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世の中は混沌としているようです。私のせいで……

ユウナリュウムとしての人生は、素晴らしい滑り出しだった。




白く透き通るような肌に大きな亜麻色の瞳、絹糸のように輝く黄金色の髪。スッと通った鼻筋は、この国では絶世の美女の条件。さくらんぼ色の唇は、柔らかな弧を描くと男たちを魅了する。




まさに、結婚したいナンバーワン美女である理想的な王女様!


見事なまでのナイスバディも、いやぁ、本当に親の遺伝子様様だわ。




幼少期からたくさんの男の子たちに傅かれ、たまにやってくるロリコンは返り討ちにして、ゆくゆくはこの国を率いる女王陛下に……そんな順風満帆な人生。




きっとよき伴侶に巡り合えるに違いない。周囲の大人たちはそう言ってくれた。





でも




残念ながら、人生はそう甘くない。




十八歳になった私には、未だ婚約者がいなかった。




理由はひとつ。




強すぎるから!!!!!!





魔女のときは魔法しか使えなかったから、「剣とかやってみたいな~」って思ってちょっとがんばりすぎちゃったんだよね!




その結果、十歳で正騎士レベルの剣術を身に着け、十五歳で騎士団副官になり、並みの男は私に勝てなくなってしまった。




気づけ、気づけ私。こうなる前に、もっと初期段階でなんで気づかなかったの!?


もともと凝り性なのがよくなかった。




魔女のときも必要以上に魔法道具や魔術を極め、周囲に警戒されてしまった。それを五度目の転生でまだ反省していなかった!




しかも問題はまだある。




私が魔女だった頃に仕掛けた罠が、この世界にはあまた張り巡らされていて、派兵するたびにたくさんのケガ人を出していたの。




各国がこぞって欲しがりそうな鉱山や金山、アイテムいっぱいのダンジョンには、「王子やその子孫が絶対に手に入れられないように」って呪いや結界や魔法陣やらを作りまくったのよね……!




500年のときを経て、まだそれらのほとんどが踏破されていないなんて、皆どれだけ才能ないの?!一人の魔女にどれだけ世界を乱されてるのよ!!




しっかりしなさいよ、今世の者たち!!




さぞかし魔女ティエナは嫌われ者なんだろう、そう思っていたら、王子の方に恨みつらみが向けられていた。それはまぁ、いい気味だったわ。おっと、もう過去は忘れなければ。





そんなこんなで、将来有望な男性陣が派兵で使い物にならなくなっちゃうもんだから、婚約者を決めるのも一苦労で。私が騎士団の副官を務める部隊は、毎回私のおかげでけが人ゼロなんだけれど……




はぁ、こんなことで運命の人が見つかるのかしら。




一八歳の乙女心は、自らの犯した前世の罪によりぐらっぐらに揺れていた。




「何とかしなきゃいけないわよね~」




後始末をつけなきゃ。


魔法剣士として他の追随を許さない王女になったんだから、過去の憂いをすっきりさせて新しい恋をしましょうか。



*********



「ユウナ、本当にそなたが行くのか?」




謁見の間で、お父様である国王陛下がそう尋ねる。


私は騎士の白い正装を纏い、出陣の挨拶に訪れていた。




「はい、お父様。必ず、鉱山に巣食う魔物を討伐してきますわ」




これから向かうのは、国境近くにあるダイヤモンド鉱山。とにかく宝石がわんさか採れるこの鉱山だが、魔女の仕掛けた罠によって魔物が無限に湧いてくる。




しかも、山に入ったら方向感覚を狂わせる魔術まで仕込んであるから、入ったら最後戻って来られなくなる可能性も。




誰よ、そんな何重にも罠を張ったのは!




って私よ!!


どうもすみませんでしたぁ!!




まさかもう一度同じ世界に転生してくるなんて、思いもしなかった。だからあんな強力な罠を……!




私は騎士団の副官として、部隊を率いて鉱山へ向かう。王女が行くの?って、行くのよ。自ら志願したんだもの。


魔女だった頃のしりぬぐいは、自分でやらなければ。今世で幸せになれるかもかかっているしね!




「本当に行くのか?」




「もちろんです」




「そうか。では、そなたの騎士たちのほかに、優秀な魔導士をつける。彼らと協力し、無事に戻ってくるように」




心配そうなお父様は、私の腕を信頼してはいるが行かせたくはないという本音が透けてみえる。ちなみに双子の弟妹はいるけれど、彼らは戦闘職ではないので自宅待機ならぬお城待機である。




「それでは、行ってまいります!」




安心させるように微笑んだ私は、お父様が選んだという魔導士たちに挨拶をした。




「第一王女のユウナリュウムです。どうぞよろしくお願いいたしますわ」




「…………こちらこそ」




目の前にいる魔導士は五人。この国で実力を保証された、宮廷魔導士たちだ。


このそっけない返事をした男は、人嫌いで魔術狂いという噂のディークバルド。現在二十五歳、稀代の天才魔導士として実力だけは折り紙付き。




七歳で宮廷魔導士になり、これまで数々の功績を残している。




近くで見ると、海の底のような蒼い髪に、黒い瞳。


抜けるように白い肌はちょっと病的だけれど、それでもすさまじく美しい男だった。




冷たそうな印象が、侍女や使用人にはクールでかっこいいと評判。はっきり言って、私のドストライクだわ。そっけないところもまたツボ。




何なの?


誰なの、こんな美青年を危険な場所へ送り込もうとしているのは。私のお父様だわ。




彼を危険に晒したくない。王家に伝わる護りの魔法をこっそりかけてしまった。




「これでよし」




「……」




ニコニコと微笑みを絶やさない私を、理解できないという風に見つめるディークバルド。しかめっ面まで絵になるなぁ。




あ、この仕事が終わったらイケメン保護法案でも作ろうかな!?


立派な慈善事業といえなくもない。




私は会話の続かないディークバルドを見て、用件だけを伝えた。




「陛下の依頼では断れないでしょう。けれど、危険だと思ったら引いてくださいね?」




一応忠告はしておく。




イケメンは保護すると決めているから!




私の言葉に、ディークバルドはふんと鼻で笑った。




「では、危なくなったら姫君を置いて逃げてもいいと?」




「おいっ!」




この発言に慌てたのは周囲の魔導士だ。はい、不敬罪ですよ~。私が最初の魔女のままだったら、怒りに任せて滅していたかも。




でも許します。生意気な子は嫌いじゃないわ。




私はにっこり笑って言った。




「構わないわよ。危なくなったら逃げてちょうだい」




「は?」




彼は驚いて目を瞬かせた。私が怒って拗ねるとでも思っていたのかしら。




「私は守られるほど弱くないもの」




まぁ、実際問題、強すぎてモテないくらいには強い。容姿チートなのにモテないくらい強い。だから、イケメンが助かるなら生け贄にでもなりましょう。




それに、罠を仕掛けた張本人ですから!これはおおっぴらに言えないけれど……。




「イケメンなあなたには、生きてもらいたいの。けがをすることは許しません」




きりっとした顔で言ってみた。通訳すると「そのきれいな顔に、傷はつくらないでね?」である。




「…………」




まっすぐに目を見て訴えれば、ディークバルドは眉間にしわを寄せつつも反抗しなかった。


満足した私は、後で合流しようと言って自分の部隊へ戻る。





さぁ、ちゃっちゃと鉱山を片付けて、過去の清算をするわよ!!


私は意気込んで出動した。






まさか、魔導士部隊に置いてけぼりをくらうとも思わずに。








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