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登場人物。


● 主人公:ソルシエレ・レベナン子爵令嬢。淡黄色髪、黄緑色の瞳。16歳。

霊が視えちゃう体質。生い立ちの関係で、人付き合いが苦手で慣れない、ちょっとツンな女の子。


● じじさま(故人):ルヴェナート・レベナン前男爵。

白髪、黄緑色の瞳。50代。

主人公の祖父。顎髭のある細身なじじさま。精霊の見方や扱い方を教えたりした。


● 王様:カルコス・ゼス・キュイベル。

黄金色の髪、紫の瞳。50代。

一章で幽体離脱して主人公に助けて貰った王様。王様呼びで名前は呼ばれない。顎髭たっぷりある、貫禄のある体躯。


● ダンおじちゃん:ダングス神官

黒い髪、茶色の瞳。44歳。

細目で額が広い。禿げじゃない。(本人談)

呪術がかかった箱を浄化した神官。主人公が神殿に居た時面倒を見てくれた神官。ダンおじちゃんと呼ばれている。


● 王子:アエス・ゼス・キュイベル。

金色の髪、紫の瞳。25歳。


くるりくるりと蝶が舞うかのように、華やかな衣装を身に包み華麗なステップを踏む娘達。


ここは王宮の大広間。


今日はデビュタントを迎えた娘達の華やかな宴の場。



私、ソルシエレ・レベナン子爵令嬢も本日デビュタントを無事迎えました!



ダンスは上位貴族が王族と踊り、ひと段落したら皆が各々に踊り始める。


王子や王族がデビュタント全員とは踊らないのだ。中位や下位などは大人しく観ているだけ。

王子と踊れないなんて!と回りは騒いでいるが、私は面倒なので御免である。

関わらないのが一番だ。

王子だって、デビュタント全員と踊ってたら体力保たないでしょ。大勢居るんだから1日じゃ終わらなくなる。限られた地位の特権でいいじゃん。



華麗なターンを決めくるりふわりと踊る公爵令嬢と王子様。

目の前で華やかに舞う二人。

王子が麗しのスマイルを撒き散らす。


だが、私は笑いを堪えているため苦々しい顔になる。周りからみれば嫉妬で歪む顔だろうか。


でも。

私の視線の先は王子じゃない。

微妙にズレた背後だ。


もちろん何も無い。

踊る王子の背後など近寄る者はいない。


だが、その宙を見つめ一人苦悶する私を気にかける者は勿論いなかった。





〈ルシェがデビュタントとは〉

『じじさま、今まで色々ありがとうございました』

〈こんな立派な姿を見れるなど〉


感涙に咽び泣くじじさま。

出来たらその涙を拭けたらいいのに。

誰も理解されない孤独を一番側で支えてくれたじじさま。デビュタントの姿を見てもらって今日は本当に良かった。



「ソル。父は仕事の話に向こうへ行って来るから。遠くに行かないように」

「はい。父様」


父様は男性陣が纏まっているところへ向かった。社交会は大事な仕事場だ。顔繋ぎも一苦労で、領地運営を左右しかねない。それにいつまでも親にくっついているのも恥ずかしいので壁際に逃げておく。



ーー私は表向き病弱と言う理由で神殿に預けられていた。


だから周りの令嬢達のような交流はなかった。神殿にいたから出来なかったと言うこともあるが。私の能力が他の人に露呈しないよう、お呼ばれもなかったし、お茶会などもなかったのだ。


