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7話1.昇級試験

 リオルたちが冒険者になってから約2ヶ月。ギルドポイントもたんまり貯まったので低級ランクに上がる試験を受けることにする。

  (まこと)遺憾(いかん)ながら今もって剣の稽古に明け暮れるフィルは今回の昇級試験に間に合わなかった。昇級試験は日程が決まっているため今回を逃すと次の試験まで結構待つことになる。ランクごとに試験の行われる回数は異なっており、低級昇格試験は1ヶ月に1回だ。

 当初はフィルが戻るまで待つつもりだったがここにフィルの書き置きがある。

『俺にかまわず先にいけ! 俺、この稽古が終わったら冒険に復帰するんだ』

 フラグを立てているだけのような気もするが、ここはフィルの意をくんで先に試験をうけることにするリオルとジーン。ついでにエフィムとノエルチームも一緒に試験をうける。


「というわけで今日は6人パーティだ」

 自分たちの状況を分かりやすく説明するジーン。

「ジーンはだれにせつめいしているの?」

「気にするな。んで、試験についてだがクエスト方式と実技試験、筆記試験の3通りから選べるがどうする」

「ふつーにクエスト方式でいいんじゃねーか。クエストの参加人数や制限時間などがあること以外はいつもと同じ感覚でやれるしよ」

 クエスト方式をおすノエル。

「一番オーソドックスではあるな。即席パーティではなく連携のとれるパーティだ。クエストで問題ないだろう」

 大盾戦士ことおっさんもクエスト方式に賛同する。

「俺はね、実技試験でも面白いと思うよ。いつもと違うやり方で試験をうけるのも新鮮だろう? ただ実技試験にした場合、このメンツだとノエルだけ落ちる可能性があるからクエストでいいよ」

 アーチャーもクエスト方式に一票投じる。

「なんで俺だけ試験落ちる前提なんだよ」

「そりゃーお前が1番レベル低いからだろうな。人としてのレベルが」

「レベルが低くても、人として軸がぶれている奴よりはマシだな」

 ジーンとノエルのせいで場の空気が一気に悪くなる。

「私もクエストでいいかなー。じつぎでもいいけど、ひっきだけはご勘弁(かんべん)を」

 空気が悪くても、場の空気を読まないリオルは話をすすめる。ジーンとノエルのことなど気にもとめない。

「僕はどれでもいいかな。冒険者ならどの試験でも挑戦してやるくらいの気構えがないとね」

 エフィムはどの試験でも受けて立つ覚悟を見せる。

「チャレンジ精神も結構だが筆記試験だけはないと思うぜ。俺としては筆記試験が一番楽なんだが、完全に個人戦になってしまうからな。パーティ組んでいるんだ、パーティで行くほうがいいだろう。はるか以前は昇級するのに筆記試験突破は必須だったらしいが、突破率が1%未満で見直されたという経緯(けいい)があるらしいけどな」

「それは酷い。それじゃあクエストをおす声が大半だからクエスト方式で試験を受けることでいいのかな」

 とくに異論はないようだ。満場一致ということでクエスト方式試験に決定。

「それじゃあ試験受けに行くか。今回は特殊なクエストになるから全員、試験内容の説明を受ける必要があるな」

 ノエルがパーティを仕切り試験を受けに行く。このメンバーでパーティを組む時はいつもノエルがリーダーになっている。ノエルをリーダーに推薦(すいせん)したのはなんとジーンだ。

 ジーンいわく、自分はリーダーって柄じゃないし参謀や黒幕ポジションのほうが好きだからノエルにリーダーの座をゆずってやるということだ。実際は雑用とかいてリーダーと読む役回りを回避しただけだが。



 低級昇格試験『クエスト』。クエストと銘打ってはいるが普段のクエストと違い、受付嬢ではなく試験官が受け持っている。試験の度に試験官は変わる。今回の試験官はなんかうさん臭い中年男性だ。シワだらけのシャツをだらしなく着こなしている。

「おー、いらっしゃい。俺のところに来たってことは低級試験だな。クエスト、実技、筆記どれにすんだ?」

 間延びした声で応対する中年試験官。ボサボサの頭をかきむしるその姿をみたリオルたちは思った。こいつのあだ名は「モジャ」だなと。ぶしょうヒゲまで生えているし仲間内でもそんな感じで呼ばれているに違いない。

