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薬売りと魔王  作者: 月森 かれん
第3章
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ボサボサ男とベリアル

 地下。人間界では魔界と呼ばれているその場所の一角で

ボサボサ男とベリアルが睨み合っていた。


 「どこへ移動するかと思えばホームテリトリーッスか。

しかも66番地を選ぶとはねぇ」


 「別に地上でもイイんだけどさ、目も当てられない光景になっちゃ人間達も嫌だろうなーって思ったのよ。

 66番地を選んだのは言わなくてもわかるッショ?」


 魔界は番地で区切られているようだ。

どのような基準かはわからないが彼らが居る66番地は何も無い。黒い闇が広がっているだけだ。

 つまり、暴れるのに適している場所と言える。


 「よくオレとサシでやろうと思ったッスね?」


 「オーサマに拒否られたし、アンタもやる気マンマンだし

せっかくならって考えたのよ。

 こうやって戦うなんて随分久しぶりだからさ。

アタシも力ついてんだからね!」


 ベリアルを囲うように蛇腹剣が現れる。それを見てボサボサ男は顔をしかめた。


 「厄介なモン出しやがって……」


 「そーいえばアンタどうやって戦うのよ?薬品でもブッかけるワケ?だとしたらウケるんですけど」


 「オレの戦い方とかどーでもいいでしょー、よッ‼」


 ボサボサ男は伸びてきた剣先を素早く避ける。しかしそれは空中でUターンして再びボサボサ男に襲いかかった。

驚きながらも難なく避ける。

 

 「あー、めんどくせぇッ!」


 「アハハハッ、避けるばっかじゃん!

まさか戦えないとか言わないよねぇ?」


 「…………」


 「え、図星⁉」


 何も答えないままボサボサ男が避けると剣先が地面に突き刺さった。

 そのまま動かないかと思われたが、地面を割って再びボサボサ男に襲いかかる。


 「どーなってんスか⁉」


 「アタシの魔力で強化してんからそう簡単には壊れないよ。アハハハ、まだまだッ!」


 蛇腹剣がもう1本現れる。ベリアルはそれを手に取ると器用に操ってボサボサ男に向けた。


 「止まってる暇がねぇ……。死ぬのは今日だったか……?」




 ボサボサ男は反撃出来ずに避けていたが

やがて刃が全身を囲むように数ミリ離れた所で止まる。


 「チィッ……」

 

 「フフ、ナメてかかってたでしょ?これでアタシが柄を引けば刃がアンタの首を切断する。

 さ、どうする?アタシ側に寝返る?それとも潔く死ぬ?

あ、無様に命乞いしてもいいよ。命ぐらいなら――⁉」


 ボサボサ男の顔を見てベリアルが固まる。彼はゾッとするような笑みを浮かべていたからだ。


 「な、なんで笑ってんの?アンタ、死ぬんだよ?」


 「……勝手に決めつけんじゃねーよ。ナメてかかってんのはお互いサマだ。クククッ!」


 その直後、ボサボサ男からドス黒い気が溢れ出す。

それは蛇腹剣に巻き付いたかと思うと刃を内側から外側に無理やり捻じ曲げ始めた。

 思いもいなかった反撃にベリアルの顔が引きつっていく。


 「ちょ、ちょっと待って……何……ソレ?」


 「俺は実験オタクッスよ?自分の体に()()()()()()()()()()?」


 「カ、カラダ弄ってんの?嘘でしょ⁉」


 「そりゃあ、モノが出来たら最初は自分で試すからなぁ!

ケヒェヒェヒェ!返すぜぇ、ベリアル!」


 ボサボサ男の目が生気のない感じから三白眼に変わる。

 そして気を操って蛇腹剣をベリアルに向けて飛ばした。勢いがついており、ベリアルは慌てて柄から手を離すと剣先を避ける。


 「あっぶな!ってオタクスイッチ入っちゃってるじゃん!」 


 「ケケケッ!悪く思うなよ!

文句ならアレキサンドルのお坊ちゃんに言いなぁ!」


 「ちょッ、これでもくらいなッ‼」


 ベリアルは焦りながらも赤黒い触手をボサボサ男に向けて放つ。

 しかしドス黒い気が触手に巻き付き、勢いを封じる。


 「ホ、ホントどーなってんのよ⁉ソレ⁉」


 「オイオイ、そんな焦った表情オレに見せるなよ?

もっと歪めたくなるじゃねぇか、ケケケケッ!」


 ボサボサ男はそう叫ぶと瞬く間にベリアルの正面に移動する。

そしてドス黒い気を纏わせた拳を振り上げた。


 「ちょっまっ、ギ、ギブ――」


 「断る!」


 全く耳を貸さずにベリアルを殴りつけた。

 地面に伏せたベリアルをボサボサ男が見下ろす。


 「うぅ……女のコ、殴る……なんて……」


 「意識はあるか。恐ろしい耐久性ッスね」


 「ア、アンタ、自分に……何したのよ……」


 「今回はドーピングッス。いろんなヤツの血液を混ぜてな。思いもよらない収獲があったんでねぇ」


 「っていうか、スイッチの、切り替え……早過ぎ」


 ボサボサ男が薄い笑みを浮かべる。ベリアルの言うとおり

彼の目は普段の生気のない感じに戻っていた。


 「目的を果たしたんで。……じゃ、戻るか」

 

 そう言ってボサボサ男は屈むとベリアルに黒い膜のような物をかけた。


 「何コレッ⁉ブヨブヨしてキモチワルッ⁉」


 「オレ特製の拘束膜ッス。抵抗されても困るんで。

ガマンしといてほしい」


 そう言いながらボサボサ男はベリアルを肩に担ぎ上げる。


 「ギャーーーーーー⁉せめて背負ってよ⁉」


 「嫌ッス。あと耳の近くで爆音出すのカンベン」


 「下ろして!今すぐっ!」


 「ウルサイ、それ以上騒ぐんなら頭から地面に

叩きつけるッスよ」


 「ゴメンナサイ……」


 大人しくなったベリアルを見てボサボサ男は不敵に嗤うと地上へ向けて飛び上がった。

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