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妹に詫びを入れよう

三日後、常人では考えられない速度で距離を縮めた私たちはようやく部屋から出ることにした。




食事は魔法で動くロボットメイドが運んでくれるから、生活に支障はないけれど、そろそろ今後のことを具体的に話し合わなくてはいけない。




そう、だって私は王女だから!!




もろもろを報告しなきゃいけないし、鉱山の後始末もある。


ちなみに、部屋に篭っている間にイスキリが何度か現れて、どうしても必要な報告書なんかは仕上げた。私ったら働き者。




「ねぇ、ディーク」




「ん?」




まだ眠いのか、ベッドの上でとろりとした目をしているディークは、とんでもなく色っぽい。私はごふっと紅茶を吹きだしそうになり、慌てて口元を手で押さえた。




「お父様に報告しないと」




しかし彼の反応はあっさりしていた。




「もう報告を飛ばしたよ?魔力便で」




魔力便とは、念を込めるだけでメッセージボイスの光が送れる便利な魔法。手のひらから淡い緑色の球体が湧き上がり、それを連絡を取りたい相手に魔法で飛ばすのだ。


私は使えないから、まさかディークがこの三日間でそれを使っていたとは知らなかった。




「陛下には、ユウナ王女が運命の人だったので貰い受けますって送っておいた」




「えええ。それでお父様は何て?」




「正気かって返信が来たから、もちろんって返した」




どういう意味で正気かって聞いたんだろう。お父様。


あ、もちろんわかっている。「うちの娘けっこうヤバイけれど、本当にいいのか」ってことよね。




ディークは寝そべったまま、ふっと笑みをこぼす。




「婚約の準備は進めておくから、気が向いたら挨拶に来いと」




お父様ぁぁぁ!私の結婚に対する処置が適当ですけれど!?


反対されるよりは数万倍いいが、こんなに簡単に王女をあげちゃっていいの?気分が複雑よ。




そして私はここで、大事なことを思い出した。




「あ……」




「どうした?ユウナ」




顔から血の気がサァーっと引いていく。




そうだ、ディークは本来、妹のお相手だったんだ。攻略対象だった。




「サリアに謝らなきゃ」




あなたの恋人になるはずだった人を奪いました。そんなことを言って、果たして通じるだろうか。




「妹と喧嘩でもしたのか?」




心配そうな目が向けられる。




「ねぇ、あなたサリアに会ったことはある?私の妹のサリア」




「あぁ、研究員だから面識はあるが」




サリアは、魔物の研究をしているから魔導士団に所属している。


攻撃魔法はほとんど使えないが、探知や索敵、分析のスキルに秀でていて何気にチートだ。




あぁ、優秀なのはヒロインだったからなのか。


気づくのが遅かった……!




ディークはむくっと起き上がり、ベッドの上に座ってあくびをする。




「俺が言うのもなんだが、サリア王女も相当おかしい」




それは否定しない。


ディークがヤンデレ代表なら、サリアはサイコパス代表というか趣味がやばい。魔物の素材を解剖して生態を研究するのが好きなんだけれど、合成獣とか作っちゃう子なのよね。




血をいっぱい浴びたまま「こんなものができました~」とか言って、動物のゾンビを笑って見せてくるような子だもの。私にとってはかわいい妹だけれど、友達はゼロだ。




あれ?


この二人のカップリングって世の中的にはだいぶ危険じゃない?




考え込んでいると、ディークが私の肩に手を回し、そっと頬に口づける。




「よく知らないが、妹に詫びが必要なら俺の研究室にある素材をいくつか譲ってもいい。ユウナの好きに持って行って」




「本当!?ありがとうっ!」




妹とくっつけば、ディークの持っている素材はすべて妹のものだったのでは、と思ったけれどそれは気づいたら負け。




「レッドドラゴンの生き血とかある?」




「あぁ、魔法で凍らせてある。後で用意させよう」




こうして私は、世にも物騒なお詫びの品を持って妹の研究室へ行った。




嬉々として受け取った妹は、やはりヒロインとしての自覚はないらしく、姉からのただの贈り物だと思ったらしい。真実は私の胸のうちに秘められ、どうにか私たちは円満に交際をスタートさせることができたのだった。












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