「クエストでお願いします。参加人数は6人で」

 リーダーであるノエルが受付をする。

「6人ね。6人で参加できるクエストは……あ、これだ」


『渓谷地帯のゴブリン退治 ※低級昇格試験』

 対象:渓谷ヒドゥンネタバレーで武装したゴブリンを30体以上討伐。

 参加条件:初級ランクであること。参加人数8人まで。

 依頼主:冒険者ギルド

 昇級試験。渓谷地帯にいる武装ゴブリンの討伐をお願いします。脅威性が低い非武装のゴブリンは対象外となります。

 ゴブリンは群れで行動し人や家畜を襲います。討伐の際は入念な準備をするようにして下さい。


「ゴブリンは個体によって強さの差がはげしいから強い個体や群れと遭遇したら逃げるのも手だな。相手の強さを見極めることは冒険者には大事なことだ」

 試験をうける初級冒険者たちにアドバイスをする試験官。

「このクエストは最大8人まで参加できるから、初級冒険者ならあと2人まで加えられるよ。試験をうけるうけない関係なく」

 試験のクエストは参加人数が限定されるのはもちろん、冒険者ランクも指定される。試験をうける冒険者と同ランクかそれ以下となる。今回の場合低級昇格試験となるので参加できるのは初級冒険者のみとなる。

「あとは何か注意点あったかなー、忘れっちまったよ。まあなんだ、思い出せないってことは大したことじゃないってこった。ほかに何か分からないことや聞いておきたいことはある?」

 試験の説明のはずがかなりいい加減に説明をする試験官。

「いや何が分からないか、まずそれが分からないので説明すべきことはちゃんとして欲しいんすけど」

 はじめて試験をうけるのに内容を理解していたら質問や説明の必要はない。

「大丈夫だって。重要なことは説明したし、ささいな事ならうやむやにできるから。ほら、試験官は俺だからそのあたりの采配も俺次第だから」

 いい加減なことの次は不当なことを言い出した。この試験官で大丈夫かと全員が思いはじめた。

「低級昇格試験ならそんなものだって。俺が初級冒険者だったころもこんな感じだったし。きびしくなるのは上級昇格からだ」

「試験官も冒険者なんですね。てっきり事務員かと」

 冒険者には見えなかったとばかりにジーンが言う。

「もう現役は引退したがね。ごらんの通り俺はデスクワーク派だからさ、40歳になって体力的にもきびしいから今年で引退したのだよ。俺に肉体労働はあまり向いてなかったってこったな」

 デスクワークも向いてないんじゃないか。リオルたちはそう思った。

 冒険者を引退する年齢は人によって様々。20代で引退するものも珍しくはないし、老年になっても現役をつづける冒険者もいる。引退後は隠居するものが多いが、若くして引退したあとは訓練所の教官になったり、この試験官のようにギルドの事務員になったりするものもいる。

「俺は現役を退いてから試験官をやっているが、現役のまま事務員になる冒険者もいるぞ。興味があれば人事部の奴らに聞いてみるといい。面接や試験はあるが働きがいはあるぞ」

「いや今から試験をうけるんですけど、冒険者のほうの」

「だな。興味ないこともないが今は昇級試験だ」

 本題からそれそうだったのでノエルとジーンが話を戻す。

「そうだった。じゃあ気をつけて行ってこいよ!」

 試験官に見送られリオルたちはクエストに出発した。



 渓谷。山も谷も川もあり木々まで生えている。つまりは色々なモンスターが生息しているわけだ。

 クエスト内容にも記載されている通り、ゴブリンならどれでも討伐対象になるわけではない。武装したゴブリンが討伐対象だ。

 武装していないゴブリンとくらべると強さも知能も上。雑魚モンスターとは言えあなどれない相手となる。長く生きたゴブリンほど強く狡猾(こうかつ)な生き物になるのだ。中には初級冒険者ではまったく歯が立たないほど強いゴブリンもいる。

