第4話 魔王のペットになりました。
魔王城での生活が、いま 始まる──ッ!
魔界に来てから何かがおかしい……いや、全てがおかしい。どうして俺は……
「よーしよしよし……」
──魔王に撫でられてるんだ……?
「あの……魔王…様…?」
「なんだい猫ちゃん。」
「ちょっと……話聞いてもらっても……?」
「いいよ。」
俺はここがどういう世界なのか魔王に尋ねた。
「なるほど……猫ちゃんは別の世界からきたのかな?たまにいるんだよね、そういうの。」
「はぁ…。」
「ここは魔界で、その魔界を取り仕切ってるのが我ら魔王軍。天界から神の使いやらなんやらが攻めてくるから、魔界の住民は毎日怯えながら暮らしてるよ。」
やはり魔界と天界は争う関係にあるらしい。
「いずれ人間界を制圧し、天界を攻め落とそうと思ってるんだけど、人間界にもけっこう強者がいてね。あいつら無条件で天界の味方するからね、やんなっちゃうよ。」
これもよくある展開だ。魔王から魔王の威厳を感じないのは気になるけど、天界にとっても人間界にとっても、魔界は脅威な存在なのだろう。
「まあ、この魔王城にいる限り、猫ちゃんに危害は及ばないと思うから大丈夫だよ。なんたって、吾輩が認める四天王が4人もいるからね。あっ、4人なのは当たり前か。四天王だし。」
──ダメだこの魔王……。
やはり威厳があるのは見た目だけっぽい。あの死神といい、見た目と中身がまるで一致しない。
とにかく、ここにいたら俺までその神の使いとやらに消されかねない。なんとか抜け出す方法を考えないと……
「ちょっとパパ!本気でそいつ飼う気?」
おそらく魔王の娘であろう少女が詰め寄る。
「アタシぜっっったい反対なんだけど!そんな得体の知れない変態覗き魔と一緒なんて無理無理!敵の刺客だったらどうするの!?」
娘からは随分嫌われた様だ。俺だって好きで女子トイレを覗いたわけじゃない。ていうか魔王城に女子トイレというものが存在するのかこの世界は。
「勘弁してやってくれないか。猫ちゃんは別の世界から偶然ここに飛ばされたみたいなのでな。敵だとしても、丸腰では侵入しないでしょ。」
「それは……」
随分と話がわかる魔王だ。ほんとに魔王か?
「……わかったわ。その、てんせい…?ってのは認めてあげる。でも得体の知れない奴ってのは変わらないからね。」
確かに俺はまだ名乗ってすらいない。まずは娘に俺の情報を共有して信頼を得なければ。
「あの……俺、カエデって言います……。」
「聞いてないッ!!」
なんか怒られた。すみません。勝手に喋ってすみません……。
「まあまあ、仲良くしたまえよ。今日から猫ちゃんもうちのファミリーなのだから。」
なんか勝手にファミリーにされた。どうしよう、素直にここから出たいと言うべきだろうか。この魔王ならわかってくれるかもしれないし……。
「すみません、魔王様……実は俺、ちょっとやることがありまして……」
「……ふむ、申してみよ。」
天国を目指していることは伏せつつ、生前の悪行を清算しなければならない事を魔王に伝えた。
「清算しないとどうなるのだ?」
「……全身の毛が抜けます。」
──その時の魔王の表情を、俺は二度と忘れる事はないだろう。
魔王軍の一味となってしまったカエデは、悪行を清算しきれるのか。
次回はたぶん魔王の娘との絡み増やします。