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42、全力

顔や体、脚にできた多数の切り傷から、ロランは血を流し、立っていた。


が、もはやそれらの傷をいちいちヒーリングで治している時間も魔力もなさそうだ。


一方のマーキスも全身に火傷を負い、さらにあばらの骨にはヒビが入っている感覚がある。実戦形式の試合でここまでの傷を負ったのは、今回でまだ二度目だ。


(くそっ……アトールのやつ……とんでもない奥の手を用意していやがったな……けど、あれは一体どういうことだ?)


ロランのように治癒魔法が使えないマーキスは、ただひたすら痛みに耐えながら考える。


マーキスは決して今のロランを侮ってなどいなかった。

正直に言って、ここまでの二日間の結果はマーキスのプライドを深く傷付けるには十分なものだったし、実際ロランの示した力は誰しもが認めざるを得ない領域にまで達していた。


もちろん、マーキスもそう認めたうちの一人だ。

だからこそ、マーキスは決してロランをナメたりはせず、信念を曲げてまで属性相性の良いイツキにペアをお願いしたし、久しぶりに魔法の練習も再開した。


しかし、それは裏を返せば、まだ実戦形式であれば勝ち目があると判断したということにもなる。

つまり、マーキスは心の内ではロランのことは認めたが、まだ対外的に「負けること」は良しとしていなかったのだ。


それは、いくらロランが強力な聖属性攻撃魔法を会得したからといって、接近戦しかできないのであれば、どう考えても戦闘力では自分の方が上であろうと思いに起因していた。


ならば、実戦で叩き潰せばいい。


そして、真に『特魔』に相応しいのは誰なのかを「対外的に」見せつけてやろう。


マーキスはそう意気込んでいた。

が、蓋を開けてみれば地面に膝をついているのは自分の方だった。


(雷属性魔法の適合性が、突然発現したのか……? いや、そんな話聞いたこともない……まさか、アトールのやつ……今まで家の事情で攻撃魔法を隠していた?)


そうとしかマーキスには推測できなかった。

なぜならば、マーキスは今や幻の存在となった『詠唱魔法』を使うことによって、適正属性外の魔法も使えるようになることなど、知る由もなかったからだ。

それに、身近にそんな事情を抱えたやつがいる。


(じゃあ……むしろナメられてたのは、俺の方だってのかよ……!?)


そう結論付ける他ない、今の状況にマーキスは歯を食いしばる。


「上等だ……てめぇのその奥手ごと俺が粉砕してやる……!」


そうつぶやくと、マーキスは足を踏ん張り、立ち上がった。


それを見てロランも次の構えに入る。


攻撃を繰り出したのは二人同時だった。


「ショック!」


ロランは地面に手をつき、雷撃を放つ。


「テンペスト!」


マーキスはなりふり構わず、魔力を全開にし、嵐を巻き起した。


圧倒的な風の奔流。

しかし、ロランの魔法は地面の中を伝い、マーキスの足元から襲いかかる。


「くっ……」


当然、初見のマーキスには、避けるのは難しい。

体をひねって避けようとしたが、直撃を受けた。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ! ……こ、この野郎ぉぉぉぉ!」


それでもマーキスはテンペストの魔法を止めなかった。


近接戦闘では部が悪い。

中距離では雷属性魔法の方が機動力が上。

となれば、あとは遠距離から広範囲魔法で一気に決めるしかない。


それがマーキスに残された唯一の勝ち筋だと思われた。


「まだだっ……! 俺はまだ倒れちゃいないぞ!!」


「ぐぁっ、くっ……」


ロランは次々に襲いかかる無数の風の刃に、顔を覆う。

そうして少しでも距離を縮めようと前に進むが、すぐに押し戻されてしまった。


(ショックの手応えは確かにあった……けど、魔法力が全然落ちない……あれだけ当てても、まだ足りてない……?)


