辛い!!泣きそう。
…だが一つ言わせてくれ。
こっちに来ないでも何も、、那緒が膝の上に乗ってるんだよっ?
読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、適切でない言葉、などがありましたら、教えてくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