そして、親子関係も若干疎遠だ。


幼い頃から視えて虚言を吐いた私に対しての対応から、気まずいのか気後れしてるのか他人行儀になりやすい。

神殿にいた期間も長いから、親子時間が短かったのも要因だろう。


それでもデビュタントの準備をしてくれたり、いじめも虐待もないし、お金をケチったりしないあたり親子の情はあるのだと思う。

ただ、慣れないのだと思う。

そう自分では理解して納得している。



知り合いのいない会場は華やかなほど自分の孤独が際立ち、居た堪れず隅の椅子に座っていた。


〈踊らないのかい?〉

『疲れるからいいの』

〈……あ、そうじゃ。さっきの王子の背後は滑稽じゃったのう!〉


私の気落ちを紛れさせようとオロオロしていたじじさま。

気を利かせて、さっき視た可笑しなことを話題に出してきた。



ーー王子の背後。


『ふふっ。アレは王ソックリでしたね』

〈だのう。流石血筋だのう〉


思い出して二人で笑った。

王子の背後で繰り広げられたこと。


王様ソックリの人が王様と同じく、


〈おおー胸が揺れる!もっと腰を揺らせ!〉


と、王様と同じことを言っていたからだ。


服装は煌びやかな衣装だから王族の身内だろう。顔もよく似てるし同じくスケベな態度を見るに近しい間柄なのかとも思った。


〈まぁのう。男は全てスケベなのじゃよ〉


そう男代表としてじじさまが代弁していますが知りませんよー。






◇◆◇




あら、ソルシエレ・レベナン男爵令嬢じゃなくて?」

「いえいえ、男爵から子爵におなりになられたのですわよね」

「どうして子爵になられたのか。秘訣を教えて下さらないかしら?」

「………はい?」


突然声を掛けてきた令嬢三人。


本来なら名を呼ぶ前に自分の自己紹介をしなきゃダメなのに。多分私を格下として話しかけたきたのだろう。

デビュタントは、白い色のドレスが基本だ。初々しいく若々しさの象徴としてシンプルなのが好まれる。だがこの3人、レースに飾りにプリーツにリボン。派手に飾られたドレスは逆に幼さを感じられなんともチグハグな感じが否めない。

自己主張の激しいドレスは中身も同じなのかと思いながら眺めた。

先程の声かけもある意味喧嘩に近い。

私にマウント取りに来ているんだろうけど、まだまだ甘いな。


「これはこれは。何処のどなたか存じませんが。どのようなお話しでしょうか?名乗りあげない無作法が礼儀だとは。社交会の最新の礼儀を心得ず申し訳ありません」

「「「 !! 」」」


喧嘩を買いつつ表向き謝罪しておく。

貧乏男爵時代に培った田舎根性なめんなよー。小娘の小言なんて可愛いもんよ。

それに怖いアチラの方々に比べればなんてことないのだ。


顔を赤くしてキッと睨む辺り、暇つぶしに来て返り討ちされて逆上ってところかな。キリキリと眉を釣り上げて睨むと可愛くないよー。


この三人の背後に立つアチラの方々もあまり雰囲気がヨロシクない。

尊大で人を見下すタイプは歴代から続いているのがよく分かる図だ。


「このロナータ侯爵令嬢様に向かって失礼よ!」

「そうですわ!ロナータ侯爵令嬢様がせっかく声をかけてくだされているのに」

「申し訳ありません。顔も知らず名も知らぬ方。謝罪致します」


ロナータ侯爵令嬢とは言うが、家名すら正式に聞いてないからね。知らないよ。

きっと話しかけて、『あ、ロナータ侯爵令嬢様!お話し出来て光栄です!』とでも期待してたのかな?本当に知らないんだけど。アナタなんて。


「……わたくしはロナータ・ファンファ。侯爵の娘よ」

「私は、レベナン子爵が娘、ソルシエレ・レベナンと申します」


やっとちゃんと挨拶した。

目を細め憮然とした表情で私を見る目は完全に敵視している。


「デビュタントを迎えて交流がないのも今後お困りになるでしょ。懇意にしてあげてもよくってよ」

「………」

「侯爵の私がつけば、デビュタントした貴方には徳でしょ?」


どうやらウチの爵位が上がったし、周りに付き合いがない家だから、自分に引き込みたいようだ。

私が社交会に交流がないのは知られているようで。周りに人が居ないうちに唾つけとけば優位になるとでも思ったようだ。

派閥の力関係の底上げも大変な事ねぇ。


このちょっとしたゴタゴタで注目されてしまい人垣が出来ていた。無名な貧乏元男爵には慣れない状況に汗が流れた。


帰りたい。逃げたい。面倒臭い。


返事をしない私にロナータ侯爵令嬢は憮然としている。

こんな令嬢とは関わり合いになりたくない。ウンザリして返事を悩んでいるところに、周りにいた人混みが割れて静かになり道ができた。


その道の先に居たのはーー



「やあ、君がソルシエレ・レベナン子爵令嬢かい?父上から面白い話しを聞いたんだ。私にも聞かせてくれないか?」


煌びやかな王子様が立っていました。


王子が手を差し伸べる横で、ロナータ令嬢が眉を釣り上げ眉間に皺が寄った恐ろしい顔をしているのは怖!


『じじさま。帰りたい』

〈無理じゃのう……〉


二人して怯えながら目の前の御仁を見つめた。




紫の瞳は王の血筋。

ゆるいウェーブの金髪にすっと通った鼻筋。薄い唇が柔らかく弧を描く。微笑の美丈夫だ。

向けられる視線は優麗でありながら、どこか鋭さを含む。


綺麗な紫の瞳に射竦められて逃げれるわけもなく。

恐る恐る手を取ると王子は満足げにエスコートしていく。


歩くたびに背中に視線と言う矢が何本も刺さるのが分かる。




ああ、帰りたいー!








すみません、遅くなりました。

二章は15話くらいになります。


ご読了ありがとうございました。

次話もよろしくお願いします。

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