表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/60

第三十八話:爺さんと女神

この仏、どうしようもない。

「なんか不思議だがお主からは神の臭いがするのう」

「魚なのに臭いが分かるんか?」

「臭い、と言っても嗅覚的なものではなくてな、なんというか神気と言うやつだな」


 どうやら臭ってた訳ではなさそうじゃな。加齢臭はなるべくせんように気をつけてはおるのじゃが……酵素入りの入れ歯洗浄剤は愛用しとるぞ?


「その通りです、バハムート」


 その時、不意に天から声がした。またあの声、ちゃうことは神様かの?


「その通りです。お久しぶりです、山本厳太郎左衛門様」

「ワシの本名を知っとるということは手紙にあった転生担当女神様じゃな」

「はい、あなたの担当の仏です」


 女神じゃのうて仏なのかの? いや、手紙には「女神」と書いとったが。でも以前に会った時も仏と言っとったのう。


「あの、私、瑠璃光浄土(るりこうじょうど)で成仏した比較的新しい仏でして。その、女神として世界を管理するように任されていたんです」

「瑠璃光浄土と言うと薬師如来様かのう?」

「はい。薬師如来様に仕えております。それでこの世界の管理を任されまして」


 どうやら新米の仏らしい。浄土で修行すれば成仏して仏になれると聞いた事はあるが……そもそも瑠璃光浄土は行き方すらわかっとらんかったからのう。


「私は、その、昔、病の人を助けていたので、その縁で薬師如来様に選ばれたんです。あと、極楽浄土は割と人が多くて合わないと言いますか」

「あー、まあ、人は多そうじゃのう。南無阿弥陀仏って唱えときゃええんじゃから」

「それで、お母様を献身的に看病する姿を見て、是非とも私の世界に、とお呼びしたのです!」


 なるほどなるほど。という事は母の看病をしとったからこの世界に来たという事じゃな。


「あ、あと、呼んでもそこまで悲しむ人が居ない方というのも」

「まあ、連れ合いもおらんしのう」

「しかし驚きましたよ。まさか、八十で転生したいなんて。その分特典バリバリつけましたけど」

「……十八と言ったつもりじゃったんじゃがなあ」


 それを聞いて仏が凍りついた。


「え、あの? まさか、間違えた?」

「そうさのう」

「あのあのあのあの、この事は薬師如来様には何卒内密に!」

「どうかのう? ワシは結構迷惑被っとったんじゃが」


 わたわた慌てだした仏。いや、別にそこまで困ってはなかったが何となくいじめたくなるものよのう。


「そ、それなら転生をやり直します? ちょっと死ぬのにかなり痛いですけど」

「なんでじゃ!」

「ひいん、生前病気で苦労したから健康な身体で、無病息災を願ったじゃないですか。毒も呪いも効きませんよ!」

「いや、するとバリアは……」

「異世界で動揺しないように、何事があっても揺るぎなくいたいからって泰然自若を願ったじゃないですか」


 泰然自若のう。という事は精神的な動揺にも強い……なんでバリアなんじゃ? もしかして精神的な防御=魔法攻撃とかなっとるんじゃろうか。


「おまけに異世界の言語やらそういう知識が欲しいって博覧強記を願ったので」

「なるほど、それで魔法が使えたんじゃな」


 ポンと手を打つ。ようやくわかったわい。という事は鑑定的なものも博覧強記の能力という事か。


「あとはアフターサービスで改心させる能力ってことで輪廻眼を目に」

「なんじゃその輪廻眼って」

「六道の能力を顕現させたり体験させたりする能力ですよ」

「という事はお経が発動したのも」

「もちろん輪廻眼の影響と博覧強記ですね」


 構成はよく分からんが、六道の力を借りて魔法の様な現象を生み出したらしい。もうむちゃくちゃじゃなあ。


「そう言えば異空間収納は助かっとるぞ」

「あー、あれは元々つけとく様に薬師如来様に言われてたんですよ。その、しばらくの間はちゃんと生活出来るようにと」

「無限に取り出せるぞ?」

「は?」

「じゃから異空間収納から無限に取り出せると」

「そんなバカな……ああああああ、個数の変数が固定値になってる! いくらやっても減らないし、状態も保存されてる!」


 ど、どうやら異空間収納の分はこの仏のミスの様じゃな。


「ほ、他に何かあったかのう?」

「ええ、はい、その、色々やりたいから技術が欲しいと器用貧乏の能力が」


 器用貧乏とはそこまで良さそうな技能じゃないのう。いや、器用なんじゃからそれはそれでええんかのう。


「ええ。その、人並み以上には出来ますがその道の一流というか神技レベルの人には勝てません」

「まあ人並み以上なら構わんじゃろ。そこまでな神器とか作る気もないしのう」


 そして海が揺れる。どうやらワシらのやり取りに我慢できず、バハムートが口を出して来たらしい。


「女神様、それで私はどうしたらいいのだ?」


 とても困惑した様子だが、女神様の言う事は守るつもりなのか、返答を待っていた。女神様もそうそうその事なんだけど……と話し始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