力が欲しいか?
「ん……何処だ? ここ?」
気が付けば私は白い空間にいた。
前も後ろも右も左も上も下も分からない空間に。
「やぁ!! 起きたね!! ティアちゃん!!」
いつの間にか目の前に女の子が居て、私に話し掛けてくる。
誰?
「私は神だよ!!」
自称神の女の子は金髪で、天真爛漫と言う言葉が似合うような子だ。
服はカーテンをそのまま被ったようなダボッとした白い無地のワンピース。袖からは手が出ておらず、所謂萌え袖だ。
「本当~? 嬉しいな~!」
「ここは何処? 私は死んだの?」
「死んでないよ~。私が呼んだの!!」
「呼んだ?」
訳が分からない。
「そうそう、呼んだ。それよりも~」
女の子は私に顔を近づけ、言った。
「力が──欲しいか? ん~! これ言ってみたかったんだよねー!」
その時の女の子の表情は今までとは一変して、真剣な顔になっていた。が、すぐその表情は消え、明るい笑顔を浮かべる。
「力って?」
「ティアちゃんの異能の能力を最大限引き出し、新たな高みへと導く。そんな力だよ。ちなみにフィアちゃんはもう持ってるよ」
「フィアが!?」
「ティアちゃんがオークと戦ってる時に願ったからね。私はそれに応えただけ」
フィアはこれまで、魔法をあまり使ってこなかった。
それなのにあの威力の火球を出せていたのは、この子の言う力とやらのおかげなのだろうか。
「でも~、力をあげる代わりにたまにで良いからお願い事を聞いて欲しいんだよね~」
危ない香りがする。
もしそんな力が本当にあるのなら、お願いとやらでどんな事を要求をされるのか──。
「お願い事って何ですか?」
「んー、例えばたまにここに来てお茶してくれるーとか、そっちで起こった面白い事を話してくれたりだとかかな」
(そんなので良いの?)
「あ! あとはティアちゃんみたいな子達と協力して、魔族と戦って欲しいかな」
「魔……族?」
「魔族って言うのはね、魔王の眷属みたいなものだよ」
意味が分からない。魔族ってなんだ? それになんで魔王が出てくる?
「何でそんなのと戦うんですか?」
「それが神の業務だからさ」
「そうですか……」
ここまで来ると本当に神様なのかも知れない。
それにしても魔族……いや、まて。
「フィアは力を貰ったんですよね?」
「うん」
「じゃあフィアも魔族と戦うんですか?」
「そうだよ。フィアちゃんに戦う意識が無くても、魔族は襲ってくる」
最初から選択肢なんて無かったんだ。
いくらこの子が胡散臭くても、本当は悪魔だとしても、フィアが魔族とやらと戦わなければいけないのなら、私は力を求める。
「神様」
「なに?」
「仕方なく……です」
もしもあの時フィアが力とやらを貰っていなかったら、私達は死んでいたかもしれない。だから、もうあんな風にならないように。フィアを守る為に。力が欲しい。
「うん、良いよ。力をあげるね」
神様の方から銀色の光が近づいてきた。
「それが力だよ。でもまだ慣れないだろうから、何かあったら学園長を頼ると良いよ」
学園長? 学園長とは私達が通う学園、ラセル学園の学園長だろうか?
「そうだよ。その学園長も力を持ってるから、何かあったら助けてくれるはずだよ」
そうなのか。じゃあまずは学園長を訪ねてみよう。
それと──
「さっきから心を読まないで下さい」
「ごめんごめん。もう時間だよ」
私の意識が遠くなっていく。
新たな力と魔族、そして神や魔王。色々事が有りすぎて少々疲れてしまった。
まだ休みたいが、そのまま私の意識は浮上していく。
◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると私は知らない場所に寝かされていた。
「ティア!! 起きたの!? 大丈夫!?」
フィアが心配そうに話しかけてくる。
「うん、大丈夫だよフィア。ここは?」
「ここは騎士団の隊舎だよ。入学式が始まるまで居て良いんだって」
「それは良いね。ところでフィア」
「ん? 何?」
フィアは綺麗な紫の瞳をこちらに向けてくる。
「神様から力を貰ったよね?」
私の言葉に、フィアは驚いた表情を浮かべながらも頷いた。
◇ ◇ ◇ ◇
私は最近、騎士達が日頃訓練を行う訓練場に来ている。
何故かって? 勿論訓練をする為だ。
私の異能は、私が望む武器を作り出すことが出来る。だが望む武器と言っても何でも作れる訳では無いし、結構面倒くさいルールがある。
まず1つ、飛び道具は作れない。
私は弓矢等は作れなかった。それに、作った武器は私の手から離れると消えてしまうのだ。
2つ、二種類の武器を同時に作れない。
例えば右手に剣、左手に槍などが不可能だ。両腕に剣や両腕に槍などは可能だが。
3つ、作った後でサイズの変更は出来ない。
実はこの異能、ある程度武器の大きさを調整出来るのだ。私の身長くらいの斧も作れた。
しかし、通常サイズで作った後に大きさを変更は出来なかった。
このくらいだろうか。ああ、レーザーブレードを作ってみようと思ったが無理だった。
色々面倒な制限はあるが、使える武器のレパートリーは多い方が良い。なので入学式が始まるまで武器の使い方を教えて貰っているのだ。
そんな日々を過ごしているといよいよ入学式が始まった。