派遣の勇者!
基本的に主人公ロイ目線です。
連載にしてますが、文章力が無いので短編集のようになってます。
ところどころ三人称になったりするので読みにくいかもしれません。
会話がメインなので季節やら気候やらの設定は曖昧です。
キャラ達のやりとりを楽しんでいただければ幸いです。
小さい頃、勇者に憧れていた。
平和の為に悪と戦う姿に幼いながらも感動を覚え、憧れはいつしか夢へと変わっていった。
いつか自分も勇者になるんだと。
魔法王国ノーゼル
王都ウィザリア
魔法や錬金術で繁栄し人々が様々な思いを胸に行き交う希望に満ち溢れた王国。
その中で最も活気に溢れた美しい街。
行き交う全ての人が夢と希望を抱きながら生活を送る街。
というのが表向きのイメージ。
実際は欲望にまみれた大人達が金や地位のために日々しのぎを削る何ともダークな街だ。
ここではありとあらゆるものが商売の対象になる。
素材、アイテム、そしてモンスター討伐、いわゆるクエストだ。
街に迫るモンスターの退治、ではなくレアな素材の出るエリアのモンスターの退治。
要するに縄張り争いだ。
その争いの駒が勇者。
オレの憧れた勇者はこの街では金稼ぎの道具でしか無かった。
オレがじいちゃんに聞いていた勇者は、人々のためにモンスターと戦い街の平和を守る英雄だったそうだ。
けれど、勇者だって人間だ。
食べなきゃ死ぬし食べるためには金がいる。
いつしか勇者は報酬を求めるようになり、そこに目をつけた商人が勇者を商売道具にするようになった。
オレがこの街を訪れる頃には勇者はただの職業に成り下がっていた。
ジリリリリリリリ
「もう朝か、、、」
目覚まし時計の不快な音で目を覚ますいつもの憂鬱な朝。
「今日は仕事だったな、、、遅刻したら社長に殺されちまう」
眠気を押し殺しながら手早く身支度を済ます。
「飯は、、商店街でテキトーに食べるか、、」
依頼書を手に取り足早に六畳一間風呂無しの根城を後にする。
オレの名はロイ。
勇者になる夢を叶えるために2年前この王都ウィザリアにやってきた。
けれど、その頃には勇者にかつての栄光は無く最早ただの職業に成り果てていた。
にも関わらず就職難易度は最高難度。
なんともあっけなく就職戦争に敗北し路頭に迷っていたオレをこの会社の社長が拾ってくれた。
勇者派遣会社ブレイブロード
街の片隅の小汚ないビルの一室に事務所を構える見るからに儲かっていない会社。
ここがオレの勤め先だ。
正式な勇者、いわゆる「正」勇者は王国から勇者を名乗ることを許されたエリート。
そんな「正」勇者は当然ながら報酬も高い。
そこに目をつけた社長が王国から発行される臨時勇者許可証を使って安く手軽に勇者を派遣する会社を立ち上げた。
それがこの会社であり、安く手軽に派遣される勇者がオレという訳だ。
ロイ「おはようございます。」
事務所の扉を開くと窓際でコーヒーを飲む綺麗な女性が一人。
風になびくセミロングの茶髪とコーヒーカップの組み合わせは何とも絵になる。
「おはようロイ」
彼女がこの会社の社長 ロゼリアさん。
たった一人でこの会社を立ち上げた凄腕のキャリアウーマンだ。
良き相談相手でもあるがプライベートは謎に包まれている。
ロイ「あれ?あいつはまだですか?」
ロゼ「そうなのよねー。
今日の依頼はお得意様のところだから遅刻したら大変なんだけれど、、」
ロゼリアさんが困り果てた顔で窓から外を眺めていると
ダダダダダダダダダダダ
慌ただしく廊下を走る音がする。
そして凄まじい勢いで事務所のドアが開く。
「おっ、、、おは、、よう、、ござい、、ま、、す」
ロゼ「あらあら、おはよう。遅刻ギリギリねアリシア」
アリ「すっ、すいません!」
彼女の名はアリシア。オレと同じブレイブロード所属の派遣勇者でオレの仕事のパートナーでもある。
ロイ「お前なぁ、いつもギリギリセーフなの何とかしろよな。」
アリ「わっ、、分かってるわよ!」
金髪。ボーイッシュなショートヘアーだが顔はまさしく美人だし透き通るような白い肌に引き締まった体。
普通にしてればカワイイ女性なんだが、こいつには見た目以外色々と欠点があるから困ったものだ。
ロゼ「それじゃ二人とも揃ったことだし早速依頼の話ね。
二人とも前に渡した依頼書には目を通してるわね。
今回の依頼は鉱山付近のラージスライムの討伐。
お得意様のところだからくれぐれも失礼の無いようにね」
ロイ「げぇっ、、ラージスライム、、、。
モンスターの討伐しか書いてないから嫌な予感がしたんだよな、、、」
ラージスライム。
基本的には討伐難易度の低いモンスターだが、デカイうえに粘液の塊なので間違いなく粘液まみれにされる。
勇者の間でも避けられる傾向にあるモンスターだ。
しかも討伐報酬がかなり安い。
ロゼ「まぁまぁ。こういう小さな仕事の積み重ねが大事なの。
期待してるから頑張ってね」
ロイ「はぁ、、分かりました。」
朝から憂鬱だった気分が更に滅入る。
アリ「ラージスライムかぁ、、、ウフフ♥️」
横ではオレの残念なパートナーが良からぬ妄想に期待を膨らませながら依頼書を眺めている。
ロイ「、、、、変態。」
アリ「なぁっ?!ちっ違うわよ!!
ラージスライムって群れで行動するでしょ!
久々に大量のモンスターと戦えるから楽しみなだけよ!
別に粘液まみれになった私を見て、もしロイが変な気を起こしたりしたらどうしよーとか
突然変異で人型スライムが現れて粘液まみれの体で私に迫ってきたらどうしよーとか
粘液まみれで街に戻った私を見て街の男達が興奮して私に迫ってきたらどうしよーとか考えてないから!」
ロイ「オレが迫ることはないし、人型スライムなんて出ないし、倒したら温泉で汚れを落としてから街に戻るから男達に興奮されることもない!」
アリ「粘液まみれで、、、温泉、、、、♥️」
ロイ「お前、、、底無しだな、、」
アリ「なぁっ?!」
ロゼ「はいはい。仲良しもそこまで。
そろそろ向かわないと遅刻しちゃうから。
まぁ、もし遅刻して信用を失って依頼が来なくなったら
私を含め数少ないうちの社員が揃いも揃って路頭に迷って
遅刻したあなた達を恨みながら街の片隅で息絶えることになる訳だけど、それでもいいって言うなら好きなだけ続けてもらっても構わないけど?」
全く目が笑ってない笑顔でロゼリアが二人に迫る。
ロイ、アリ「「、、いってきます、、」」
ロゼ「はぁーい。いってらっしゃい。」
ロゼリアさんの威圧に耐えかねて急いで事務所から飛び出す。
アリ「今日、、頑張ろうね、、、」
ロイ「、、ああ、、」
これから戦うモンスターよりもミスをした後の社長にされるであろう表情に怯えながら今日も派遣勇者としてのオレの一日が始まる。