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よろしくお願いします。

『どうなるか分かりませんが、やれることはやります。ですが上手くいかなくてもわが家を処罰しないでくださいね!』

〈ああ!勿論だ!解決の折には褒美を授けよう!〉


威風堂々。王様の仁王立ちは銅像より威厳たっぷりだった。



『では、王様。いくつか質問いたしますが、よろしいですか?』

〈何でも質問するがいい!〉

『気がついたらと、申しましたが。ここには来たことはございますか?』

〈いや?銅像除幕式などは王子が行なった。したがって儂はここに来てはおらぬ〉

『そうですか。本来、霊体などになると理性が外れ本能で動きます。そのため気になる場所や未練がある場所、思い出のある場所に引き寄せられることが多いそうです。アチラの方々が言ってましたので』

〈ほう。アチラの方々とは面白い〉

『王様も視えませんか?』

〈ん……。まあ、見えるが〉


今王様もアチラの住人の仲間入りじゃん。

ウチのじじさまと話せてるし他にもアチラの方々はいるんだけど。

相手にしてもらえないようで王様は憮然な表情を浮かべた。

霊になってまで王様を崇め奉るとは普通ならないだろう。それが不満だとフンスと鼻息を荒げてた。なので人々が行き交う中、こちらに目を向けるアチラの方々は居ない。浮遊霊だってわざわざ王様だからって近づかないよ。興味ないし。でも時折りふわりと建物の影からこちらを見る霊がいるが。ちょっと気になるのかな?


霊体の発現場所や発現理由なんて人それぞれだけど。他に移動した理由を思い返した。


『あ、あと、物に未練があるとソレがある場所に移動するとも言ってました。何かこの銅像に気になるものや大切な物を記念に飾りにしたり埋めたりしませんでしたか?』

〈大臣共が儂の栄光を讃え銅像設置を決めたからのう。全く関わっておらぬ〉


知らないみたいだから、物を未練と言う推理も外れた。せっかく思い出したのに。


『今日はもうこの辺で終わらせてもよろしいでしょうか?あまり座り込み続けるのも不審なので』


年頃の娘が一人で長時間座っているのはちょっとまずい。ナンパ待ちで男を待っていると取られるから。


〈致し方ない。また明朝儂の何処へ来るのだぞ〉


明朝って。朝からは無理ですよ。そこまで暇じゃないので。寂しいのは分かりますが。独りになるなんて王様には初体験でしょうし。


不満顔の王様を残し帰路に向かった。

フードを深く被り顔を晒さないように歩く。

貧困男爵で平民と変わらない平凡な町娘な私でも一人での外出は気をつけてるのだ。


街の中を歩き人通りを抜けていく。


その時、視界を横ぎったものーー


 〈……………右足〉


ーーそう言って消えた浮遊霊。


力を使い果たしたと言うより、私に伝えて満足げな表情で消えていった。



ハッと見上げ消えていった方を視たがもう空しか見えなかった。



◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇




「ジャック。静かに」

「お嬢様、難しい注文ですね」

「人目が向かないように」



男女が台座の縁に座り大きな荷物を置いて一休み。そんな普通な風景。


そう見えるはず。


その荷物の影で銅像の右足を調べているのだ。

あの発言を聞き下男の一人、ジャックを連れて来た。


〈右足〉と言って消えた霊。


穏やかに消えて逝った。

未練が晴れたのだと思う。


あの霊が何か関わっているのだと直感した。

銅像の何に関わっているのか。



「お嬢様。右足を触りましたが。靴の踵の一箇所だけザラザラした箇所がございます。あとから弄ったと思われる境目がありました」


ビンゴ!

そこが何か分からないが、原因かもしれない。



『王様!銅像に傷つける許可を頂きたい!』

〈うむ!良きに計らえ!儂が許可する!〉



とは言え。

霊体な王様に許可貰ったところで、実際にやれば憲兵に捕まり牢屋行き確定。



仕方ないか、と街並みの中へと足を進めた。



◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



「頼み事あるんですがー」

「おや、お嬢様。今日はどのようなご用件で?」

「ちょっと探し人?かな」



訪れたのは情報ギルド。


王都滞在中、このギルドに何度か通ってお小遣い稼ぎをした。


霊体からの情報で行方不明者を探し出したりした。後は無くし物探しとか。物のある場所の情報とかこの情報ギルドに提供した。

アチラの方々に聞いたことだから、ほとんど労力なしでの情報活動は楽だった。


そのこともあり、情報ギルドでは受付とは顔見知りだったりする。個室に通され担当者に依頼内容を話す。


「依頼しに来たの。硬いものの中から物を発掘して取り出せる人。人目に気づかれず夜陰に紛れて仕事出来る人。そんな人を紹介して欲しいの。勿論秘密厳守で」

「人目を避け夜陰に紛れて、となると盗賊ギルドが人材多いですがリスクありますので。採掘ギルドの人材にしておきましょう」


もちろん盗賊ギルドなんてお断りだ。

確かに銅像から盗み出す?訳だが。コレは盗み出すに入るのだろうか?微妙なとこだと悩んだ。


「冒険者ギルド所属のシーフ兼発掘をする者がおります。こちらの方がおすすめです」

「守秘義務できる人?」

「はい。ギルマスも目をかけてる人ですよ」


ダンジョンでシーフしながら発掘するのか。ギルマスに目をかけられるなら優秀なんだろう。だがこちらは何より守秘義務が第一優先。王様の銅像に手をかけるリスクは重い。それをどうするかが悩みどころ。


