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落ちた先は絵本でした  作者: みついぬ
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エンドール王国 683年 春 王都にて

唐突に思いついて書きたいという衝動を抑えきれずに書いた。

後悔はしていない。

 昨日、約30年間この国を覆っていた雲が消えて人々は月を見て涙を流した。教会の人間はそれを神の奇跡だといい、国は祭りの準備を始めたようだ。

 今日の王都はいつもより活気づいており、子供は暖かい光の中で遊び回る。

 今年で19歳の私は、子供のようにはしゃぐことはなかった。だが、生まれて初めての日光に少し心が躍っていた。

 屋台で芋串を1つ買い、ほおばりながら王都を見回っていると不思議な格好の人物が目に付いた。


「やあ」


 果物屋で高級なリンゴを買ったその人物に声をかけると、店員にちょうど良かったと言われた。どうやら、この少女は遠くから来た旅人のようでこの国について何も知らないんだそうだ。ギルドカードも持っていないようだから案内してくれと頼まれた。

 20年間ずっと太陽が見えなかったこの国の治安ははっきり言って悪い方だ。作物はごく一部しか育たず、気温も上がらず、疫病が蔓延していた年もあった。国はそれでもどうにか民を守ろうと必死に税を下げたりしていたが、それでも少しずつ民が疲弊していった。食物は他国からの輸入品ばかりで生活は一向に改善しない。日々食うことすらもままならない者たちが盗みを働き出すのは悲しいが当たり前のことなのだろう。

 いまはまだ近くにはいないが、この不思議な格好の少女が何も知らずに歩いていたらすぐに殺されるか、攫われて奴隷になるかだ。

 騎士として、たとえどの国の人間だとしてもこの国に滞在する者を守る義務があるとギルドまで連れて行くことを了承した。


 少女の名前はリンナ・サクラギ。後ろ姿では髪色にしか気付かなかったが、黒い髪に青い目を持つ少女だった。慌ててフードを被らせた。


 怪しい人物がいないか確認してからギルドの中に入り、ギルド職員に事情を話し、個室での受付をするように話を付けて少女と別れた。

 これからのことはギルドの職員がどうにかしてくれるだろう。

 私は汗をぬぐって、王都の見回りを再開した。

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