表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/40

17

お読みくださりありがとうございます。

よろしくお願いします。

ファルシュさんからの質問に思考が止まった。

でも次の瞬間ハッと気がつき逡巡した。


秘密を抱えたまま帰る?

いや、帰れるか?

きっと無理だ。



『君は王家の秘密の一端を知ってしまった。しかも王と王子の、どちらもだ。そんな君を自由にする訳にはいかないのは君も分かるだろ?』

『本来なら後腐れなく“片付ける“のが一番なんだが。今回は特殊だろ?

“君の安全“と、”ご両親の安全”。どちらも大切だからね?』


ーー前にファルシュさんが言っていた。



その言葉が脳裏に掠め指先から血の気が引いて行くのが分かる。身を固くして俯いていも、ジッとファルシュさんが見つめているのが肌で感じる。



目を瞑り心に思う言葉。


『……ねぇ、じじさま。王様助けてから、私、厄介ごとだらけなんだけど。やっぱり助けなきゃよかったよ』

〈う、うむ。そうじゃのう〉


じじさまに恨みがましく言を向けた。

口籠もり目を逸らしたままこちらを見ないじじさま。


『ねぇ。私、神殿出てから、買い物して王様に絡まれて、王宮に拉致られて、王子の秘密知っちゃって、神殿見つけちゃって、王家の秘密まで知っちゃって。どうしたらいいのか分からないんだけど』


全て棒読み。

朗々と、感情無く、ただ読み上げたようなセリフ。

じっとりとじじさまを見つめているとスウッと薄くなっていく


「ちょっと!じじさま!逃げないでよ!!誰のせいなのよ!だからあの時、王様となんて関わりたくなかったのにぃーー!!」


思わず念話を忘れて威勢よく怒鳴ってしまった。


消えたじじさまが居ない今、壁に向かって喋る痛い子を実演して羞恥に耳が熱くなる。


ちょっと恥ずかしいんだけど。じじさまのバカー!



じじさまに視線を向けて宙を見ていた私は、ゆっくりと首を動かしながらファルシュさんへと視線を向けた。



「ふっ。はははははっ!」


笑い始めたファルシュさんに動揺して右往左往した。

どうしたの?!

突然笑うって??


「相変わらず豪胆と言うか図太いと言うか、へこたれないと言うか。王の恩人で陞爵した者を消すわけないだろ?」


その言葉に安心したらへにゃりと腰から力が抜けてソファーに座り込んだ。羞恥と安堵がないまぜになって両手で顔を覆った。


「あ、いや、脅かすつもりは無かったのだが。一応、確認と言うか、様子を見るに必要だったと言うか。揶揄ったのもあるが……その、な………」


焦った声が聞こえてくる。

ファルシュさんはどうやら私が泣いているのかと思ったようだ。



もー!!

そのまま罪悪感でオロオロしちゃえ!

知らなーい!





◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇





「あー。いましたよー」


ちいさな声で言うと黒い影が揺れ、風が舞った。



私、ソルシエレ・レベナン子爵令嬢としては、少々はしたないが、馬車の窓から身を乗り出し外を眺めた。



のんびり馬車の中から外を見れば草原が広がり、牧歌的な景色が広がる。


見渡す限り、広大な草原。

背丈より高く生えた草は風に靡く緑の海原。


それをぼんやりと見つめる先は草原の宙だ。



その時、一箇所に目掛けて人影が動いた。

草の流れが割れ、その先に人が現れた。


「うわぁ!!」


人の呻き声と暴れる音。

それが静かになると、人が出て来た。


「ファルシュさんお疲れ様でした。犯人確保できて良かったです」

「君のおかげだよ。いつも視てくれて感謝しているよ」


馬車のから身を乗り出した私に近づきファルシュさんは話しかけてきた。

黒いマントを頭から被り表情を伺うことはできない。それでも声からして機嫌が良いのがよく分かる。


「王の恩人を酷使するのはどうかと思いますよ」


ファルシュさんに苦言を呈したのはマアディン卿だ。


私とファルシュさんと私の間に割って入ってきたマアディン卿。

警護対象者である私を庇うと話しかけて来たファルシュさんを諌めた。

私は庇ってもらったその背中越しに覗き顔をだした。


「仕方ないですよ今回は。取り逃すよりはマシですし。マアディン卿もあまり目くじら立てないで下さい」

「レベナン嬢は甘いです。ファルシュ殿に良いように利用されてます」

「酷いなぁ。私はちゃんと給金分の仕事しか依頼してないないですよ」


王暗殺未遂の残党借りに駆り出された私。


これでも王を助け、家は昇爵し褒美ももらったのだが。

特異体質が災いして、貧乏暇無し。

ファルシュさんに給金分の仕事を催促される毎日。



「こんな平原に逃げ込んだら普通は追えませんからね。充分給金分は仕事しましたよね?」


砂漠で針を探す如く、この広大な草原の中での逃走者探し。

人の姿を隠すほどの草の上にアチラの方が視えている。

姿隠してアチラは隠れず。

私には丸視えの位置を指示して捕獲となった。


大役は果たしたとばかりに胸を張った。

にっこりとお愛想笑いを向ければ、プッと吹き出すファルシュさん。「レベナン嬢には敵わない」とぼやく。


「酷使されたら夢の中にでもアチラの方々から抗議が来ますから、たまったもんじゃないですよ」


ファルシュさんが肩を落とし溜め息を溢す。


「非道な勤務時間を指示しなければ良いんですよ?」


ニカっと笑う私に、顰めた顔を向ける面々。

えー?私が酷いこと言ってる??




使える者は使わないとね!





◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



今のところ、普通に生活してる。


視えて大変なことも多いけど。


あ、父様に手紙きなきゃ。

勝手に私の進路を王様に言わない!

勝手に進路の予想して決めない!


まだまだ親子の距離感が掴めてないけど。



それに父様にまずは聞くことがあるわ!





私の給金はどこですか!?











これで二章一段落です。

あと別視点で、父様とマアディン卿の視点が入ります。

三章からは恋愛色を出していきます。マアディン卿がグイグイいくので頑張ってハッピーエンドに向かって行きますので、これからもお付き合い頂けたら幸です。


ご読了ありがとうございました。

次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