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  2.よわくてニューゲーム? 伝統の初期装備   

 どうして冒険者になるのかと()かれてもそんなものは他人からすると大抵どうでもいい理由だ。だが本人にとっては大事な理由だったりもするのであまり人には言いたくない、なんてこともあるだろう。仮に話したとしても「へー、そうなんだ」で終わること受け合いだ。じゃあ、聞くなよと心の中でツッコむハメになるだろう。

 相手に悪気があるでもなしこれからパーティを組もう相手なら世間話の一つでもしてしまうものだ。そういったことを見越して話のネタの一つや二つ用意しておくと良いだろう。

「私に良い作戦がある」とか「このクエストが終われば結婚(マリッジ)するんだ」といった具合に。


 見晴らしの良いのどかな街道(かいどう)を一人の若い冒険者が行く。正確には今から冒険者になる若者がだ。背が低く小柄で見かけは子供にしか見えないが歳のほどは16歳と十分冒険者になれる年頃だ。名はリオル、戦士で地方都市『アケルナル』を目指している、訳はもちろん冒険者になるためだ。

 腰に剣を(たずさ)えてはいるが盾もなく鎧や兜の(たぐい)は身にまとってはいない、シャツとズボンの軽やかな出で立ちに金髪の無造作ヘアだ。のん気に口笛を吹きながら歩く姿は陽気な朝の散歩に見えなくもない。こんなのでも立派な冒険志願者だ、道端でうさぎを見かけ後を追って道草食っていたとしても。

「うん、この辺りの草は意外とイケる。野うさぎのおかげか、もっと食わせろ」

 田舎では野草はごちそうです。たぶん。

「いい朝食代わりになったなー。あ、いけない、早く街に行かないと」

 いきなり脇道にそれてしまっているがこのリオルにも夢がある、冒険者になる理由がある。道草食っている場合じゃない目的地はもうすぐだ、歩みを戻す。



「ようやく着いたよ、アケルナル。すごい、でかい」

 地方都市とはいえトゥナン地方で最大の街、はじめて街を訪れる者には施設一つ探すのも一苦労だ。さいわい冒険者ギルドはここで暮らすものなら誰でもが知っている場所、探すのは楽な方だ、すぐに見つけることが出来るだろう。道草さえしなければ。

「本当に大きいなー、カペラの街とはぜんぜん違う。人がこんなにいっぱい」

 はじめての街、見知らぬ物、見慣れぬ光景、田舎者には新鮮なものばかりだ。建物の一軒一軒がぎっしりならんでおり、隣家まで数百メートル離れてもいなければ人通りが少ないなんてこともない。

 とくに商店の多い通りは行き交いする人々で賑わっている。

「おほー、なんだろコレ、何に使うんだろ?」

 雑貨屋の前に並んだ商品を手に取り使用用途を勘考(かんこう)する。一見すると台所用品にも見えるがおそらく違う、なぜならここは冒険者用雑貨店だ。となりに置いてある棒状の物は一見すると工具用品にも見えなくはないがおそらく違う、なぜなら棚に商品名「バアルのようなもの」と書いてある。用途は不明だ。

 次から次へと目移りする、困ったものだ。あちらこちらに寄り道していては目的地にはたどり着けない。

「あ、いけない、こんなことしている場合じゃない」

 なんとか目的を思い出したリオルはギルド探しを再開する。

「どこにあるんだろう、誰かに聞いてみようかな。――はっ、これは「ニンジャの実」食べると通常攻撃が連続攻撃になるというレアアイテム、こんなところでお目に掛かれるとは」

 ふたたび目的を見失う。至るところに誘惑は潜んでいる、注意しなければならない。我に返り通りを歩き出すものの三歩歩いては目的を忘れ、また違うものの(とりこ)になる。こうして迷子が出来上がってしまうわけだ。

 ギルドを探さなくてはいけないと分かってはいても気になるものは気になる。このリオル、好奇心は猫を殺すという言葉を知らない、衝動が行動に直結する人間には無理からぬ話だ。当然の帰結でありこの後もさんざん街をさまよった。



