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薬売りと魔王  作者: 望月 かれん
第1章
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一新

 騎士達の調査から逃れて2週間が過ぎようとしていた。

しかしエリスは日頃の疲れからか、一週間を療養で過ごす事になった。

 快復した日から外見を変えるためジョセフィーヌ達に手伝いを頼み、自分も材料を集めながら、村人達の為に薬を調合した。

 髪色を水色から淡い緑に変え、結びも三編みにしていたのをひとつ結びにして垂れた部分をローブに入れ込んだ。

ローブも新調してもらい、色も灰から紺に変えている。


 あくる日、村の入り口にエリスと村長、ジョセフィーヌが立っていた。


 「重ね重ねご迷惑をおかけしました。染色の為に花や作物をいただいて、新しいローブまで縫ってもらって……」

 

 「気にする事じゃないさ!熱出しながらでも薬を調合してくれてたじゃないか。これぐらいしないとねぇ!」


 「しかし本当に行ってしまうのかい?ワシらはずっと居てもらっても構わんのじゃが……」


 村長の言葉にエリスは少し悲しそうに目を伏せた。


 「お気持ちはありがたいのですが、いつ騎士達が来るともわかりません。その度に庇ってもらうのは申し訳ないので……」


 「この前の件でお嬢さんが指名手配されていて、ある程度の金額がかけられている事がわかってしまった。

 冒険者はともかくワシらのような一般民までお主を探しておるじゃろうな」


 「目の色までは変えられないけど、髪と服の色を変えたから大丈夫なんじゃないのかい?あ、でも声が……」


 「頑張って声色を変えます」


 ハッキリと言ったエリスに村長とジョセフィーヌは固まる。


 「ゴ、ゴホン、とにかく前以上に警戒しておいた方が良かろう。お嬢さんもわかっておるじゃろうが、簡単に人を信用してはならん」


 「はい」


 「でもあたし達はアンタの味方だからね!………ああ、そうだ忘れるところだった。これを持って行きな」


 ジョセフィーヌは懐から何かを取り出すとエリスに手渡した。

 

 「手紙……ですか?」


 「ああ。ここから南に行ったらところにある山の麓にヒソリ村って場所があるんだ。そこに友達が居てね。これを見せれば少なくともアンタを置いてくれるとは思う。

 いつでもこの村に戻ってきてくれて良いけど、来づらかったらそっちを頼りな」


 「ありがとう……ございますっ!」


 エリスは手紙を大事に懐にしまった。そして何かを決意したように2人を見ると口を開く。


 「申し遅れました、私はエリス。エリス・テオドールです」


 「……エリス……」


 「良い名前じゃのぉ。口外する気など無いが、ワシらに名乗っても――」


 「大丈夫です。偽名なので」


 そう言って微笑むエリスに2人は開いた口が塞がらない。

何度か瞬きをしたあと、村長が口を開く。

 

 「ま、まぁ気をつけて行きなさい。あと商売道具も置いて行っていいのかい?」


 「はい。外見を変えても、もしかしたら持っている物でバレてしまうかもしれないので。

 皆さんの邪魔になるとは思いますが……」


 「使ってた家には誰も入らせないようにしておくから安心しな!あ、たまに掃除には入らせてもらうからね」


 「ありがとうございます。本当にお世話になりました」


 エリスは何度もお礼を言って頭を下げるとイカナ村を後にした。






 「2人目じゃな、誰かを匿ったのは」

 

 エリスの姿を見送りながら村長がポツリと呟く。


 「その事に関してはあたしゃ頭が上がらないよ。

本当にありがとう」

 

 「何を今更。気にせんでもいいわい。

ジョセフィーヌ・フォーリス」


 「…………………………」


 ジョセフィーヌは無言でバンダナを取った。カールした淡い紫色の髪が風になびく。


 「懐かしいねぇ。数十年前、剣術に長けたフォーリス家だからってあの娘と同じように追われてたっけ。それを村長のお父さんが匿ってくれたんだよねぇ。

 あの娘を見てると自分と重ねちまってさ。放っちゃいけないって思ったんだ」


 「ああ。しかし前に使った戦法が通じるとは……。

 変わってなくて安心したわい」


 「それにはあたしもビックリしたよ。

 木箱や樽の1番上の物をわざと匂いの強い物にする。

まずは木箱の中に隠れてないか確認するだろうからねぇ。

 準備は大変だったけど、あとは思った通りさ」


 笑いながら言うジョセフィーヌを見て村長はゆっくり頷くと口を開く。


 「てっきり途中で木箱をひっくり返すのではないかとヒヤヒヤしとったんじゃがな。

 さすがは騎士様といったところかの。律儀じゃ」


 「はははっ!騎士道とやらには感謝しないとねぇ!

 さてと、また中身を戻しに行こうか」


 「すまんの、力仕事させてしまって。

 お前さんもそうじゃがあのお嬢さんも守らねばならんな。……とは言ったが簡単に信用してはならんと言ってしもうた。ワシら信用されとるじゃろうか?」


 「大丈夫だと思うよ。……たぶん」


 2人は顔を見合わせるとそれぞれの仕事に戻っていった。 

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