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第五話:爺さんとバザールに行くでゴザール

こういう展開もまたテンプレ。

 王都の手前の都市に着いた。ここは数ある衛星都市の一つらしい。近くには広大で肥沃な小麦畑が広がっているらしい。ふむ、米は無さそうじゃな。もしくは主食となっておらなんだかもしれん。白米が恋しくはあるが入れ歯とはいえパンが食えんほどではあるまい。そういえば入れ歯はどうしようかの? 定期検診も無いという事はこの入れ歯でどうにかせんといかんのか。


 などと考えていると何かの天啓を得た気がした。そういえば役立つとか言われて持たされたもんが……老眼鏡と同じところに入っとったの。おお、これは全自動入れ歯洗浄器じゃと! 動くのは魔力で寝とる間に自動的に洗浄してくれるんか。……やっぱり外さんといかんのだなあ。


 こう考えてみると要らんと思っとったもんを何故か持たされたのはその時点で齟齬があったからじゃな。ワシは十八歳のつもりじゃったからのう。


「おじーちゃん、ついたよ」

「どこにじゃ?」

「きょうはここでおとまりするんだって!」


 ふと顔を出すとそこにはとても立派な宿屋があった。貴族御用達というところだろう。前世でも旅行はしたがこのようなホテルには泊まったことがなかったわい。


「おじーちゃんもいっしょのおへや?」

「いやいや、ワシは別の部屋にしてもらうとしよう。なんなら宿屋も別でも良いくらいじゃ」

「いえいえ、恩人にそんな真似は出来ません。とはいえ同じ部屋は息が詰まるかもしれませんので別室を用意しましょう」

「えー? じゃああとであそびにいくね!」


 どうやらエミリーには懐かれてしもうたらしい。いや、これは……


「スマンがちょっとこの街を見てみたくなっての。街の中を歩いて来ても良いだろうか?」

「なるほど。そういう事でしたら御自由にどうぞ」

「エミリーもいく!」

「はっはっは。スマンがエミリーちゃんはお留守番じゃ。お父君が心配なされるじゃろう? ほれ、飴玉をやるから大人しく待っててくれんか?」

「わかった! わーい、あまーい!」


 子どもに言うこときかせるには飴玉に限るのう。さて、それでは街中に繰り出すかの。


 外に出るとそれなりに賑わってる方に向かう。宿の方の情報じゃと市場があるらしい。どんなものがあるのか見ておきたいもんじゃな。


 市場に近付くにつれ、人々の話し声が大きくなっていく。なるほど、なかなか活気があるようじゃな。立て札を見ると値段が書いておる様じゃな。日本語では明らかにないがどうやら判読は出来るらしい。自然に意味が頭に入ってきよる。ふむ、これなら不足は無いわい。


 異空間収納に入っておるお金を確認する。数字が表示されておるがこれはワシが向こうで貯めておった金額じゃな。老後に二千万が必要とかでコツコツ貯めたもんじゃがどうやらこっちの世界で使えるらしい。細かいのは生活口座に入れておいたものじゃの。年金受け取り口座じゃったし、光熱費や家賃はそこから引かれとったから細かい数値は覚えておらん。


 改めて市場を見て回るとしよう。なるほど、魚介類は無いようじゃが野菜類やらは豊富なようじゃな。他にも雑貨なども売っておる。おっ、鍋があるのう。


「スマンがこの鍋を貰えんかのう」

「鍋だって? じいさん、あんたが?」

「そんなに不思議な事かの?」

「普通は家にあるだろうし、買いに来るにしてももっと若い者が来るもんだろう?」

「残念ながら独り身でのう」

「独り身で今更鍋? あんた、今までどうやって暮らして来たんだ?」


 詮索が激しいのう。まあ説明してやる義理はないから売って貰えんのなら他に行くと言ったらあっさり売ってくれたのじゃが。単なる好奇心じゃったか。まあそれ以外無いじゃろうが。


 ワシは鍋を異空間収納に片付けると色々見て回った。野菜類やらを幾つか買って適当なところで異空間収納に仕舞う。そんな買い物をしておるとガラの悪そうな男数人に絡まれてしもうた。


「よう、じいさん。かなり羽振りが良さそうじゃねえか」

「恵まれねえオレたちにも分けてくれよ」

「荷物がないって事はお付でもいるんだろう? とっととかっさらっちまおうぜ」


 好き勝手な事を言いよる。周りの人らは……目を背けて居るのう。なるほど。こんな事は日常茶飯事ということか。人が集まると悪事も集まるとはよく言ったものじゃな。


 などと考えていると横から声が掛かった。


「何やってんだよ、あんたら! そんなお年寄りにたかって恥ずかしいとは思わないのかい?」


 見れば異性の良さそうなお嬢さんじゃ。赤髪に赤い鎧を来ておるが護衛職かなんかじゃろうか?


「なんだあ? しゃしゃり出てくるじゃねえよ!」

「さすがに見過ごせるものですか!」

「そんな半端な正義感で命を落とす事もあるんだぜ? もっともお嬢ちゃんみたいな器量良しなら命は助かるかもだけどな」

「死んだ方がマシって目に合わされるかもしれねえけどよ」


 完全に標的が赤いお嬢さんに移ってしまったかの。やれやれ、ワシ一人ならどうとでもなったんじゃが仕方あるまい。

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