「ここが冒険者ギルド、いやーさがしましたよ」

 時間は掛かったがようやく目的の場所に着いた。中に入りカウンターの受付嬢に話しかける。

「すいません、冒険したいんですけど」

 色々と言葉が足りていない。

「かしこまりました。冒険者レベルはおいくつでしょうか?」

 受付嬢は慣れた様子で応対する。

「冒険者レベルってなんですか?」

 目が点になり首をかしげる。受付嬢はリオルが新人であることを理解し、懇切丁寧(こんせつていねい)に説明を行い冒険者登録を済ませてくれた。

「旅団に所属するご予定などはおありでしょうか?」

「特にないです」

「ではよろしければ初めにチームや旅団に所属するのはいかがでしょうか? ベテランの冒険者の方とクエストを共にすることで多くのことが学べますよ」

「あー、いいですねぇ、それ。どうやって旅団に入るんですか?」

「旅団の斡旋(あっせん)を行っている係がございますので、そちらの受付でどのような旅団をご希望か、ご自身の職業や特技などはどの様なものかをお伝えいただければ、担当の者が条件に合う旅団をご紹介させていただきます。奥の広間を面談の場としてご利用も可能です」

「め、面談……もしかして就活みたいな感じですか?」

 就活は勘弁(かんべん)してほしいといった表情でリオルは恐る恐る確認した。

「面談と申しましてもお互い冒険者同士、就活とは違いますのでご安心下さい。顔を合わせてお互いのことを知るのが目的ですから気を張る必要はございませんよ」

「そうなんですね。あー、よかった」

「これからクエストを共にする仲間になりますので、お互いのことを知るのはとても大切ですよ。冒険や趣味の話で盛り上がり親睦(しんぼく)を深め良いパートナーが出来ることも多いんですよ」

「あぁ、ようするに就活ではなく婚活ってことですね」

「……すいません、やっぱり就活のようなものとお考え下さい」

 こうしてリオルは入団エントリーを済ませたのだった。



 旅団、目的も活動内容も様々だが団員を募集しているのはどこも同じだ。それでも必要とされる人材は異なるのでしっかりとした自己アピールは不可欠だ。

 戦士は人気職のため競争率が高い、そのうえ初心者だとさらにハードルが高い。しっかりとアピールしなければならない。おあつらえ向きなことにリオルにはとっておきの特技があった。さっそく紹介された旅団に入団希望に行く。

「あの、すいません、旅団『狩魂(かりたま)』さんですか?」

 リオルは席に座っている男に話しかけた。

「そうだけど、君は?」

「リオルって言います。今日冒険者になったばかりです。受付のお姉さんに勧められて入団希望に来ました」

「えっ!? 冒険者なの? まだ子供のようだけど……」

 男はリオルを見て困惑したような口調で(たず)ねてきた。無理もない、リオルの容姿はたしかに子供のようにしか見えない。

「あ、こう見えて自分16歳です。小柄なせいでよく子供に間違われますが」

 リオル自身はこういった誤解(ごかい)には慣れっこのようで手早く受け答えする。

「これは失礼をした。すまない」

「いえ、慣れているので気にしないでください。それより入団のことなんですけど……」

「ああ、そうだね。それじゃあ入団の話をしよう、そこの席に座って貰えるかな」

 リオルは言われた通り席に着いた。

「本日の入団担当のコンパックっていいます。それじゃあ、名前や職業など簡単にでいいから自己紹介してもらえるかな」

「はい、分かりました」

 一呼吸置き、そして続ける。

「名前はリオルです。今年で16歳、職業は戦士で子供の頃から剣の練習をしていました。カペラって田舎街の出身で冒険者になるためにこの街へやってきました。特技は――」

 今度はひときわ大きく息を吸い、これが売りですと言わんばかりに高らかに特技を明かした。

「特技は隠れることです。色んなカムフラージュをして鬼から隠れ、そして逃げ切ります」

 なんとも力強く答えた。

「あの、それって『かくれんぼ』って遊びじゃ――」

 冒険者の特技としては見当違いの答えをもらい思わず言葉を返した。

「おーっと、ご安心を。遊びとは違い戦いでも使えるよう高度なカムフラージュをやっていますから、さらに隠れる時は祈りをささげ発見率をぐっと下げています」

 そういうことを聞きたいわけでないのだが。大体、隠れて祈っても何の効果もないだろう、ていうか鬼から隠れるって言ったじゃん、やっぱかくれんぼだろ、それ。心の中でツッコみながらも会話を続けた。