 反対に人間社会に入り込んで生活するものもいる。そういったゴブリンは温厚な性格が多く友好的だったりするので安全だ。ゴブリンがすべてそうであれば戦う必要がなく平和なのだがそうは問屋がおろさない。今回はまさに危険なほうのゴブリンと戦うのだから。

一行はリーダー(笑)のノエルを先頭に渓谷地帯を進んでいく。

様々なモンスターとの遭遇を予見していたが全然見当たらない。討伐対象外のモンスターが出てきても面倒なだけなので、エンカウントしないならそれでかまわないのだが拍子抜けしてしまった。見かけるのは動物くらいのものだ。

「ここ本当にゴブリンいるのか? つーかクエストの目的地はここであってんだよな?」

モンスター1匹出会(でくわ)さないため自分たちが場所を間違えているのではとメンバーに投げかけるジーン。

「場所はあっているよ。何回か来たことあるけど、その時もエンカウント率は低かったからここはそんなものなんでしょ。ガイドブックにもそう書きつづられているし」

トゥナン地方ガイドブックを見ながらエフィムが答える。

「そうなんか。じゃあ今回のゴブちゃん30体って結構ハードル高くね?」

「楽じゃないだろうけど、ゴブリンは群れで行動するし難しくはないんじゃないかな」

「見つけてしまえば討伐数はかせげるわけか。そういやゴブリンって罠をしかけて待ちぶせるていどの知能はあるんだよな。その辺の茂みとかに隠れとらんかな」

 辺りの草木や岩を見回しゴブリンを探すジーン。

「てめーら、つべこべ言ってないで真面目に探せよ。その辺に隠れてるんなら苦労しねーよ、ちったあ考えて物言えよ」

 モンスターと遭遇できないことでノエルは苛立ち八つ当たる。

「真面目にとは言うがよ、レベルの低い冒険者じゃまともな探索スキルなんてもんありゃしねーし、平すら歩き回って探すくらいしか方法ねーだろ」

「だからってただ歩いていてどーすんだよ」

「ただ歩いているのはリーダーが考えなしにガンガン進んでいくせいじゃないんですかね」

「考えなしはテメーだろ。それでも作戦参謀かよ。俺なんてこんなにもリサーチしているというのに」

「ほう、そりゃ知らなかった。だったらそのリサーチしたという情報を作戦参謀にしっかり伝えてくれませんかね。でなけりゃまったく意味がないな、リサーチなんて」

「いいだろう。教えてやる感謝しろ。ここまで一切ゴブリンの痕跡はなかったが、動物くらいはいた。だがこの辺には動物がいない。ということはモンスターが出没する可能性が高くなっているということだ」

