第十一話 屋上の彼女が美しすぎる件
しかしその後、俺たちを引き裂くかのような丁度良いタイミングでチャイムがなり各々席に着くこととなってしまった。
それから、再び柊が俺たちの元へ訳の分からない作戦の提案をしてくるのかと思っていたのだが、全く持ってそんなことは無く、
「悠、新作ラノベみた?」
「おう、当たり前だろっ!」
「やっぱり?? てか俺、今回の新作結構アタリだと思うな」
「俺もそう思う。アイディアが斬新で目新しいもんな」
俺は至って平凡な悠との満喫した高校の一時を送ることなった。
だがしかし、たった一つの引っかかる点がある。それは俺たちが談笑しているその間、柊と咲良がなにやら俺の方をチラチラ見ながらコソコソ話しているということだ。
前提として、そもそも咲良と柊はそれほど仲がいいわけでもなく俺が知っている限りはこれまでは挨拶程度交わす仲だったような気がする。
それなら何故二人で話し合いなんてしているのだろう。
あの二人が急に仲良くなったとも考えづらいし俺の方を見ながら話し合いというのも引っかかる。なんせ朝の出来事があったばっかりに俺はいつも以上に警戒心が強くなっているのだ。
柊と咲良がもう既に朝の作戦の決行へと向かっている可能性もあるのだがその可能性については考えないことにした。取り敢えず、今は今を楽しもう。
と心の中でひっそりと呟き、俺は悠との談笑を再び始めたのだった。
♢ ♢ ♢
そして迎えた昼休み。結局アレから何も起きずに呆気なく午前が過ぎた。
突然だが俺は今、家に親はおらず訳あって一人暮らしをしている。
故に誰も俺の弁当など作ってくれない、かと言って自分で作るのも甚だ面倒くさいので俺は基本的にいつも購買かコンビニで昼飯は済ませている。無論、今日もだ。
そして俺は今、激しい争奪戦の中勝ち取ったパンを片手に悠と二人で昼飯の準備をしている。はずだった。
「お前のパンうまそうだな」
「そうだろ? 結構人気だからな」
「よっ! 篠崎と佐々木! もー探したんだからね!」
「あ、あ、あれ?? ふ、ふたりともお昼う、?」
……加藤咲良、鈴木柊、どうやら再び俺たちの平穏を乱す者が現れてしまったようだ。
するとその二人へ一目散に反応したのは悠だった。
「お、二人とも! 俺たちにもなんか用か?」
悠から話しかけるなんて珍しいな、いつもなら話しかけるないくせに……。いや俺たちが話しかけられないのか。
すると、柊があからさまに悠へ反応した。
「ッ! さっすが佐々木! 察しがいいっ!!」
「だろ?? んでなんの用だ?」
得意げに悠は続けた。
「あのー、みんなでお昼ご飯食べたいなーっ! ってさ!」
柊はそう答えるとあからさまに手をパチンパチンと鳴らせた。あたかもさっき思いつきたかのような口振りで話しているが、柊の目は泳ぎに泳ぎまくっていた。
「流石柊! そりゃいい案だ!」
「でしょでしょ」
そう言うと悠も手をパチンとならし俺たち四人を強引に屋上へ連れていった。
♢ ♢ ♢
あれから意味のわからないまま屋上へ連れていたれた俺だったが四人仲良く弁当を食べていたところ、悠と柊の二人が早々に弁当を平らげどこかへ行ってしまった。
トイレいってくるー! とかお花摘みに行ってくるー!♡ なんて言っていたが本当かどうかは分からない。しかしただ一つだけ言えること。
「二人できりになっちゃったな」
「う、うん。二人きり……」
わけもわからず屋上で二人きりになった俺たちは今とてつもなく気まずいのだ。そもそも屋上の鍵なんて空いているものなのか、? それにこの状況を咲良は不審に思わないのだろうか。……考えてたくはないがもう既に柊の俺と咲良をくつつけよう大作戦はスタートしてるとか……? そんなことを考えていたところ次に咲良が口を開いた。
「──絃君」
「うん?」
「今日一緒に帰らない、?」
そう言った咲良の髪の毛が風に揺られサラサラと、さらには太陽と相まってとても綺麗だった。
「ああ、別に構わない。……何か俺に用事でもあるのか?」
「うん、ま、そんなとこかな」
咲良は照れ臭そうに答える。その目はどこかうるうるしていてどことなく可愛らしい。流石学園随一の美少女と謳われる女の子だ。
「それなら別に今言ってくれたって……」
「だめ! 放課後じゃなきゃダメなの!」
咲良は俺を真っ直ぐに見つめた。その眼差しは俺の心に突き刺さるように、真っ直ぐに。
「そ、そうか。分かった、じゃあ、今日の放課後待ってるな」
俺がそう言うと
「……ありがと」
咲良は一言こう言った。
その後俺たちは昼飯を平らげ屋上を去った。
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