「申し訳ないけど、ギルマスいます?」





担当と代わりギルマスが入室すると空気が一変する。柔和な顔して鋭い眼光を向けられ背中がチリチリとして冷や汗が流れてくる。


「久しぶりだね。いつも面白い情報ありがとう。今日はご利用とのことだけど。なかなか興味深いね」


年齢の分からないこの人。若そうだけどかなりの年齢らしい。ギルマス後ろのアチラの住人さんもかなり胡散臭い。


「ちょっと面倒なことになったので守秘義務優先の人を紹介してもらいました。ただ、内容に問題があるのでギルマスにお伺いを立てさせて頂きました」




「ふむ。銅像の足か。元に戻しておけば大丈夫と?」

「はい。そう思ってはいるのですが。やってくれる人を探すのは難しいので」


一連を話し、銅像と言う国の物に手を出すリスクを伝えた。

そんな仕事を請け負う人がいてくれればいいけど。


「対価は?」

「王様の話し?かなぁ」

「………ほう?」


王様が寝込んで生き霊でフラフラしてるのは一大事だと思うし。まだ死んでないし、フラフラしてるのは言っても無駄だから言わないけどね。


無言のまま出された書類。


「この人物に依頼をしておこう。こちらで呼んでおく」

「わかりました」

「で。情報は?」

「王様が寝込んでます」

「寝込んでいる?」

「ほぼ意識不明状態でしょうね」

「どこ筋の情報かな?」

「秘密です」

「……だな」


いつも情報だけを渡す。

情報元なんて出せないし、言えないし。

言葉少なに、でも目力の圧を感じる会話は小娘な私には荷が重い。

早く帰りたい。

「これでロハね」と席を立った。


依頼の代金なんて払いたくないし。

王様からの仕事とは言えタダ働きなのだから、この情報で差し引き実質0円。

男爵家の財状は厳しいのだ。

デビュタントで王都に来てるが、経費節約は必須。



後は依頼人待ちだと家に帰った。



◇◆◇



次の日には請負人と会うことになった。

ギルマス仕事早!


守秘義務厳守で夜中にこっそりと掘り出すとのこと。マスターからの紹介だから安心出来ると言われた。


ま、後ろの人がサムズアップしてるし。大丈夫だろうと納得はした。どうやら後ろのアチラの方は師匠さんのようで、苦労してここまで育てたとか色々過去話しを聞かされた。

うん。凄いうるさい。

聞いてくれる人がいないから、話せる相手がいて嬉しいのはわかりますがうるさいです。



◇◆◇



仕事を終えたとシーフさんから連絡が来た。


待ち合わせの場所でシーフさんとアチラの住人のお師匠さんと、でかい人が仁王立ちしている。


「やあ」

〈仕事は完璧だぜ!〉

〈うむ。ご苦労!〉


「お疲れ様です」

「首尾よく終わりましたよ」

〈流石我が弟子!〉

〈でかした!褒めて遣わす!〉


『うるさい!』


サラウンドで止めてください。


『王様、うるさいです』

〈ルシェや。王様にそれは……〉


『うるさいんです!』


話しにならないので静かにしてもらいました。


シーフさんと王様が並んでいるのを気付かれない様に眺めて椅子に座った。


「コレが出た物」


渡されたのは小さな木箱。


「開けてないから中は知らないよ」


うんうんと頷く師匠さん。


「面倒な仕事をありがとうございました」



お礼を言って解散となった。無事取引が済み安堵した。シーフさんは報告にギルドへ行きました。報酬はギルドから貰ってください。そう言う契約なので。





テーブルに乗っている木箱。

それを眺めて途方に暮れた。


『さて、コレどうしよう』

〈ルシェや。かなり不穏な物じゃのう〉

〈儂がコレのせいでこんななのか?〉


銅像から動けなかった王様は、今私がいるテーブルの目の前で仁王立ちしている。

王様は木箱に憑いているようで、木箱が移動したこのテーブルに王様はいるのだ。

さっきはアチラの方々がシーフの師匠さん、王様、じじさま。3人もいてうるさかったもんだ。


木箱からモヤモヤとした黒い靄が掛かっていて見るからに怪しい。


『コレのせいみたいですね』

〈どうしたら儂は戻れるのだ?〉

『わかりませんよ。専門家じゃないですし』

〈頼れるのは娘のみなのだ!どうにかならんのか!?〉

『そう言われましても。……うん。かなりヤバそう。どうしよう』

〈神殿に相談してみてはどうじゃ?〉

『じじさま流石!そうしてみる!』


他力本願の王様の圧力に圧迫面談されていた私に救いの手を伸ばしてくれたじじさま。

流石私の祖父様だと感謝した。

感謝されない王様が拗ねてますが知らないよー。



ご一読ありがとうございます。

また次回よろしくお願いします。

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