「へー、ちゃんと観察していたんだな」

 意外にも周囲の状況をしっかり見ていたノエルに感心する。ジーンもエフィムもその程度のことは把握していたがノエルの顔を立てるため黙っておく。

「もしかしたらいきなりモンスターが飛び出してくるかもしれん。油断すんじゃねーぞ、お前ら!」

 メンバーに檄を飛ばすノエル。

 その刹那、ノエルの体が地中に没する。奈落だ。

「いや、ただの落とし穴だろこれ」

落とし穴に落ちたノエルを見ながらジーンがいう。

罠にかかってしまったノエル。とたん草陰から野生のゴブリンが飛び出して来た。

「おー、本当にモンスターが飛び出て来た。よかったなノエル。お前の予想当たったぞー」

「さすがリーダー。すごーい、すごーい」

 穴底のノエルを見下ろしながらメンバーが褒め称える。

「だろう? やはり俺こそリーダーに相応しかったわけだ。取りあえず引き上げてくれ」

 ずっこけた体勢から立ち直り救助を要請するノエル。

「えー、どうしようかなー。リーダーなんだし自力でなんとかできるだろ」

「でも助けないわけにもいかないでしょ。今回は戦闘不能者が出ちゃうと失格になるし」

「仕方ない。じゃあ俺とエフィムであのバカ引き上げるから他のメンバーでゴブリンをよろしく」

リオルたちにモンスターとの戦闘を任せるとジーンとエフィムでノエルを穴から引っ張り上げる。

「待たせたな。さあはじめようか!」

穴に落ちただけでダメージのないノエルは意気揚々と戦闘に参加しようとする。

「もう終わっているのだが」

すでにリオルたちによりゴブリンが倒されてしまっていることをつげる大盾戦士。

ゴブリンの装備は貧弱で数も少なかったためあっさりと終わってしまった。

「なんだよ、せっかくのゴブリンとのファーストコンタクトだったのにあっけなかったな。俺の活躍はもう少し先になりそうだ」

「いや、もう十分見せ場はあったと思う。落とし穴にダイブして醜態(しゅうたい)をさらすさまは圧巻だったぜ」

「ねー、ねー。ずいぶんよわいゴブリンだったけどこれもとうばつすうにふくまれるの?」

「なるんじゃないのか。弱くて貧弱な装備でもこん棒とか持ってたわけだし」

いい加減な問答をするジーン。

「残念ながらこのゴブリンたちは討伐対象には含まれないようだ。武装しているとみなされるのは棒切れ程度ではなく金属製以上の装備品からと書かれているな」

 クエスト詳細を確認しようやく遭遇できたゴブリンが討伐数にカウントされないことを大盾戦士が説明する。

「3体倒したのにノーカンか。使えーなゴブリントリオ」

 悪態つくノエル。

「だがゴブリントリオを倒したところで第二第三のゴブラザーズが現れ必ずノエルを倒すだろう」

「もしかしたら第二第三の落とし穴が掘られているかもしれない」

「もしかしたら落とし穴の底に竹槍がつき立ててあったり、岩が落ちてきたりするかもしれない」

 即死系トラップにご用心。かもしれない冒険でいこう。

「ブービートラップかよ。いくらなんでもゴブリンがそこまでの罠をしかけるわけないだろ」

「実例はあるらしいよ。大した探索スキルをもたない中級冒険者以下がよく罠にかかって死んじゃうんだって」

「落とし穴で命まで落とすのか。冒険者らしく死ねるなら、ノエルも本望だろ」

「なんで俺だけ落とし穴に命落とす前提なんだよ」

「そりゃあ、先頭を行くリーダーが罠にかかる可能性高いだろう」

 ジーンの言葉を受けて自分が一番危険なポジションにいることに気がついたノエル。すこし血の気が引いている。

「おい、まさかビビってんのか?」

「馬鹿言ってんじゃねーよ。俺はいつでも勇気がみなぎってるぜ。でもいきなりモンスターと遭遇すると危険だし茂みから離れて歩こうかな」

 そう言ってノエルは茂みから離れて歩きだした。

「やっぱビビってんじゃねーかあいつ」

「でも茂みから離れて歩くのは正解じゃないかな。少くとも不意打ちは避けられるし」

「だが今度は崖の近くを進むことになって違う危険性がますな。その分視界も開けるわけでもあるが」

 ノエルの進行ルートにエフィムは賛成のようだが大盾戦士は難色をしめす。アーチャーも乗り気ではないがリオルはどちらでも良さそうだ。

「別にいいんじゃあないか。崖の下に落ちるような下手踏むようなやつはいないだろうし、それに罠よけが先頭を歩くわけだし問題ないだろう」

 このジーンの一言でメンバー全員が納得した。戦闘はともかく罠や不意打ちは怖いからね仕方ないよね。



 進行ルートを変更し進む一行はまたモンスターと遭遇できずエンカウント日照りとなる。

 違う意味で苦戦する今回のクエスト。かれこれ数時間はフィールドを歩きつづけているがここまでにゴブリンと遭遇した回数はたった1回。しかも討伐数にカウントされていない。あまりにもつまらないものだからしびれを切らしたノエルは素材集めと称してモンスターの巣から卵を盗んでみたところ、翼竜の卵だったらしく追いかけられるハメになった。

 ノエルのうかつな行動をグチグチとせめたてるジーンだったが、その後自分自身が他のメンバーに迷惑をかける事になるとは思いもしなかった。


 まもなくしてクエストは山場を迎える。本日まったく遭遇することができなかったゴブリンの群れとようやく出会すことができたのだ。

「うひょー! うじゃうじゃいやがる」

「さっきまで全然だったのに出たら出たで大量に来やがったな。20体以上は居るぞ。こりゃ厄介だな」

「冷静に対処すれば勝てない相手ではないはずだ」

そのまま混戦状態へと移行する。一度にこれだけの数のゴブリンと戦うとなると初級冒険者では苦戦は必至。だがこのパーティにはリオルがいる。変身せずに戦ってはじめてまともな勝負になるはず。

