第3話 転生先は女子トイレでした。
毎話短めの構成にし、サックリ読めたらいいなって思います。けど、今回はサックリさせすぎました。
全体が煙に包まれた俺は、無事に魔界へと転生されたようだ。しかし、身体に妙な違和感が……
「……なんか俺、毛深くなってる?」
どうやら本当に魔族として生まれ変わったらしい。どんな面かはわからないが、全身の毛深さで獣っぽい姿になったんだろうと察する。
いや、見た目なんてどうでもいい。俺はこれからこの魔界で、生前の悪行を清算し、天国へと旅立つのだ。
しかし、これから何処へ向かえばいいのだろう。ここは室内っぽいが……。とりあえず、近くにある扉を開けてみよう。
「…………」
──ん?ここは……トイレ?
「……ちょっ、あんた何やってんの!?」
背後から聞こえる声に慌てて振り向くと、頭から角を生やした可愛い少女が……全速力で走り去っていた。
「ねぇパパー!変な奴が女子トイレ覗いてるんだけどー!」
「女子トイレェ!?」
まずい、なんか知らないけど俺は女子トイレに入ろうとしていたらしい。いや、転生先が女子トイレ前なんて普通思わないだろ!ふざけんなあのおっさん。
とにかく誤解を晴らさないと……!
「ち、違うんですっ!なんか気づいたらここにいて、迷ってて……!」
「魔王城に侵入しといて、知らぬ存ぜぬが通用するわけないでしょ!?このヘンタイ!!」
魔王城……!?
「パパ早く来て!こいつぶっ殺して!!」
「ひえええええええ」
なんか凄く物騒なこと言い出したんだけどこの子!魔界だから?魔界だと覗きは死罪なの!?
転生して早々に危機が訪れた俺は、全力で走り去る少女を追いかけた。これはこれで絵面がヤバいが、なりふり構う余裕は無い。
「ま、待って!とにかく話を……ちょっと!」
「何を騒いでいるのだ。我が娘よ。」
「……あっ」
明らかに魔王。100人にアンケートとったら100人が魔王だと答えるレベルで魔王。そんな恐ろしい物体が俺の前に現れたのだ。
「パパこいつだよ!こいつ女子トイレ覗いてた!」
「ひぇ…その……違くて……」
「…………」
パパと呼ばれるその物体は、無言で俺を凝視したあと、ようやく口を開いた。
「おい、これはただの猫ちゃんだろ。」
「「えっ」」
少女とハモった。まさかの単語が飛び出してきて驚いたが、それは少女も同じらしい。
「待ってパパ!そりゃパパから見たら子猫みたいなもんだけどさ、同じ魔族で、獣人の男で……!」
「でもモフモフじゃん。家で飼おう。」
「「えっ」」
魔王様は、大層な猫好きであったそうな──。
魔王の家族になりました。