序章
病室のベッドの上で力なく横たわる老婆
傍らには若い女がしゃがみ込みすすり泣いている
「おばあちゃん、私ね、結婚するのよ」
老婆は力なく微笑みを返した
「だからね、、、、もう何も心配しなくていいんだよ。
私本当に幸せだよ」
その隣に立つ老爺は何かに耐えるように険しいかおで老婆のてを握る
「先に行っとれ、後から追いつく」
老婆はまたしても力なく微笑みを返した
病室の中は今まさに消えゆく命の灯火を惜しんでいた
病室の端、真っ黒のスーツを身に纏い、じっと立ち尽くしている男がいた
その男はチラと腕時計を確認する
そして老婆に近寄る
「おばあちゃん!」
傍らですすり泣いていた若い女が老婆に呼びかける
その顔は力なく微笑んではいたが、もはや正気は無かった
「ばあさん、、、、」
険しい顔をしていた老爺の目から涙がこぼれた
「定刻です、では参りましょうか」
無表情の男が老婆の身体から出てきた何かに話しかけ、手を差し伸べる
駆けつけた医師と入れ違いで病室を出る男
澱みなく歩く様は機械的で
無表情のその顔からは小さな感情すら伺えない
彼はただ仕事をこなすだけ
淡々と
無感動に
無感情に
この世に平等など1つしか存在しない
全ての人間に平等に降り注ぎ
それから逃れる術は存在しない
人々それを恐れ最後まで逃げ惑う
そしてその時が来ると
古き友人のように迎え入れてきた
人々は彼等のこと畏怖と敬意を込めて自らが崇拝するその名を借り、こう呼んだ
【死神】と