「ああ、うん、鬼を相手にする時には使えそうな特技だね、うん。他に役に立ちそうな特技はあるかな?」

「他の特技……。うーん、『アレ』は特技じゃないし。あ、大食いなら得意です。ご飯大盛り10杯はいけます」

 役に立つ特技を聞いたはずなのに何故か戦闘で使えない特技が飛び出してきた。

「へぇー、すごいね。他にはどう?」

「はい、ご飯も好きだけどお肉はもっと好きです。もちろん、デザートも大好物です」

 もはや特技でもなんでもない単なる趣味嗜好(しゅみしこう)だ。新人と会話すると話が噛み合わないということは稀によくある。どんな相手でも上手く会話を転がすのがやり手の人事担当だ、ここは一つ話の本筋を切り替えていく。

「はい、特技はわかりました、それじゃあ次は職業の方を。この街の出身じゃないってことは職業訓練は受けてないかな。君は戦士職だったね、戦士としてのレベル……どれくらいやれそうか強さを教えてもらおうかな」

「戦士としてのレベルですね、わっかりましたー、お見せします」

 そう言うといきなり腰の剣を抜いて振りかざした。

「ちょ!? ここ室内、室内!! 殿中でござる!! 戻して、戻して」

 唐突(とうとつ)に剣を抜いたリオルに驚いたコンパックは慌てて止める。

「あ、スイマセン」

 そう(つぶや)いて剣を元に戻す。(さや)に剣を収めようとした瞬間コンパックはまた慌ててリオルを止める。

「ちょっと待って。その剣って――」

「この剣ですか?」

 リオルは鞘に戻しかけた剣を再び抜いてコンパックに見せる。



 それは剣というには なんというか簡素すぎた

 柄は普通 つばは小さく 剣身には刃が無く 全体には木目

 それは確定的に 明らかに 木剣だった



「やっぱりそれ木剣……だよね?」

 コンパックは信じられないものを見たといった表情でリオルの剣を指差し尋ねた。

「いやだなー、どこからどう見ても木剣ですよ、他に何に見えるんですか?」

 リオルはあっけらかんと答えるが、コンパックの表情は実に面白いものになっていた。その面白い顔をキープしたまま頭を抱え込んでしまうが、クエストで、実戦で木剣を使って戦うことがどういうことか説明しなければならない。ため息をついて言葉を発する。

「いいかいリオルくん、木剣ではモンスターとは戦えない。あまりに危険すぎる。このままでは君をクエストに連れて行くことはできない、本物の剣を用意する必要がある」

 実戦において木剣は役に立たないこと、今のままでは戦力にならないことをリオルに告げた。

「大丈夫ですよ、この剣でもう何度もモンスターと戦ったことはありますし、いざとなったら奥の手を使ったり逃げたりすることだって出来ます」

「君が大丈夫でも他のメンバーが大丈夫じゃないかもしれない。メンバーには他の初心者もいるし、それぞれクエストに向いた装備を準備している。もし一人だけ特殊な装備でクエストにいったとして、君の行動を予測したりするのは難しい。そのような状況では連携をとるのもまた難しい。それだと折角パーティを組んだ意味がないだろう? 旅団やチームではチームワークが何より大事だ、君だけを特別扱いは出来ないよ」

 はっきりとダメ出しを受けリオルは(ほう)けてしまう。コンパックが語った内容は反論のしようもない正論だった。少しの間、思考を(めぐ)らすが言葉が見つからず、やがてこれは仕方ないなといった表情で観念する。

「あー、まぁ、そうですよね。一人だけ特別扱いは無理ですもんね、ガックシ」

「分かってくれて助かるよ。すぐに装備を整えるのが可能ならクエストに行けるんだけど、それは大変だろうから準備ができた時にまた来ると良いよ。ひょっとしたら他の旅団では新人は装備不問のところもあるかもしれないから尋ねてみるのも良いかもしれない。紹介された旅団はうちだけじゃないだろ?」

 コンパックの言った通り紹介された旅団は他にもあった。受付嬢に探してもらう時に伝えた条件が新人の戦士でもOKぐらいだったので思ったよりも入団候補の旅団の数は多い。そのお陰で次から装備自由でOKか確認する必要ができたわけだが。

「ありますね他にもいくつか。――たしかにすぐ装備を揃えるのは厳しいのでもうちょっと探してみます」

「そのほうが良いと思うよ。大変だろうけど頑張って」

「ありがとうございます、早速探しに行ってみます。ではでは」

 リオルは席を立ち次の旅団を探しに行った。



 受付嬢から紹介してもらった旅団リストにもう一度目を通してみる。それぞれどんな旅団か簡単な説明文が載っているのでそれを参考にどの旅団なら入団OKになりそうか考える。

 が、ダメ。説明を読んだところでどこなら入団できそうかまったく分からない。まず装備に関する規定などいくら読んでも書いてない、それどころか読めない文字すらちらほらある。

