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お読みくださりありがとうございます。

よろしくお願いします。

ファルシュさんに呼び出され応接室に向かった。



「解呪の用意ができたんですか?」

「ああ、ヴェクステル館長がレベナン嬢の同席を願っていてね。どうする?」

「………………見ているだけなら」

「どうした?」


反神聖結界の解除の手筈が整い、解除の際に同席しないかとのお誘い。でも今の私の心境はそれどころじゃない。

上の空な私にファルシュさんが様子を伺ってきた。

今は伺わないで下さい。様子も見ないでほしいんです。


「………なんでもないです」

「………………」


私の生返事にあからさまに不機嫌な表情を浮かべられた。そんな顔されても理由など言える訳ないのだ。目つきからして説明しろと一瞥されたが断固として口を閉じた。




◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



「来て頂きありがとうございます。ここを見つけられたレベナン嬢には見る権利があると思いまして」


解呪を観に地下の神殿へ向かうと、ヴェクステル館長が出迎えてくれた。


いつ見ても美人さんなヴェクステル館長は周りの男性の視線も釘付けにする。男だと知っていても目を奪われる美しさ。その美しさの一割でも自分に有ったらいいのにとちょっと僻んでしまいそうだ。


「これで祝福が戻ればいいですね」

「解除してどんなことが起きるか、レベナン嬢の目で視てもらいたいのです。何ぶん初めての事。精霊で護りますのでお願いしていいですか?」


また断りにくい頼み方だ。

もー、大人ってズルいわ!

“お願いしていいか”と言われて、嫌だとは言えないじゃん。


それでなくても、先日口説かれて「お断りします」と言った相手だ。

バツが悪い上に気まずいので、お愛想笑い浮かべて頷いた。




◇◆◇




ここに来るまで、護衛は毎度変わらずマアディン卿。



迎えの時から気不味いのは当然で。

向けられる視線には熱が含まれているのがよく分かる。目が会うたび意味深に目を細めるので視線が定まらない。


何故私なのだと自問自答するが、やっぱりよく分からない。前回理由を述べられたが、どこでそう思ったのかさっぱりだ。



視線を感じるたび耳まで熱くなるから髪型はおろしたまま。ハーフアップにも出来ない。まあ顔を隠すのに丁度いいからそのままにしてる。


「今日は髪を結わないのですね」

「ふぇい?!か、髪ですか?結わく気分じゃなくて……」


言わずもがなプレゼントのリボンを匂わせてきたマアディン卿。

そうすぐにプレゼントされたリボンを使うのは恥ずかしいんですよ!



時間が欲しいとは言ったけど。


こう何度も顔を合わす機会があると落ち着かないわ!




◇◆◇



反神聖結界の解除にヴィーエさんが中心となっている。


周りに指示しながらテキパキと広場の中心に魔法陣を構築していく。それを眺めていると隣りに居たヴェクステル館長が顔を寄せてきた。


「良かったら魔法館に席を持ってみませんか?」

「……………?!」


思いもよらなかった提案に言葉を無くした。

魔法館は得意稀な能力者の集いし館だ。国の機関であり、早々に入れるものじゃない。自分の視えるだけの能力程度では到底及ばない世界だと認識している。



「お付き合いが難しいなら、まず私を知ってもらえたらと思いまして。どうです?魔法館ならアチラの方々の研究もできますよ?」


スルリと手をとり口付ける素早さに呆気に取られた。手早さに慣れを感じる。


そのお誘いは私利私欲含めたお誘いですね。

分不相応で入ったら後で痛い目にあうヤツだ。

騙されちゃダメなヤツ。

怪訝な顔で見ていたら、怪訝な顔で返された。

小首を傾げる美人さん。

すっと手を引き抜けば残念そうな顔してますが。何人の人にそう言って口説いたんですか?



「ヴェクステル館長、ソルシエレ嬢は王が庇護下に置く者だ。余計なことはなされないように」


マアディン卿が割って入ってきた。

ヴェクステル館長が「おや」と顔をマアディン卿に向けた。


あの一件からマアディン卿とどう接していいか分からない私。

何となく距離感が掴めずあまり顔を見ないようにしていた。だって恥ずかしいし。

惚れたと言われたわけだけど。

ちゃんとした言葉にはなっていないわけで。

なんか胸の中がもやもやするのだ。


ヴェクステル館長があからさまに顔を曇らせた。片眉を上げマアディン卿を見る。


「何故名を?令嬢への名呼びは護衛として居る貴殿には許されないのでは?」

「ちゃんとソルシエレ嬢からの許可は頂いておりますので。ご心配なく」


えー許可出したか?

許可と言うか、なし崩し的だ。大人の絡め手に誤魔化されたようなモノだ。


即答して背後の私をヴェクステル館長からの視界から遮るように背に隠すマアディン卿。

マアディン卿の背後のアチラの方も仁王立ちで勇ましく立ち塞がる。ヴェクステル館長の周りの精霊はパチパチ光りながらプルプル揺れてるし。

視界が賑やかなのが困りものだ。


「せっかくのお誘いですが、お断りします。私は魔法使いとは違いますから」


マアディン卿の背中からひょいと顔を出してそう言えば二人からバッと視線を向けられた。

その勢いにちょっと腰が引けた。

美人と強面。どっちも真顔だと迫力があるのよね。


それに、「ここで暮らすつもりないので。自領に戻らないと。一応これでも一人娘で嫡子なので」と伝えれば二人もと考え込んでしまう。そんなに悩むことじゃないと思うんだけど。




「準備できました」


ヴィーエさんがヴェクステル館長に声を掛けて、二人の雰囲気は解けた。それに安堵しているとヴィーエさんが近寄ってきた。


「お前、面倒臭いのに目をつけられたな」

「はい?」

「館長がこんなに気にすんの初めて見たし。観察対象としては確かに珍しいもんだけど」


ヴィーエさんが私を頭の先からつま先まで視線を動かした。

じろじろ見んな。

「外見が平凡なのはお互い様だ」と言うとヴィーエさんにデコピンされた。「痛いじゃん!」とおでこ押さえていたら、ヴィーエさんの背後のお婆様がオロオロしてる。


「お婆様が女性には優しく!って言ってペチペチしてるよ」としたり顔で言うと、やっぱり顔を赤くした。


「ほっとけ!」


ヴィーエさんの捨て台詞は別に気にしてないけど、お婆様がヴィーエさんをメッてしてるのは見ててなんだか可愛かった。


〈うんうん〉って相貌緩めてるじじさま。浮気?



◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



神殿広場の真ん中に大きな魔法陣が描かれて居る。


ヴィーエさんが陣の真ん中に立ち杖を着いた。

魔法陣が光り発動と共に風が立つ。

旗めくマントの裾が舞い、目が眩むような強い光りが瞬いた。


キシキシと硬い物が擦れるような音が聞こえたと思ったらキィインと高い音が鳴ると次の瞬間、パリィン!と爆ける音が響いた。

キラキラと煌めく破片が散っていく様子は星が降るようでとても綺麗だった。



ヴィーエさんが構築した魔法陣は正解に発動し反神聖結界は崩れ去った。



こうして反神聖結界の解除は終わった。





ご読了ありがとうございました。

次話もよろしくお願いします。

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