その我らがリオルはどう戦うのかと思いきや、なんと戦闘に参加していない。

武器すらかまえることなく考えごとをしている。一体何を考えているのか。

リオルが何を考えているのかというと、先日レイヴンからもらった正体不明のアイテムについて思うところがあったのだ。

あのアイテムはできるだけ大勢が集まった時に使うのがオススメだと言っていた。いまがまさにその時ではなかろうか。

リオルはプレゼントボックスをあけて中身を取りだした。

入っていたのはカエルの人形だった。山吹色のボディに根性あふれる表情をしている。どこの地域に棲息するカエルをモチーフにしたのかはよくわからない。

 同梱されていた取扱説明書には腹をおすとアイテムの効果が発動すると書いてある。

 リオルは何のためらいもなく人形の腹をおした。

「カエルが帰る」

 喋った。見てくれはただの人形だが間違いなく言葉を発した。これがこのアイテムの効果だろうか。リオルはもう一回腹をおしてみる。

「かーえーるーのーきーもーちー フロッグ!」

 リオルはカエルになった。

「なんじゃこりゃああ!」

 が、すぐ元に戻った。

 もう一度トリセツを読んでみる。どうやら腹ポチするたびにランダムで音声を発し、たまに追加効果も発動するみたいだ。

 戦闘そっちのけで人形遊びに夢中になっているリオル。見かねたジーンがやってきた。

「何やってんだリオル。前衛が1人足りないせいでおっさんが大変なことになってんぞ」

 たった1人で前衛を務めるおっさんにゴブリンたちの攻撃が集中している。いくらメイン盾とは言え、これでは勝てるものも勝てない。はやく助太刀しないと不味いことになる。

「そんなことよりこれをみてよジーン!」

 カエルの人形をジーンに向けてさしだし腹のボタンをおす。

「おっす! おらケロンキチ! よろしくな」

「人形はどうでもいいが、おっす! オラはジーンだ。……って俺は何をやっているんだ」

「このカエルの人形のケロンキチくんはこのあいだレイヴンさんからもらったやつだけど、なにがおこるかわからないマジックアイテムみたいなんだよねー」

「へぇ、それで自分の意志に反して自己紹介をしてしまったわけか。ちょっと貸してくれ」

 ジーンにケロンキチくんを渡すリオル。ジーンまで戦闘を忘れてカエルの人形に夢中になる。

 腹をおすと効果が発動するとのことなので試しにおしてみる。

「布団がふっとんだ」

「布団がふっとんだか。ここに布団はないから追加効果はなさそうだな」

 たしかにこの場に布団はない。代わりにジーンがふっとんだ。

 アイテムの効果でジーンは崖のある方向へふっとんでいく。そのまま谷底へ真っ逆さま。姿が見えなくなった。

「ジーーーン!」

 あわてて崖から眼下をのぞき込むリオル。他のメンバーもジーンがふっとんだことに気づき駆け寄る。

 結構な高さがあり谷底が見えない。とうぜんジーンの姿も見えない。

「ジーン、なってこったい」

「よくもジーンを」

「綺麗にふっとんだよね」

 各々が思いの丈をぶちまける中、大盾戦士は1人孤軍奮闘している。誰か助けてやれ。

「ジーン……。さ、せんとうにもどろー!」

「そうだな、どうせ生きてんだろうしな」

「崖落ちは生存フラグ。心配するだけ無駄だろうね」

 全員がジーンの生存を信じて疑わない。これがメンバーの結束のあかしなのだろう。なんとも美しい友情ではないか。

 そうなのだ、これがジーンなのだ。今までジーンが仲間とともに築き上げてきたものがここにある。ジーン1人欠けたところで大局になんら影響はない。優先順位は低いのだ。みんな戦闘に専念するあまりジーンを探しに行こうとなどと言い出すメンバーは1人もいない。信頼の証です。

 でも回復要員がいないと長時間の戦闘はつらいので結局探しに行くことになると思う。

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