ロランはもう一度ショックの魔法を使おうと、口の中で詠唱する。

けれど、テンペストの圧によって、地面に手がつけないどころか、射程距離にも入れてもらえそうになかった。


このままの魔法力がずっと維持できるとは到底思えないが、その前にこちらの体力が尽きる可能性もある。

また我慢比べだが、ジリ貧になるのは避けたかった。


なんとかして、このテンペストを退けなければ……勝利はない。


(よし……もう一度、ホーリーランスで……)


ロランが魔力を練ろうとした、次の瞬間、


「フレイムキャノン!」


「……え」


ロランを背後から火球が襲った。

突然のことに、ロランは身動きすらとれず、直撃を受ける。

目の前のマーキスに気を取られ過ぎ、気配に気がつけなかった。


「ぐあぁっ!」


前のめりに床に倒れ込むロラン。

それでも首を後ろに向け、状況を確認する。


そこには複雑そうな笑みを浮かべているイツキと、その奥で倒れているエイコの姿があった。


「エコーズさんっ!」


「ふふっ。よく頑張ったけど、これは勝負だからね。ここからは二対一よっ!」


すると、イツキの周りに10数個の小さな火球が集まってきた。

おそらく、イツキはそれらの火球を意のままに動かせるようだ。


(くっ……テンペストの広範囲攻撃と同時に、あの火球も避けなきゃならないのか……!?)


そう思うが、弱気になっているヒマはない。

ロランはすぐに駆け出した。


「逃がさないわよっ!」


イツキは背中を向けたロランに向かい、一斉に火球を放つ。


(くっ……まずはこれだ!)


ロランは瞬時に体内で水属性の魔力を練り、全身を水の薄い膜で覆った。


『ウォーターベール』の魔法を属性放出魔法で出したのだ。


それから左に急旋回する。


何発かの火球はロランの横を通り抜け、さらに迫った数発は、辛くも水の膜で威力を相殺した。


「ロ、ロランくんが、水属性魔法をっ!?」


イツキは驚いたが、 間髪入れずに残りの火球をロランに向かわせる。

水属性魔法を使えた理由はわからないが、次は完全に背後をとった。


(今度こそ……!)


とイツキは思った。


しかし、ロランが振り返らずに手を横に振ると、なんと地面が隆起し、火球はロランに当たる寸前のところで止められてしまった。

カサンドラ直伝のあの魔法だ。


それは明らかに


(……! 地属性魔法!?)


聖属性魔法に、水属性、さらには地属性まで。三属性の魔法を操るなど、過去に数例しか聞いたことがない。

イツキは益々動揺した。

もう火球も数発しか残っていない。


(あんなの……いったいどうすれば……)


