第五十四話:爺さんとポーションの後継者
ネックは体力
あれじゃのう。作ってみて思ったんじゃが、魔力はともかくとして体力を持っていかれるのう。というか混ぜ合わせるのが地味に重労働じゃった。年寄りには難儀するわい。
出来上がったポーション? おお、味が苦くないとか普通に売れるじゃろうということじゃ。しかし、大量生産するにはワシの体力がもたん。とか考えておったらワシの作業をじーっと見つめとる女の子たちがおった。
「やってみたいのか?」
聞くと二人はこくこくと激しく首を縦に振った。ならばやらせてみるのも一興じゃろう。とりあえず名前を聞いとこうかのう。いや、炊き出しにおったのは覚えとるんじゃよ?
「ならやってみたらええ。名前は?」
「サマンサ」
「タバサです」
……魔女なんかの? いやまあでもやってみるとええ。ほれ、こうやって混ぜてじゃな……ワシより手際ええのう。そんで魔力を少しずつ流してじゃな。おお、魔力の流し方が分からんか。
と言ってもワシもこの世界に来てから魔力というものに初めて触れたんじゃしなあ。そしたらエミリー嬢が部屋にやってきた。
「そういうことならわたしにまかせて!」
いきなりドアを開くなりそんな風に喋ってきた。いや、状況理解できとるか?
「へー、まりょくのながしかた?」
「そうなんじゃよ。ワシは何となくでやっとるから教えられんでのう」
「わたししってるよ?」
「そうかそうか……知っとるのか?!」
「えへへー、きぞくのひっすこうもく?だからできるようにってナニーにならったんだ」
なるほど。貴族は魔法を使うことが多いから出来るんじゃな。というかそういう教育がなされておるのか。
「この子たちに教えて貰えんかのう、エミリー先生?」
「えへへー、せんせい? わたしがせんせい? やってあげようかなあ(チラッ)」
「やってくれたら飴玉だけじゃなく他の甘いものもあげようかのう」
「やる!」
なんというか甘いものに弱いお嬢様じゃわい。誘拐されても知らんぞ?
「それではいいですか? まずはおなかにまりょくをぎゅーってします」
「ぎゅー?」
「それをおててにぐるんぐるんします」
「ぐるんぐるん?」
「そしててからどばーってしたらでるよ!」
「どばー?」
なんというか永遠に不滅とか言っとった監督みたいな表現方法じゃなあ。
「なあ、エミリー先生? 試しにやってみたらどうじゃろうか?」
ワシの言葉にサマンサちゃんもタバサちゃんも何度も首を縦に振った。
「えー? しょうがないなあ。じゃあまずおなかにぎゅーってするね!」
そういうとエミリー嬢は深呼吸をして両手をお腹のところに置いた。周りから魔力が集まってくるのを感じる。意識をお腹に持ってくればいいらしい。サマンサちゃんとタバサちゃんも同じ様にやってみる。おお、何となく集まっとるような気がするわい。
「つぎにぐるんぐるんするよー」
そういうと本当に手をぐるんぐるんしだした。遠心力というやつかな? いや、集中力がお腹から手先に移ったみたいだな。なるほど、集中する場所を移動するんじゃな。
「よし、二人ともお腹に溜めた魔力を少しずつ上に押し上げるんじゃ」
「はい!」
言われて二人ともできるようになったのはすごいと思うぞ? さて、最後は……
「じゃあさいごにどばー!」
メアリー嬢の手のひらから光が出た。攻撃とかそういうんじゃなくて単なる光じゃ。
「なるほどのう……腕に溜めた魔力を手を突き出すようにすればええんじゃな」
「やってみます。えいっ……あっ」
どうやら一回で成功したようじゃ。ふむ、でもポーション作りには役立たんわなあ。
「えー、なら今度はこの攪拌用の棒を持ってやってみい」
「え? はい。うーんうーん」
どうやら攪拌というものを意識しすぎて上手くコントロールが出来ないらしい。まあこれはある意味仕方の無いことかもしれない。となると習うよりは慣れろかのう。攪拌しとるのがわからんくらい意識せずできたら完成するに違いないの。となると攪拌の練習か。
「サマンサ」
「はい」
「タバサ」
「はーい」
「二人には豚汁を人数分作ってもらおうかの」
「えっ、とんじる?!」
いや、エミリー嬢に食べさせるとは誰も言っとらんぞ?
次の日から野菜を買ってきて、お肉も捕ったり買ったりしていた。お肉代とか野菜代はワシのポケットマネーじゃ。これもワシが楽になるためのプロセスじゃからなあ。さて、二人ともどうかの。
一週間もせんうちにサマンサちゃんもタバサちゃんも出来るようになったわい。さて、じゃあポーション作りに取り掛かるかの。薬草と甘露草は森で採取して来て貰っとる。さて結果は……おお、味はちゃんと美味いのう。品質は普通のようじゃが。製品化するならこれくらいの方がよかろう。




