第五十三話:爺さんとポーション作成
ねるねるね○ねはふぇっへっへっへ
冷蔵庫の中にあるのは……クラッシュアイスじゃな。いや、普通にアイスなんぞ買うとらんわい。しかしそれでなにか冷たいもの……ふむ、魔法使えば出来るかの。
クラッシュアイスをまとめて魔法で細かく砕く。風の刃をちょいと工夫すれば出来たんじゃよ。この砕いた氷にシロップがあれば良かったんじゃが、無いようなんで市場で買った果物を魔法で搾る。手じゃと汚れるし、ジジイの手で搾ったもんなんぞ口に入れたくないじゃろうからのう。
「おまたせじゃ、エミリーちゃん」
エミリーちゃんの前に置いたのはかき氷。魔法を使って無理矢理作ったんじゃ。
「いただきます!」
エミリーちゃんは運ばれてくるや否やスプーンを手にして迷わずいった。
「あまーい、つめたーい、おいしー!」
三段活用じゃな。美味かったようじゃ。それに味をしめてどんどん口の中に入れていく。そして……
「いたたたたた!?」
とうとうそれの痛みまでも到達した。いわゆるアイスクリーム頭痛と言うやつである。なんかキーン効果とか間違って覚えとる人もおるらしいわい。キーンと言えばワシの耳はキーンと音がして聞こえんことなっとったんじゃが今はなんともないわい。
「ほれ、温かい緑茶じゃ」
「ありがとうおじーちゃん。ううっ、あたまいたい」
「誰もとりゃあせんからゆっくりお食べ」
「はーい」
そして国王陛下とルドミラール夫妻にも出してやる。スプーンもちゃんと付けたからな!
「見た通りじゃ。ゆっくり食べなさい」
「いただきます。確かにこれは甘くて美味しい」
「おお、これはすごい……作り方を教えて貰っても?」
「構わんがキチンと魔法をコントロール出来る人じゃないと出来んでしょうな」
先程の果物を絞るやつはそこまで難しくない。いざとなったら圧縮すればいいだけの話である。問題は氷を作って削る段階である。氷魔法を使える魔法使いを探さんといかんからのう。
「さてと、お腹も太ったところでフィリップ殿と話さねばならん」
「明日のご飯ですかな?」
「スラムの事じゃ」
何を言うておるのかと思ったら。まあ食事が終わったあとで頭の中は料理でいっぱいじゃったかもしれんが。
「スラムの……確かに大事ですな」
ちゃんと顔がキリッとした。こうでなくてはのう。
「長い間、かどうかわからんが海魔バハムートがおった事で街が寂れスラムで路頭に迷う子どもが沢山生まれた。そしてそれは大人もじゃ」
「大人は警備に使うと言うことでしたな」
「幸いと言っていいかはわからんがこの領都には騎士団も私兵もおらんからのう」
騎士団、と聞いて国王陛下がびくっとする。いやいや別に責めとる訳じゃあないんじゃよ。
「その……カゼーイ子爵の捕縛に寄越した騎士団をそのまま常駐させましょうか?」
「さすがにそれは騎士団が可哀想じゃろう。来たがる人間がおるかどうかはわからんが希望者を言い含めて配備してくれると嬉しいがの」
せっかくじゃからここに来て好きになってくれるのがええのう。今のところはおらんかもじゃがこれから発展していくことを考えたら悪くない勤務地じゃと思うんじゃよ。
「それで子どもたちの処遇じゃが……なんかええ案があるかのう?」
「私としてはなんとも。孤児院なんかもありませんでしたし」
そうじゃ、それじゃよ。なんで孤児院がないんかのう?
「予算の関係でして……子どもたちを何とかする前に街が干上がりそうでしたから」
「まあこれからは収入も入ってくるじゃろう。とはいえ、すぐにでも色々必要になるとは思う。そこでワシが薬草畑を提案した」
「薬草……人の手で育てるにはかなりの難易度と聞きます。大丈夫なんでしょうか?」
薬草はやっぱり育てるのが難しいそうじゃ。というか放っておくと雑草になるんだとか。
「それでワシがしばらくの間ポーションを作ろうと思うんじゃが」
「作れるのですか?」
「簡単なものならのう。そのうち、錬金術師でも薬師でもええから人をまわしておいてくれると助かるのう」
「かしこまりました!」
フィリップ殿と国王陛下まで返事をされた。ま、まあ、ええじゃろ。斡旋とかして来てくれるなら助かるからのう。
ワシはどれ、と異空間収納から薬草と甘露草を取り出した。さて、あとは錬金術のセット?かのう。どこで売っとるんじゃろうか。薬草でポーションの作り方は……なるほどすり潰すんじゃな。ならすり鉢でもええか。
この時に魔力を加えるんじゃったの。おいしくなあれ、萌え萌えきゅん。とかやった方がええんかの? あれは付与されるのが普通に値段のみじゃとおもうん。
次に甘露草をこれまた魔力を込めてすり潰す。さっきとは違うすり鉢にするかの。
ぐるぐる合わせて混ぜて……うむ、これを煮出して出来上がりじゃ。さて、フィリップ殿に味見してもらおうかの。