が、また一から魔力を練るのは時間的にも厳しい。

イツキが迷っているほんの一瞬の間でも、ロランは見逃さずにエイコの方へ駆け寄っていたからだ。


「……はっ! させないわっ!」


判断力が戻ると、素早く残りの火球を全てロランに向かわせる。


ロランはエイコを掻っ攫うように抱き上げると


「ホーリーランス!」


片手でランスを操り出し、残り全ての火球を叩き落した。


それから火傷を負ったエイコに治癒魔法をかけつつ、距離を取る。


その様子を見たイツキも、改めて魔力を練るため、反対側に退いた。


「エコーズさん……! 大丈夫!? エコーズさん……!」


ロランがそっと揺さぶると、エイコは目を薄く開け、


「アトールくん……ありがとう。私は大丈夫です……でも、ごめんなさい……足手まといになっちゃって……」


と、申し訳なさそうに言った。

ロランは首を横に振る。


「そんなことないよ! あの委員長を相手に時間を稼いでくれたじゃない!」


「えへへ……でも、ほんの一分程度ですけどね……」


そう言うと、エイコはロランの腕を離れて立ち上がる。

ロランは


「大丈夫? 立てる?」


と気を使うが、エイコは大丈夫だと微笑む。


「はい……アトールくんの治癒魔法、すごいですね。痛みが嘘みたいに引いていきます」


「ありがとう。でも本当は、そんなこと体験しないで済んだ方がいいんだけどね……」


「まぁ、それはそうですね……」


ふふふっと二人は笑った。


しかし、すぐに真剣な顔に戻り、


「で、これから勝つためにだけど……」


とロランが切り出すと、


「……あの……私にひとつだけ方法があります」


とエイコは応えた。



――マーキスは一旦、魔力を収め、再び意識を集中する。


その隣にイツキは行き、同じく魔力を練り始めた。


そうしながら二人は会話をする。

まるで、長年の戦友のように。


「ロランくんのあの魔法はなんなの? なんで聖属性以外の魔法を使えるわけ? しかも、無言で魔法を出してる時もあったわよね?」


「……知るかよ。事情は人それぞれだ。それに、例えどんな魔法だろうが、勝った方が強いんだ。今は勝つことだけ考えろ」


「でも、それにしたって、どんな方法で使ってるのかもわからないんじゃ、対策も取れないでしょう? それでどうやって勝つわけ?」


「簡単だ。こっちも向こうが対策をとれないほどの大魔法を使ってすり潰せばいい。俺とお前の合成魔法で一気に片をつける」


「はぁ……マーキスくんて頭いいのか悪いのかわからないわねぇ……結局最後はそれ? それで、もし負けたらどうするのよ?」


「その時は……潔く負けを認める。それしかないだろう?」


「うわ。単純〜。でも、まぁ……私もその考え方、嫌いじゃないわよ」


二人はロランとエイコの方を睨みつけると、全身全霊の力を込め、魔力を練った。



――「ほ、本当にいいの!? そんなことして……」


エイコの提案を聞いたロランは、思わず聞き直した。


確かにそんなことができるならば、活路は見い出せるが……


「だって、家の決まりなんでしょ?」


「はい……でも、アトールくんも……あれ、きっと秘密にしていた魔法ですよね? アトールくんも使ったなら、私も全力でやらないと……」


「なにも、そこまでしなくても……」とロランは言いたかったが、エイコの目を見るとそんな言葉も言えなくなってしまった。


彼女の目は真剣そのものだったし、なにより強い決意みたいなものを感じたからだ。

そんな目の女の子に対し、どうして否定的なことが言えよう。


「……わかった。何か準備は必要?」


「……! い、いいえ! すぐに魔法は詠唱できます。けど……私の魔力量じゃ、一回ちゃんと撃てるかどうかもわからないんです……」


「……そう……魔力が……でも、あと少し魔力があれば撃てるんだね?」


「えっ? あ、はい。魔力さえ戻れば一回は確実に……」


