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第五十五話:爺さんと商人再び

ハンス! 生きてたんだな!(移動速度の違い)

 次の日からワシらはポーション作りに精を出した。薬草園から薬草を摘んですり潰して混ぜて……すり潰すのは若いもんに任せるかの。


 試作品も出来たし試しに売ってみるかの。おおい、そこ行く商人さん、ポーション買わんかの?


 「何やってんだよ爺さん」

 「お主は……ランスじゃったかの?」

 「なんか凄く嫌な間違いをされた気がする。ハンスだよ、ハンス! 全く、頑張ってやっとの思いで到着したっていうのに」


 そうそう、ハンスじゃったわい。エレ○バンじゃない、カイロと湿布を売らせてやったのう。


 「そうだ、在庫が無くなったんでこっちに来たんだけど、まだあるか? 仕入れたいんだ」

 「なんじゃそんなことか。それならタダでええから持っていけ」

 「だから、そんな真似は出来ねえって言ってんだろ? 商人ってのは自分の力で金を稼ぐことが目的なんだからな」


 世の中の商人には金さえ稼げればどうでもいいと思っとる人間もかなりおると思うんじゃがな。この愚直さは好感が持てるわい。


 「まあまあ、この湿布とカイロは手数料じゃわい。見てみい、ほれ、海魔がおらんようになって港も再開したでな。色々買っていってくれんかの」

 「嘘だろ……海魔退治しちまったのかよ。それならここの魚はいい商品になるな……でも保冷馬車とかないんだよなあ」


 なるほど。保冷が必要なら……ほれい、あ、ダジャレになってしもうた。口には出しとらんからええか。


 「これは?」

 「クーラーボックスと言うてな。ナマモノを保存しておける箱じゃよ。そうじゃな……三日くらいは大丈夫じゃろ」

 「三日!? なんだよ、それ、すげえじゃねえか」

 「もちろん中に氷とか入れとかんといかんがな」

 「そりゃあそうだろう。これなら大儲け出来そうだ。よし、爺さん、こいつをオレに売ってくれ!」

 「いやいやええんじゃよ。持っていきなさい」

 「だから爺さん……」

 「最後まで話を聞け」


 ワシはこのクーラーボックスが本当に三日持つのか分からないということ、使い勝手はどうかというのを確かめて教えて欲しいということを伝えた。


 「なるほど、つまり、オレは試す役って訳だ」

 「そうじゃのう。それで使えるんじゃったらいくつか売ってやるわい。その一個はお試し用として持っとってくれ」

 「わかったぜ!」


 嬉しそうにクーラーボックスを抱えてハンスは港へ……おや、戻ってきたぞ?


 「爺さん、あのシャンプーとか石鹸とかもおろしてくれるんだよな?」

 「…………おお、そうじゃったな。まあそのうちそのうち」

 「忘れてただろ! 頼むよ、あれはいいものだ」


 それからハンスに掴まれた服を放してもらうのに魚を仕入れたら領主屋敷に来いと言っとった。やれやれ、よっぽど欲しかったんじゃのう。まあ、シャーロットさんに初めて見せた時もものすごい剣幕じゃったからなあ。貴族に限らず女性なら欲しいのかもしれん。


 ハンスが魚を買って来たので買ってきた魚をワシが捌いてやることにする。魚を捌けるのかって? これでも一人暮らしが長かったからのう。一通りの家事は出来るんじゃ。というかハゼも捌いとったろ?


 さて、ハンスが買うてきたのはなんというか変なのばかりじゃった。うなぎとあんこうとタコとイカって狙っとるんか?


 まずはうなぎ。ワシは腹開きしかやった事はない。釘に頭を打ち付けて腹を開く。内蔵を取り除いて……やはり蒲焼かのう。蒲焼のタレは確かパックのが残っとったからそれを使うか。


 あんこうは捌き方とか知らんのじゃがやり方は見た事がある。流水で洗って表面のぬめりを落とす。腹を上にして置いて包丁を入れ腹を開いて内臓を取り出す。確かこんな感じじゃったなあ。まあ間違っとっても構わんじゃろ。ああ、皮は剥かんといかんなあ。


 タコとイカはしょっちゅう扱っとったから特に問題はないんじゃよなあ。問題なのは何を作るかっていうところか。タコは唐揚げかたこ焼き、イカは姿焼きかのう。


 そんなこんなで完成した品を夕飯に出した。普通に料理長に普通のご飯も作って貰っとったからそっちでもええという逃げ道は作ってな。


 ワシの料理が運ばれてくるや否やエミリー嬢がワクワクした目で見つめてきた。蒲焼もたこ焼きも香りが暴力じゃからなあ。


 「いただきます!」


 テーブルに並べられた料理を我慢できないという風にエミリー嬢が頬張る。まず蒲焼に手を出して、口の周りをベトベトにしながら美味しい美味しいと味わっていた。


 続いてエミリー嬢が突撃したのはたこ焼き。たこ焼きと言えば当然ながら口の中をやけどしそうになるアレじゃな。


 「あひゅいあひゅい!」


 それでもエミリー嬢は頑張って口の中から出そうとしない。そんなエミリー嬢の勢いに他の人たちも恐る恐る食べ始めた。んで、食べ始めたら手が止まらなくなってフィリップ殿とか涙を流しとったわい。ハンスは作り方を教えて欲しいと言うとったが、蒲焼のタレとかたこ焼きのソースと鰹節とかこっちで生産できそうにないしの。普通の魚を仕入れて売って欲しいと言うといた。

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