第四十六話:爺さんとスラム街の明日
年長組の名前はまあテリー決めた時から出そうと思ってました。ジョーだけ独り身の予定(笑)
元通りくっつけてやったらゴロツキが全員平伏した。うむ、ちとやりすぎたかのう?
「あ、貴方様は神ですか? 天から俺たちを罰するために降臨されたのですか?」
「ええっ? じいちゃん神様なの!?」
「いやー最初からそうじゃないかと思ってたんだよな」
「うそばっかり。豚汁食べてからじゃない」
「私はハゼ食べた時からそうだと思ってたよ!」
いやいやいやいや、ワシは神なんぞではないよ。というかあの女神がどう思うか……なんか頭の中にグッジョブみたいな顔した女神の姿が思い浮かんだぞ?
「ワシは神ではないが、神はいつもこの世界を見とるからの」
うんうんと頷いとるな。いや、あまり見とらんかったじゃろうが。
「それでじゃ、お主らには自警団になってもらおうと思ってな」
「自警団ですか?」
「そうじゃこの街を見回るんじゃ。領主のフィリップ殿に言うておくでな」
「領主は娘と一緒にこの街を見捨てて王都に行ったと聞いたんだがなあ」
一体誰がそんな事を? フィリップ殿はこの領地を何とかしたいともがいとったはずじゃが。
「隣領から来た商人がそう噂してたんですよ。荷物をかっぱらう為にしっかり聞き耳立ててから間違いありやせんぜ」
動機はともかくとしてそれは怪しい話じゃなあ。一度隣領に行ってみる必要があるのかもしれん。おっと誰か来たようじゃ。
「あれがその商人ですぜ」
なんとまあ悪人面の商人じゃ。いやいや人を見かけで判断してはいかんのう。外面似菩薩内心如夜叉と言うからのう。いや、本来は女性の事を言うものなんじゃが外面が良くても内面が悪いのは良くおるからのう。きっと外面はガマガエルみたいでも心は……
「おい、貴様がこのスラムの責任者だな?」
「え? ああ、そうだが今は……」
「貴様らに仕事をくれてやる。ありがたく思え」
「仕事ですかな?」
「なんだジジイ? お前には言っとらんぞ?」
「まあまあお仕事でしたらワシも一枚噛ませていただけんかと思いましてのう」
そのガマガエルはジロリとワシを見下した。
「随分と上等な服を着とるじゃないか」
「へえ、最近入りましたもんでこの服が全財産でして」
「まあいい。貴様のようなジジイには言っても仕方ない話だ。そこのゴロツキども。一緒に来てもらおうか」
ゴロツキの頭はワシにガマガエルにわからんように顔を向けていたのでワシもガマガエルにわからんように頷いた。そのままゴロツキたちはガマガエルに連れて行かれた。
「ふむ、なんじゃろうのう」
と思ったが考えても仕方ないじゃろ。問題はこの子たちの生活が出来るようにする方策じゃ。一番は……農業かのう。さつまいもの種芋はあったかの。確か百五十日くらいで食えるようにはなるが、それまでの繋ぎ……そう、金を稼ぐ手段が必要なんじゃよなあ。
「お主ら、薬草を育ててみる気はないかの?」
「薬草? そんなもん売れるんかよ」
「漁師が漁に行く様になったからきっとけが人も増える。ちゅうことは怪我を治すための薬が必要になる。じゃからそれで薬草の需要も増えるっちゅうわけじゃ」
「なるほど。ポーションの需要も増えるもんな!」
ポーション? おお、そういえばそういうのもあったのう。材料さえあれば作れそうじゃな。作り方は……おお、頭に浮かんでくるの。薬草をすり潰して魔力を込めながらかき混ぜる。お好みで甘露草をすり潰して入れる……甘露草ってなんじゃ?
【甘露草:森のどこにでも生えてる草。葉っぱを魔力を込めてすり潰すと甘い汁が出る。普通にかじっても苦いので誰も採らない】
なんと。こんな近くに甘味があったのか。しかし魔力を込めるばかりじゃのう。これは魔力が大量に必要になるんじゃろうな。
「ふむ、よし、じゃあ年長の者はワシと一緒に森に行くぞ。狩りのついでに甘露草を採ってくるんじゃ」
「私たちは?」
「スマンがベッキー。ワシの金で晩メシの材料買ってきてこの子らと一緒に作っておいてくれんか?」
「オラに任せてくんろ!……いえ、お任せ下さい」
方言のままでええんじゃがのう。ゴロツキどもが帰って来たら一緒に食事を作るか周りを警戒する様にとも伝言しておいた。
テリーをはじめ、数人の年長者がついてきた。
「アンディです」
「ジョーだ」
「マリーよ」
「マイって呼んで」
合計五人。鍛えれば強くはなりそうじゃ。まずは罠を作っての狩りの仕方を教えた。非力でも出来るからのう。テリーは強くなりたいから戦い方を教えてくれと言っておったんじゃが、ワシにはそういう経験が無いからのう。今度ギャリソンさんにでもお願いしてみるかの。
次に魔法が出来るか試してみたらマイ嬢だけ出来た。特に火炎球はすぐ出来るようになって喜んどったわい。それで襲ってきた熊も仕留めたしの。まあ攻撃が来んようにワシがバリア張っとったんじゃが。