「うん。それで十分だよ! よし……じゃあ……僕たちの最後の大勝負といこう!」



――ロランとエイコが話し終わるのと、マーキスとイツキが魔力を練り終わるのは、ほぼ同時だった。


二組の視線が交差する。


試合開始から、まだ五分ほど。


しかし、魔法使い同士の戦いはそう長引きはしない。

静まり返った観客たちも、おそらく次が最後の激突になるだろうと、予想していた。


「行くぞ。最初から最大火力だ、カリナ」

「もちろん。ぶちかましてやるわ!」


「打ち合わせ通りにね、エコーズさん。でも……絶対に無理はしないで」

「はい。私は大丈夫です。アトールくんも……その……気をつけて!」


短く言葉を交わした後、両組は一斉に攻撃態勢に移った。


それだけで、演習場内が濃い魔力で満たされる。


それはロランのように訓練を積んでいない生徒たちでも、肌でなんとなく感じとれるほどのものだった。


「サイクロンッ!!」

「フレイムウォーーールッ!!」


マーキスとイツキは風と火の合成魔法により、巨大な炎の竜巻を作り出した。

しかも、それは一回戦で見せたものよりも、数倍は大きい。


「行けぇぇぇ!!」


マーキスとイツキが一緒に叫ぶと、竜巻は速度を上げ、ロランとエイコに向かう。


その途端、演習場の床が焦げつき、熱風が辺りに撒き散らされる。


誰もが「審判は止めに入らないのか?」と思うほどの魔法力の塊。


けれど、ロランとエイコはまだその場から動かなかった。


それによく見ると、二人はいつの間にか手を繋いでいる。


ロランの右手とエイコの左手。


そこを淡い緑色の魔力が伝い、ロランからエイコの方へと流れ込んでいっているのがわかった。


ロランとエイコは目を瞑り、集中している。


炎の竜巻はすぐそこまで来ていた。


その時、エイコがいつになく鋭い目つきで、目を開けた。

すかさず、片手を前にかざす。


「……『ソニック・ウェイブ』!」


エイコが力強く詠唱した、その次の瞬間……


辺りの空気が一瞬にして乱れる気配がした。


空気振動。


それもハウリングの魔法のレベルではない。


微細で正確な強い空気振動は、一瞬のうちに空気の多重波を作り出し、どんな物質でも打ち砕くであろう衝撃波となって、目前まで迫っていたマーキスたち渾身の合成魔法をあっさりと雲散霧消させてしまったのだ。


「えっ……?」


呆然とするイツキに、


「なっ……バカ野郎……エイコのやつ……!」


と、焦るマーキス。


これがエイコの究極の振動魔法。

しかし、殺傷能力が高過ぎるため、絶対に人前では使うなと母に厳命されていた魔法でもあった。


でも、もう使ってしまった。


全てはロランと一緒に、勝利を掴み取るため。


「今ですっ!」


「うん!」


ロランは言われるよりも早く、全力で地面を蹴っていた。


目指すはマーキス。


気がついたマーキスは応戦しようとする。

が、魔力はとうに底をついていたし、エイコのことで集中力が戻らない。


「ちぃぃっ! アトールーーー!!」


「マーキスくんっ!!」


二人の拳が交差する。


しかし、相手の顔に食い込んだのはロランの拳だけだった。


「……へっ……」


マーキスは不敵な笑みを浮かべたまま、勢いよく場外まで吹き飛ばされた。


場外失格。


これで戦闘続行は不可能だ。


ロランは素早く、イツキの方を向いた。


けれど、イツキはやれやれと肩を落とし、首を横に振る。


「はぁ……降参よ、降参。ロランくん。あなたたちの勝ち……」


「……え?」


ロランはそう言われても、まだピンと来なかった。


けど……ということは……もしかして……?


「そこまでっ! イツキ・カリナ降参により、これにて勝負は決した! よって……今年度の中等部第2期、ペア実戦テストの優勝は……ロラン・アトール、エイコ・エコーズ組!!」