「うーん、これは直接聞きに行ってみないとダメかな」

 リストに載っている旅団で今から会ってもらえそうなところを片っ端から聞いて回っていくことにする。まずはリストの一番上にある旅団を探す。広間はそれなりに大きく人も多いが部屋が分かれているわけでも障害物があるわけでもないので、探し始めてからものの数分で探している人、旅団は見つかった。

「すいません、旅団『レッド・RE・ボーン・アーミー』さんですか?」

 席に着いている人事担当っぽい強面(こわもて)の人物に声をかけた。

「イエス アイ アム。何か御用かな?」

 強面の人は非常に爽やかな笑顔で対応してくれた。

「入団希望なんですけど入団に関する条件とか知りたくて。新人の戦士で職業訓練なし装備なしでも入団できますか?」

「オーウッ、中々ハードな応募条件ですね。貴方がその冒険者の方でよろしいですか?」

 強面の人は非常に朗らかに対応をしてくれた。

「はい、そうです。ちなみに装備は木剣オンリーです」

「ふむ、木剣ですか……。実戦経験はお有りですか? それとパーティを組んだことは?」

 強面の人は非常に丁寧な対応をしてくれた。

「モンスターと戦ったことはありますがソロだけです。パーティを組んだことはないです」

「実戦経験があれば装備なしでも大丈夫かもしれませんね。ただし今の時期は他の新人さんがいらっしゃるので全員同時に面倒を見るのは難しいです。なので一月ほどクエストに連れて行くことは出来ませんが」

 強面の人は非常に分かりやすく説明をしてくれた。入団は大丈夫そうだが最初はクエストに連れて行ってもらえないのが少々痛い。

「1ヶ月はクエストなしですか……」

「ええ、最初のうちはまだクエストには行けない方々と一緒に訓練などをしてもらうことになります。旅団員と一緒にクエストに行けるようになる時期は個人差が生じますね。君の場合だと装備面のハンデがありますが実戦経験があるとのことなの他の新人同様一月ほどになるのではないかという私の見立てです」

 強面の人は非常に詳しく説明をしてくれた。説明はさらに続く。

「私どもの旅団では新人の方にはまず一番に訓練をしてもらうことから始めますのですぐにでも実戦に参加したいのであれば他の旅団の方が確実ですね」

「やっぱそうですよね。分かりました、他をあたってみます。冒険者となった以上、はやくクエストに行ってみたいので」

「そうですか、残念です。もし他の旅団でも条件が合わないようでしたら、その時はまたうちに来て下さい。良き旅団とのご(えん)があることをお祈りいたします」

 強面の人は非常に紳士的に最後まで応対してくれた。リオルは礼を言い頭を下げると次なる旅団を探すためその場を後にした。



 二つの旅団と面談しリオルの条件では入団しすぐにクエストに連れて行って貰うことが難しいことが分かった。いっそのこと旅団に入るのは見送って一人でクエストに行った方が早いような気もするがこの手のことは最初が肝心。下手に一人でクエストをこなす癖がついてしまうといざパーティを組んだ時にチームプレイが出来なかったりメンバーの足を引っ張ってしまうかもしれない。ここは一つもう少し頑張って探すことにする。

 次なる旅団は『突撃!(ほふ)りのBAN旅団』クエストを懸命(けんめい)にこなし美味しい晩御飯を頂くことをモットーにする旅団のようだ。頭のおかしい旅団名をしてはいるがモットーには惹かれるものがある。むしろこれだけふざけた名前の旅団ならトントン拍子に入団の話が続くかもしれない、是非とも面談したいところだ。

 今回はすんなり目的の旅団は見つけられた。イカれた旅団名に違わずその出で立ちまでブッ飛んでいて実に分かりやすかった。イカれた格好の人事担当者にリオルは声をかけ入団希望と木剣OKか確認したが「武器が木製なのは問題ないが形状は杓文字しゃもじでないとダメ」という謎のルールにより入団を断られた。

 もはや入団NGには慣れっこになった。ダメだったものは仕方がない切り替えていく、次の旅団だ。『開戦!なんでも狩猟団』『特攻紳士Zチーム』『攻強皇國氣光』とアピールしていったがことごとく玉砕した。



