印
私達はラセル学園の入学式に来ていた。入学式は大講堂と呼ばれる場所で行われる。
「わ~ここがラセル学園か~、大っきいね」
ラセル学園の門に着くと、受け付けを済ませ大きな門をくぐる。
まず目に入ったのはここからでも見える巨大な校舎だ。
校舎は三階建てで、東側に上級生、西側に下級生の教室が有り、その中心に職員室などがある。
そして門から見て東側に寮があり、西側はコロシアムのような建物とその横にも建物がある。
大講堂は寮の後ろに建っていた。
私は大講堂へと向かった。
「そう言えば、第二王子も入学してくるみたいだよ」
この国、アルシャ王国の第二王子が入学してくるらしい。
「ふ~ん」
特に興味は無かった。
王子なんて雲の上の存在の事を考えても無駄だと思ったからだ。そして大講堂に着く。
「ここも広いねー」
「そうだね」
中には私達と同じ新入生が沢山居た。
そしていよいよ、入学式が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
学園の教師が注意事項や規則を長ったらしく話していたが、どうやらやっと終わったらしい。そして学園長が現れる。
「どうも皆さん、私はこのラセル学園の学園長をしているリーフと申します」
リーフ学園長は金髪の髪のスタイルのいい女性だった。そして、耳が尖っている。どうやらリーフ学園長はエルフのようだ。
エルフは寿命が長く風、地、水の属性と相性が良い種族だ。その代わりと言っては何だが力が弱く、エルフの殆どは魔法使いになるらしい。
「この学園は種族、立場、異能の差別を許しません。学園に入学したら皆同じ仲間です。共に競い合い、高め合い、楽しい学園生活を過ごして下さいね。それと、私に用がある方は後で学園長室まで来て下さいね」
最後の言葉はきっと私達に向けられた言葉だと思う。だって神が学園長を頼れって言ってたし。
疲れたけど入学式が終わったら学園長室に行ってみよう。
◇ ◇ ◇ ◇
程なくして入学式は終わり、生徒が寮へと向かう中私達は学園長室へと向かっていた。
「ここだね」
フィアが学園長室の扉をノックする。
「入って下さい」
学園長の声がして私とフィアは学園長室へ入る。
「ティアさんにフィアさんですね、どうぞ座って下さい」
私達は上質なソファーに座る。何か凄く高そうだ。
「まだ人が来る予定なのでちょっと待って下さいね」
「人が?」
「はい、貴女達と同じ仲間ですよ」
出された紅茶をのんでいると、学園長室の扉がノックされた。
「どうぞ入って下さい」
中に入って来たのは三人の男女。
一人は金色の、サラサラした髪の美形の男の子。もう一人は赤い髪の男の子だ。最後は黒髪の可愛い女の子なのだが……無表情だ。
「皆さん揃いましたね。ではまず自己紹介からしていきましょう。ティアさんからどうぞ」
「え? ティアです」
いきなり話しを振られて、特に面白味も無い自己紹介をしてしまった。
「私はフィア、よろしくね!!」
次に金髪の男の子が。
「僕はユーリ、よろしく」
「俺はアレンだ」
赤髪の男の子が言う。最後に黒髪の女の子が。
「私はユイ、よろしく」
そう言って、お約束のトラブル等は無く自己紹介は終わった。
◇ ◇ ◇ ◇
「まず何から話しましょうか? あ! 皆さん自分の印が何処にあるか分かりますか?」
印? 印って何だろう。
「皆さんは神から力を貰いました。その証として体のどこかに印が現れるのですよ」
刺青みたいな物かな?
母さんと父さんにどう説明しよう……。
「僕のはここにあるよ」
金髪の男の子、ユーリが左腕を見せてくる。
見ると、ユーリの左腕には白い魔法陣のような物が書かれていた。
「俺は舌だ」
アレンは舌を伸ばした。アレンの舌にはユーリと全く同じ物があった。
「あ! それならここにあるよ!」
フィアはそう言って胸元を見せようとして──
「ストップフィア!! 私が見るから!!」
「あ、そうだね」
フィアの胸元には確かに印があった。て言うか、私はフィアに印の事聞いてないんだけど?
「私はここに」
そう言ってユイが黒髪を持ち上げる。
印は、ユイの白く健康的なうなじにあった。
「ティアさんは自分の印がどこにあるか分かりますか?」
私は首を横に振る。
手や足にそれらしき物は無かったし、舌にだって多分無い。
「ふふっ、それなら~」
学園長がじりじりと近寄ってくる。なに? 嫌な予感がする。途轍もない嫌な予感が。
「男の子達は廊下に出てて下さいね~」
学園長はそう言ってユーリとアレンを追い出してしまった。
「あの、何するんですか?」
引き気味になりながら質問する私。
「日常生活をしていて見つけられないと言うことは、目の届かない背中などにある可能性が高いのです。だから、確認してあげようかと」
「そ、それって?」
「服を脱いでくださいね~」
「え、いや、ちょっと、待って、フィアー! 助けてー!」
学園長室で始まった鬼ごっこは学園長の圧勝だった。
「うわああああ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「何やってんだあいつら」
学園長室からドタバタと走り回る音がする。
「あはは、仲良さそうだね。改めてよろしくね、アレン君」
「おう、よろしくよ」
◇ ◇ ◇ ◇
結局、私の印はどこにも無かった。
「う~ん。どこにあるんでしょう?」
学園長もお手上げのようだ。
う~ん、神様に聞けたら良いんだけど……。
そんな時だ。
「私、ティアの印の場所に心当たりがあるよ」
フィアがそんなことを言い出した。
「本当ですか? フィアさん」
「うん」
そうしてフィアは私を見つめてきた。
「心当たりってどこ?」
私は自分の印の場所に心当たりなど無い。フィアは何故心当たりがあるのだろうか。
「それはね」
フィアが近寄ってくる。そしてフィアの手が私の前髪に触れた。
「ここだよ」
フィアは私の前髪をはらい、隠している方の右眼を指差した。
「開けてみて」
「いや、ここは……」
オッドアイの事は結構トラウマなのだ。もし、ここに居る四人も村の人と同じだと思うと……。
「大丈夫だよ。皆はティアに酷い事言ったりしないよ」
私は皆を左眼で見る。
皆は不思議そうに私達の話しを聞いていた。
皆とは今日初めてあったばかりだけど、いい人達だ。それに、これからも皆とは長く付き合っていく事になるだろう。
なら、打ち明けた方が良いのかもしれない。
私は意を決して右眼を開く。
フィアの瞳に映る私の右眼には、確かに印が刻んであった。
ユイの印の位置を背中からうなじへ変更しました。






