第三十六話:爺さんと盗賊団のアジト
やはり話し合いで解決するのがいいですよね!
一番大広間に出るとボスらしき大男がおった。周りには女を侍らせとる。ええのう。いや、とうに枯れとるワシとしてはおっぱいをちょっとモミモミさせてくれるだけでええんじゃが。
「なんだ、テメェは!」
「お主がこの盗賊団の頭目かのう?」
「そうだ。オレがここのボスだ」
「あのなあ、これからこの街道は王都に行き来する馬車が多くなる。出来たら盗賊やめてもらえんかのう?」
それを聞いてボスが大笑いをした。
「はっはっは、バカか? そんなお宝の話聞いてこっちが引っ込むとでも思ってんのかよ?」
「聞いてくれたらええんじゃがのうってなもんじゃよ」
「聞くか、バカ!」
ボスはそのままそばにあったでかい刀……青龍刀かのう?をワシに叩きつけた。ボスはワシをやったと振り下ろすまでは確信しとったようじゃが……実際にワシのバリアに弾かれると顔色を変えた。
「なっ、なんだこりゃあ!?」
「ワシにそんなモンは聞かんよ。ほれ、諦めて解散するんじゃな」
「そ、そんな訳にいくか! こうなったら……ミリアム!」
その言葉に女のうちの一人が立ち上がってワシに火炎球を放ってきた。やれやれ。洞窟などの密閉空間で火の魔法は使わん方がええんじゃがのう。
「跳ね返るから気をつけるんじゃぞ」
「はあ? うげっ!?」
ワシに放たれた火の玉はそのまま跳ね返ってミリアム?とかいうお嬢ちゃんの足元に着弾した。いやいや、直撃じゃのうて良かったのう。
「ひっ、ば、バケモノ!?」
失礼じゃのう。ワシはバケモノではなくて通りすがりの旅の隠居じゃというに。越後のちりめん問屋では無いぞ。「ちりめん」を絹織物の「縮緬」では無くて「ちりめんじゃこ」じゃと思っとったんも秘密じゃ。
「さて、このまま縛につけ、と言いたいところじゃが、ワシ一人で全員分は面倒見きれんからのう。そもそもなんでこんなことしとるんじゃ?」
「オレらは元々漁師でな。怪魚が出てから海に出れなくなって、それまで裕福そうな商人を襲ってやっとの事で生活してたんです」
……それにしちゃあ先程の女を侍らしとる姿は様になっとったがなあ。
「あたしとそこのボスは元々他のところから来た盗賊なんだよ。他のみんなは漁師で、やり方がわからないっていうからレクチャーしてあげただけさ」
「ミリアム!」
「バカ、ボスコフ。この爺さんには何やったって勝てはしないよ。私の魔法も、あんたの剣も通用しなかったんだ。潮時さ」
ふむ、状況判断が出来とるお嬢さんもおるようじゃのう。
「お主ら殺しとかはやっとらんのか?」
「殺したら騎士団の目が向くからな。商人を何度か襲っただけだ。こんなところに貴族が来るとは思わんかったから貴族は殺す気で狙ったが」
「殺す気だったのか?」
「そりゃそうだろう! こいつらは漁に出れなくてここまで落ちたんだ。領主が、貴族がしっかりしてたら怪魚だって……」
さすがに怪魚を退治するのに貴族とかあまり関係ない気もするが……それにしても犠牲者っちゃあ犠牲者よなあ。
「よし、それならボスコフとミリアムの二人は今からワシと一緒に領主様の所へ行ってもらう。他のもんは……そうじゃな、これでも食べて待っとれ」
ワシが出したのはカンパン。避難の時の袋に入っとったやつじゃ。それを二十個ほど取り出して与えた。あとは……飲み物をペットボトルの麦茶があったから紙コップと一緒に出してやったわ。最初は怪しんどったが蓋を開けて注ぐと目を輝かせて飛びついて来た。
「それじゃあ行くぞい。あ、そうそう。小部屋の方におったヤツらは拘束しとるだけじゃから刃物で解放してやるとええぞ」
それから見送られてルドミラール子爵の馬車へ戻った。
「という訳じゃ」
「なるほど。盗賊は我が領の漁師だったか……済まなかった」
フィリップ殿が素直に頭を下げると、ボスコフもミリアムもびっくりしておった。
「いやいや、オレたちはそこにつけ込んだ悪党ですから……頭を上げてください。貴族の方に頭を下げられるような事はしてませんぜ」
「逃散したり飢え死にしたかもしれない領民をやり方はともかく守ってくれて感謝する」
「変なお方だな。オレたちは単なる盗賊だってのに……」
さて、それじゃあ怪魚退治のためにもとっとと領都に向かわねばなあ。
「ボスコフ、ミリアム、両名の処遇は領都に着いてから決めさせてもらおう。さあ、乗りなさい」
「よろしいので?」
「徒歩で領都まで歩かせる訳にもいくまい。それに何かあってもゲン殿が守ってくれるからな」
「ワシか? まあフィリップ殿はともかく、クラリッサさんとエミリーちゃんは守って見せるわい」
何やらフィリップ殿とギャリソン殿の文句が聞こえておるが無視して乗り込んだ。なお、エミリー嬢はミリアム嬢(のおっぱいの柔らかさ)が気に入った様でよう懐いとったわ。さて、そろそろ領都じゃな。




