本音
一方ベルゼブブは……
ベルゼブブは右手に明かりを灯して暗闇の中を歩いていた。
どうやら彼は地上から遠く離れた地下にいるようだ。
ドスドスと大きな音を立てて進む彼に背後から声がかかる。
「あれ、タイチョー?何してるんスか?
エリスに戻されたんスか?」
「部下1号……。お前こそ何してる。素材探しに走り廻ってるのかと思ったぜ」
「休憩ッス。……って、ここでぐらいフード取ったらいいじゃないッスか」
「めんどくせぇ。それにフード被ってるのが当たり前になっちまったからな」
「あー、なるほど。で、エリスに戻されたんスか?」
ボサボサ男に同じ事を尋ねられてベルゼブブは眉をひそめる。
「自分で戻ってきたんだ。オレ様が見限った」
「は……?」
「見限ったんだよ!敵に捕まった方がいいとか抜かしやがるからな!」
「へー。……じゃあ「契約破棄」したんスね?」
「してねぇ」
ボサボサ男は訳が分からないといった様子で首を捻っている。
「タイチョーから見限っといて「契約」は続行?」
「そーだよ。悪りぃか?」
「いや、それだと見捨てるの方が正しいと思うんスけど。……捕まった方がいい、ねぇ……」
「あんだけ逃げ回っといてそれだぜ⁉捕まっときゃイカナ村に細工せずに済んだし、余計な魔力も使わずに済んだのによ。しまいには親との『約束』だとよ!」
ベルゼブブの言葉を聞きながらボサボサ男が軽く笑みを漏らす。
「……タイチョー、エリスから影響受けてます?
いつの間に情が移りやすくなったんで?」
「アイツと同じような事を言うな!……オレ様を喚んだ人間の中で最も期間が長いのは確かだが」
「……エリスが捕まった方がいいって言った理由、逃げるのに疲れたんじゃないスか?ずっとコソコソ生活してるんでしょ?」
「………まぁのびのびとはできてねぇだろうな………」
ボサボサ男はそっぽを向くベルゼブブを見ながら面白そうに嗤った。
「でも、これでエリス終わったッスね」
「……何?」
「だってアレキサンドルに捕まる事になるんスよ?
操られて魔力酷使で死亡――」
「バカ言うんじゃねぇ!」
いきなり声を荒らげたベルゼブブにボサボサ男は固まる。
しかしすぐに口角を上げた。
「ククク、タイチョーも素直じゃないッスねー。
なんだかんだ言ってメチャクチャ心配してるじゃないッスか」
「見捨ててただけだからな!また拾う!
それにアレキサンドルのヤロウ共に使われてたまるか!
報酬が減る!」
「ハハハッ、……じゃあ戻るんスね?」
「ああ……少し手伝ってくれるか?部下1号」
ベルゼブブの言葉を聞くとボサボサ男はダルそうに息を吐いた。
「嫌ッス。また走り廻るんで」
「頼む!―――――!」
ボサボサ男は目を見開くとベルゼブブを軽く睨みつける。
「あんまり名前呼んでほしくないんスけど。
……だが、タイチョーがそこまで言うんなら手伝わせて
いただくッス」
「すまん……」
「いいッスよ。終わったら血液20本分もらうんで」
「お、おう……」
ベルゼブブは冷や汗を拭うと飛び上がろうとしてふと動きを止める。
「そういや1つ聞いていいか?」
「なんスか」
「エベロスにアイツの事バラした?」
「……………よくオレだってわかったッスね」
ニヤリと口角を上げるボサボサ男にベルゼブブが掴み掛かった。
「お前ぐらいしか居ないんだよ!何のつもりだ⁉
裏切る気か⁉」
「オレはそんな事しないッスよ。オレの事はタイチョーがよくわかってるでしょ?
アレキサンドルだけエリスの姿が変わってる事を知ってるのは不公平なんでね。
エベロスにも教えただけッスよ」
「……そうかよ」
ベルゼブブはまだ何か言いたそうだったが諦めたように
ボサボサ男を離すと無言で飛び上がった。
「……タイチョーもお人好しッスね」
ボサボサ男はどこか満足げに呟くとベルゼブブの後を追った。




