第2話 死神かと思ったらただのおじさんだった。
美しい女神?んなもんいねぇよばーか。
……と、主人公を蹴落としたかった。それだけです。
「目覚めなさい、若人よ。」
その声に目覚めた俺の眼前に死神の様な風貌をした何かが飛び込み、反射的に後退して倒れてしまった。
「やっぱり最初はみんなそんな反応するよね。わかる、わかるよ~。おじさんの顔、すっごく恐いでしょ?」
見た目に反し、随分気さくな態度で呆気にとられてしまった。
「おじさんもねぇ、好きでこんな顔になったワケじゃないのよねぇ。遺伝なのよ。ま、ま、座って。お茶は出せないケド。」
「はぁ……。」
人間の形をしていないので、おじさんかどうかもわからないが、本人がおじさんと言うのならそうなのだろう。
「え~……オムカエ…カエデ……くん?」
「……はい。和向楓です。」
「うっそぉ!?”ちゃん”じゃないのぉ!?おじさん名前だけ見て女の子かと思ってたよ~。」
「よく言われます……。」
流れに乗せられてつい返事をしてしまっているが、これは明らかに異常事態だ。
「あの……すみません。俺、死んだんですか?」
「えっ……いやぁ……」
死神は歯切れが悪い様子で答えた。
「……夢!そう、これは夢の中!おじさん、キミの枕元に立っちゃったんだよ。ごめんねぇ。」
「死んだんですよね?」
「…………ハイ。」
なんではっきり言わないんだよッ!!
……と、心の声でツッコミを入れた。
「ごめんね、その……やっぱ辛いかな?」
「いえ、少しびっくりしましたけど、死んだらこうなるんだなって……。」
随分優しい死神の様で、心を許してしまう。
「アニメでよく見る感じじゃないんスね、この空間って。」
「まぁね、おじさんもね、こういう役は女の子にやらせるべきだと思うんだケド、何故か抜擢されちゃってねぇ、困っちゃうよぉ~はっはっはっ。」
話が逸れている様なので、本題に戻す為に切り込む。
「あのー、俺はこれからどうなるんスか?」
「あー…それなんだけどね、キミさ、生前あまり良い行いしてこなかったでしょ?」
「……まぁ。」
俺が俺の親なら俺をぶん殴ってやりたいところだ。死んだ今となっては、親に悪行を詫びる事すらできない。
「だからね、残念だケド……天国には行けないのよ。」
「それってつまり、地獄行きってことですか?」
「そうなっちゃうねぇ……。でも安心して!地獄でこれまでのマイナスポイントを清算し終えたら天国にだって行けるからサ。」
「マイナスポイント?」
「善悪ポイントってやつね。生前の行いによってプラスされたりマイナスされたりするんだよ。」
「ちなみに、俺のポイントは?」
「……マイナス7465ポイント。」
「マイナス7465ォ!?!?」
予想を遥かに上回る値に驚愕した。
「親の金をくすねる行為……あれね、1回につきマイナス10ポイントなのね。」
──1回につきマイナス10ポイント……
それを2年間繰り返したことで、俺のポイントは大きくマイナスされていたらしい。
「ちなみに不登校は1日マイナス1ポイント。理由がかわいそうだから、小学校の分はチャラにしてるよ。」
「ありがとう……ございます?」
素直に喜んで良いものかわからない。
「さて、もう一度言うケド、キミはこれから地獄に落ちることになります。」
「天国か地獄か……現実はそれしか道がないんスね。ラノベとかでよくある異世界転生は、やっぱ空想の話で……」
「えっ、なに、異世界転生したいの?いいよ、それでも。」
「……は?」
──いま、なんて言った?
「ポイントマイナスだから魔界にしか転生できないし、魔族として生まれ変わることになるケド……」
「ちょちょ、ちょっま……異世界行けんの!?」
「うん。そっちでもポイント清算できるし、どっちでも……」
最初から言えよこのエセ死神ッ!
「じ、じゃあ異世界でお願いします!魔族でもなんでもいいんで……!」
「おっけーい!おじさん、さっそく転生させちゃうぞぉ~。」
この死神は見た目以外、本当にただのおっさんの様だ……。
「また会おう、若人よ!ドロン!」
俺の体はたちまち怪しげな煙に包まれ、第二の人生へ旅立つのであった──。
これはこれでアリなのでは…?
次回から魔界生活が始まります。が、次話の内容全く考えてないです。登場人物が勝手に動いてくれると思うので、それに期待しつつ適当に考えときます。