再びの波乱6
遅れてすみません。
今回は琥珀は出てきませんが、「オッド」のナンバー2の尋常ならざる戦いです!
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ホープ国北の大地。
「オッド」を統治するスライムが南を向いて、黒い笑みを浮かべていた。
スケルはそのころ、ホープ国まで残り数キロのところを歩いていた。
草原を越えて森林を歩き、途中途中で休憩もしつつ目的地へ向かっていた。さすがにまだテレポート技術は科学の世界も魔術の世界も生まれているわけがなく、ゆったりと余裕そうに歩いて行くが、少し心配もしていた。
「こんなにゆっくりで間に合うのか? ちょっと長すぎるわ」
そのツッコミは誰にも届くはずもなく、自作自演の迫真の演技。演技ではないが。まあとにかく、どこかのほのぼのアニメで見れそうな光景が一面に広がっていて、スケルの恐怖の姿に比べてとても可愛かったと思える。
その周りでは小さな魔物たちがゆったりと平和を楽しんでいる。平和すぎて、スケル自身も平和に染まってしまいそうになるくらい。なるくらいっていうのを軽く超えていてもうなっていると言ってもいいかもしれない。
ただ。
忘れてはいけない。
ここは無法地帯だということを。
つまり、どの国も統治していない荒れ果てるはずの地であるということを。
次の瞬間、小さなモンスターたちが一斉に散らばっていった。まるで船転覆時にネズミがそれを察知して船から逃げるような、その小柄な肉体を生かしてするすると走っていく。
ドガがガガガガガガガガガがっがががっががガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!
スケルがその光景に気付いた時にはもう遅く、後ろから来た何かに飲み込まれていた。
目に見えるのは黒一色の世界、生臭くて、鼻を使って息をするとショック死するのではないかと思うほどに臭いの嵐が吹き荒れる。
「ここは?」
だが、スケル自身凄く落ち着いていた。大きなボロローブから輝く紅目はとても冷ややかで、ゆったりと一周。周りを見渡す。その軌道に赤い線が残り奇妙な円ができる。
「ああ、そゆこと」
たったそれだけで理解した。黒一色の世界を確実に掌握し、溜息をつく。めんどくさいことに巻き込まれたと、とても軽々しく言い放った。
そう、ここは地表に擬態するS級のモンスター『グラド』の腹のなかだった。
『グラド』に飲み込まれると一生抜け出すことはできなく、徐々に体にめり込んできた地面に飲み込まれ圧迫死するとも言われる、Sランク戦士でも苦戦するという常人には圧倒的さがあるモンスター。
ただしそれは、常人についてだ。
直後スケルが真上に飛び、重力になど負けない勢いで体内に飛び出す。空気を切り裂いて、後からその摩擦音が聞こえてくるすさまじい勢いによって、真上に向かって音速の蹴りを食らわす。
「ぐぎゃアアアアアアアアアアアアアアアアアああアアアアアアアアアアアア!!!!」
体内で振動した震えが悲鳴にすら聞こえる。その音は別に不思議でもない、だが、この轟音の悲鳴は耳に突き刺さるものであった。
その蹴りを入れた途端内側から皮膚が破れてビチビチと音を立てる。
一枚、一枚。その重みを感じながらぶち破っていく。
そして、いつの間にか地上へ抜けていた。
「はあ、たっく。屑が」
やはり、『オッド』のナンバー2は尋常ならざる者であった。




