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お目に留めてくださり感謝します。
ソルシエレ・レベナン男爵令嬢。国家転覆の容疑有り!御同行を」
「はい?」
レントハウスの玄関前に並んだ騎士達がぐるりと私を囲み、あっという間に連行された。
気がつくと個室に座らされ、おっかないオッサンとゴッツイ騎士達に取り囲まれた状態だ。
取り調べ室は窓もなくて息苦しい。
〈ルシェや。大丈夫かい?〉
『じじさま……。私どうなるんだろ……帰りたいよう』
心細さにじじさまに縋っていたが、現実は許してはくれなかった。
オッサン騎士がズイッと身を乗り出し拳をドン!と音をたてて机に乗せてた。気絶しそうな程の眼力でこちらを睨んでいる。
「さて。君は何故王家の話しを知っているかな?」
「……はあ。何のこと……でしょうか?」
「情報の出どころが君だとは割れている」
「なぜ箝口令が引かれた情報を持っていた!」
どうやら王様が寝込んでいる情報をギルドから辿られて、私を連行したようだ。
知っている=犯人って言うこと。
王様が寝込んでいる理由の犯人とされているのか!!
マジか!
ヤバッ!!!
今気づいたよ!!
今更、この情報のヤバさを感じた。
だらだらと冷や汗が流れ恐怖に身体がガタガタと揺れていく。
でもその後ろでじじさまが頑張っていてくれていた。こんなのは冤罪だ、濡れ衣だと。
騎士達の背後にいるアチラの方々に話しかけているのだ。アチラ側から印象操作でもしてくれると嬉しいけど。
どうやらアチラの方々、先輩だったり息子だったりするようで。
〈冤罪だから!〉
〈捜査ミス!〉
〈経験不足だぞ!〉
〈そんなじゃ女にモテんぞ!〉
じじさまから真実を聞かされたアチラの方々は対象者にアドバイスと説教してますが。
効果ないみたいですねー。
みんな霊感ないんだから。
この脳筋め!!
「ソルシエレ嬢。何故、寝込んでいると知った?」
「………えーと。人伝?」
生き霊ですが王様本人から聞いたのですよ。
「我々は憲兵ではなく、王側近の近衛だ」
「王が意識不明なのは当然箝口令で、しかも限られた人しかしらん!内部の上役に知り合いでもいるのか?!」
「………居ません。知りません」
王様本人からの自己申告です。
「そう。君も家門も誰とも繋がりない。だから犯人からは程遠いはず。なのに何故知ってる!!」
「正直に話せ!!!」
「隠し立てするな!!!」
方々から怒鳴られて身体がビクリとした。
何度も何度も問い詰められ、尋問され脅された。怒鳴り声に身を竦め恐怖に涙がポロポロと溢れてくる。
帰りたい。
怖い。
ただそれだけしか考えられなかった。
◇◆◇
「欺けるとは思わぬことだな!」
「一晩頭を冷やせ!」
「明日からは辛くなるぞ!」
「話すなら早めにしておくのだな!」
ドスの効いた恐ろしい声とともに牢屋へと押し込まれた。
詰問されて身体共にヘトヘト。
牢屋は寒いしベッドはただの板だけで汚い毛布一枚だけ。
しかも牢屋なんて陰気な所、ヘンなモノしかいない。
悪い霊達に粘着され魘された。
じじさまが追い払うがゆっくり寝れたものじゃなかった。
◇◆◇
朝日が微かに入る小さい天窓。
一晩中眠れず、うとうととしながらぼんやりと見上げていると、ザワザワと騒がしくなってきた。
ご飯の時間かなぁと思ったけど、こんな場所のご飯なんて食べたくない。膝を抱えて頭を埋めてただ無心になっていた。
邪なアチラの住人からの接触を断つには自閉モードが一番。
牢屋の外の音も意識しないで済む。
じじさまが心配そうな顔してたけど。
ごめんねじじさま。
心配かけて。
こんな変な能力あって家に迷惑ばっかりだね。家門に傷つけて。
もう私、破門でいいよ。
こんな能力何であるんだろ。
何で生まれてきたんだろ。
もう、
やだなぁ………。
沈んでいく意識。
一晩眠れなかった私の瞼はゆっくりと閉じていった。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
柔らかな温もりに包まれ、薄っすらと目を開けると煌びやかな世界が広がっていた。
キラキラと光る眼前には天使が舞っている。
天使?
ああ、天国だ。
私、死んだ?
〈死んどらん〉
ん?じじさま?
『私、天国?』
〈死んどらんよ〉
『なら幽体離脱して移動でもした?』
じゃなきゃ、こんな豪華な景色見たことない。
〈ここは王宮じゃよ〉
『へ!?』
王宮?なんで?
驚きで目を見開き飛び起きた!
地獄から天国。
牢屋から王宮って。
なんでぇーーー???
次で第一章終わります。
二章でヒーロー登場です。
ラブラブは三章くらいからになります。
ご読了ありがとうございました。
次話もよろしくお願いします。