 うららかな春の木漏(こも)れ日が心地よい。澄み渡った空の青が広がり雲は美しい模様を描いていた。冒険者としてスタートする日にふさわしい晴天だったがクエストの第一歩を踏み出すどころかギルドの屋外にすら一歩も踏み出せず、天上ではなく天井を見上げていた。上を見ていたかと思えば今度は下を向いてしまった。ただしくはテーブルに突っ伏してお手上げのような状態だ。

 たまにうめき声のようなため息をついて愚痴(ぐち)っぽいことを呟いている。昼下がりだと言うのに飲んだくれていて、とても今日から冒険をはじめる新人には見えない。炭酸ジュースで酔っ払った感じになれるのだからお手軽なものだ。

 入団希望をした旅団のすべてに体良(ていよ)くお祈りされたのだ無理もない。入団交渉がお祈りゲーなんてもはや就活と変わらないじゃないか。しかも木剣featuring戦士をみて、気の毒な人を相手にするかのように誰もが妙に優しかった。他でもダメだったらその時はうちに来なさいとかその優しさが逆に辛い。まだ入団交渉していない旅団がリストには残っているがあいにく今日は面談を受け付けてはいないようだ、また後日訪ねてみるしかない。

 だが今日の結果から嫌というほど分かったことは今のままではまずまともに入団はできない。できたとしてもクエストに行ける保証はない。妥協(だきょう)して入団するか一旦装備などを整えてから出直すか、装備を整えるとしても新調する余裕はないのでその場合は手頃なクエストをこなして資金を貯める必要がある。悩みのタネは尽きない。一人頭を抱えるリオル、とそこに声をかけてくる者がいた。

「すいません、新人の冒険者さんですか?」

 リオルは声のする方に顔を向ける。茶色の髪の少女がそこにはいた。歳のほどは十代前半くらいだろうか。背丈はリオルよりは高い、年齢はおそらくリオルの方が上だが。

 この少女とは面識がない。ひょっとしてどこかの旅団の人だろうか。言葉を返し確認してみる。

「そうですけど、どちら様ですか?」

「私はこの街で暮らしているケイトっていいます。ハロークエストの窓口で入団者募集中の旅団や入団希望の冒険者などの情報を聞いた時に、今日から冒険者をはじめた方がいらっしゃるとお聞きして探していたんです。実は私の知り合いも今日から冒険者になりまして、もし良ければ一緒にクエストに行ってもらえないかなと思い声をおかけしました」

 なんということか、旅団とは違うが先程まで必死こいて探し回っていたクエストメンバーが、あろうことか向こうから誘いにやって来たのだ。

「知り合いの方とクエストに一緒に行くというのはつまり、私もクエストに一緒に行くということですか?」

「はい、ご都合がよろしければ。それとも、他に予定がおありでしたか?」

 リオルは席から立ち上がりケイトの手を掴んだ。

「いえ、是非お願いします! 一緒にクエスト!」

 旅団探しの散々な結果からの反動だろうか、瞳を輝かせながら力強く答えた。

「よかった。初心者二人だけで困っていたんです、助かります。お名前はなんて仰るんですか?」

「リオルです。ちなみに歳は16、職業は戦士です」

「リオルさんですか、素敵なお名前です。……さんで良いんですよね? くんじゃないですよね?」

 ケイトはふと疑問に思ったことを尋ねる。16歳の割に幼い外見のリオルは見た目では性別の判断が難しかったのだ。

「……! ああ、そういう意味か。女で合ってますし、幼児じゃないですよ。よく間違われるんですけどね」

「ごめんなさい、失礼なことを言ってしまいました」

 ケイトは慌てて謝罪するが当のリオルは全く気にしておらず、両手でいいよといったジェスチャーを取る。

「それよりちょっと言いづらいことが……私の武器木剣なんですけど大丈夫ですか?」

「木剣ですか? 大丈夫だと思いますよ」

 ケイトは全く問題ないといった感じで答える、それを聞いてリオルは心底安堵(あんど)する。

「それよりあの二人の方がもっと酷いと思いますし、なんてったって後衛職二人で戦闘クエストに行ってしまうくらいですから」

 すこしうつむき加減に答えるケイト、それを聞いて不安を覚えるリオルだったが自分は戦士、前衛職だから後衛と組めてちゃんとしたパーティになることに気付き大丈夫、問題ないと考えた。

「そうなんですか、じゃあ戦士がメンバー入りしてこれでバランスがとれますね」

 それを聞いてケイトは笑顔になった。

「はい、ありがとうございます。それでは二人のところに案内しますね、こっちです」

 リオルはようやくパーティを組めることに期待を(ふく)らませ、ケイトの後について行くのだった。

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