審判が高らかに宣言する。


すると、少しの静寂の後、観客席中から割れんばかりの大歓声が上がった。


ロランは、呆然と観客席を見上げる。

みんなが、両組の健闘を讃えていた。


「ゆ、優勝……した。僕が、本当に……」


「おめでとう」


イツキが手を差し伸べてきた。

ロランはその手をとり、固く握手を交わす。


「正直、一瞬だけ勝てるって思っちゃったけど、甘かったわね。でも、まぁ、悔いはないわ。いい試合だった」


「うん。僕もいい試合だったと思う。ありがとう、委員長」


「いいって。それよりも、お互い、相棒の介抱をしなきゃね?」


「えっ?」


ロランはイツキの言葉に振り返る。

すると、そこには魔力切れで床に倒れ込み、身動きがとれなくなっているエイコの姿が……。


「あっ!! エ、エコーズさん!!」


じーんと感動に浸っている暇もない。ロランは慌てて駆け寄って行った。


それを見送ったあと、イツキもゆっくりとマーキスの方へと近づく。

マーキスは気を失っていた。

顔は腫れ上がり、鼻血が出ている。


「あらら……いい男になっちゃって……」


イツキはくすくすと笑う。

笑い事ではないのだろうが、マーキスのこんな姿などちょっと前までは想像すらできなかったのだから、やっぱりおかしくなってしまう。


「本当に……あんたは見る目があるよ。まさか、あのロランくんがって……あんたとエイコ以外に誰が予想してた?」


イツキは救護班を呼びながら、マーキスに向かって言う。

それから、ふと思い出し、


「でも……あの魔法……あれはちょっと、まずいかもね……」


とつぶやいたのだった。



――その頃、VIPルームでは、ロランたちの試合の結末を興味深そうに見つめる三人組がいた。


一人は白い髪に、白い瞳の可憐な少女。

ドレスこそ着ていないが、身なりもよく、いかにも高貴な雰囲気をその眼差しからも感じることができる。


その彼女が座る椅子の両脇に、帯剣する男女が立っていた。


女は黒い肌に、黒い髪。すらっと細い体型をした若い女剣士。


一方、男もかなり特徴的で、切れ長の目に、薄い唇。長い黒髪を後ろでひとつに結わき、帯剣している剣も剣ではなく刀だった。


男は口を開く。


「うむ……さすがはロラン殿でござるな。お見事でござった」


その男、カイゼン・ミノマルは感心した様子で、しきりに頷く。


それを白髪の少女はつまらなそうに見て、


「本当に、お主の知り合いとは思えぬほどの力だな。カイゼン?」


と言った。


「いやぁ、それほどでもないでござる」


「……誰が褒めた。嫌味も通じぬのか、お主には」


白髪の少女はため息をつく。

いつもこの調子なのだ。

しかし、カイゼンは相当腕が立つので『竜騎士』から外そうとは思わない。


「まさかロラン殿がここの生徒とは知らなかったでござるが、やはりここに見に来て正解でござったな。姫様」


「知り合いなのに、素性も知らなかったと申すのか? カイゼン?」


「あ! い、いや、それはその……」


少女の指摘におどおどするカイゼン。

カイゼンは律儀にロランと森についてのことは、伏せていてくれていたのだ。


「はぁ。まぁ、よいわ。とにかく、わらわは気に入ったぞ。あの少年。早速、妾の騎士に欲しいと、この国の上層部に打診するとしよう」


少女が言うと、褐色の女剣士が、眉をひそめ


「しかし、姫様。国付きの魔法使いを決めるのであれば、特別魔法クラスの中から選んで欲しいとのお話だったはずでは?」


と聞いた。

が、少女は手を横に振る。


「ダメじゃダメじゃ。そんなところの者を選んでは、我が国の息のかかった者が紛れている可能性がある。それでは、向こうの思うツボではないか。それに、妾は国付きの魔法使い兼、我が騎士を探しておるのだ。少しくらいの屁理屈は通じる」


「ですが、あの少年も……いくらカイゼンの知り合いとは言え、素性が知れないのでは……」


「それは、これからお前たちが調べればよいことじゃ。それに、たとえ素性が知れなくとも大した問題ではないわ。妾は妾の利害や、国の権力などに無関心な者を探しておるのだからな。妾は嫌われ者の『白』故、内外に敵が多いのは、お主も身に染みて知っておろう?」


「そ、それは理解しております……ですが、あの少年は……信用できるのでしょうか?」


「見たところあの少年はまだ、この魔法教国の色に染まっておらぬ。いけ好かぬ、各国付きの魔法使いのようにはの。味方につけるなら今しかないじゃろう」


「ですが、もっと魔法力のある生徒は高等部にも……」


「それだけではない。『シルビア』があの少年が良いと言っておるのじゃ」


「シ、シルビア様がっ!?」


それで女剣士はようやく引き退った。


自分と共に姫の命を守る仕事に就くことになるかもしれない同僚が、あのような少年では背中を預けられないと思ったのだが……


まさか、あの人嫌いのシルビアが……


「わかってくれたか? では、早速根回しに行くとするかの」


そう言うと、少女は席を立った。


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