三十三話 盗賊退治④
洞窟の中は地に濡れている。盗賊達の亡骸が転がり血の臭いが鼻をつく。
「うーん・・・死体を焼くと煙が出てきて面倒だし、放置しておくとアンデット化するしな・・・ん、そう言えばアルトとポーカーしたときに掛け金として出してきたマジックアイテムがあったな・・・」
セイはアイテムボックスから十字架が描かれた赤黒い棺桶を取り出した。
大きさは二メートル程で十字架は銀色に光っている。
「吸血鬼っぽいマジックアイテムって言ってたがどんな効果だっけな?考えても仕方ないし、使うか・・・確かキーワードは・・・」
『我が力の一つとなれ、ここに供物を捧げよ。血の棺桶』
血の棺桶は蓋を開き中から黒い触手が現れて盗賊達の亡骸を喰らっていく。
時おり棺桶から聞こえるボキボキと骨のなる音をセイは忘れはしなかった。
ものの数分で盗賊達の亡骸は地面に染み付いた血を残して綺麗さっぱり消えていた。
「絶対二度とあれは使わないぞ!?がちで不気味すぎるわ!?なんなんだよ!?つうか、ポーカーの掛け金に怪しげなマジックアイテム出すなよ!?クソ・・・これ夢にでてこねぇよな?」
セイは棺桶をやや虚ろな目をしながらアイテムボックスに仕舞う。棺桶の蓋には絶対に使用禁止と張り紙を貼ってあるので金輪際使うことはないだろう。
いや、そうであって欲しい。
「セイ、大丈夫かの?それよりも、さっきのマジックアイテムはなんじゃ!?妾はあれが欲しいぞ!どこで売っておる!?」
「いや、売ってないから・・・多分だが・・・それと、絶対に見つけても買ってくるなよ!?買ってきたら燃やして消し炭にするからな!?」
「わ、わかったのじゃ、だから顔を近づけるでない。」
セイとクリスの顔の距離はあと数センチもするとキスしてしまうような距離であった。
「で、そっちはどうだった?やっぱり盗賊か?」
「うむ、下っ端だがの。半分奴隷みたいなもんじゃったな。ロクな装備も与えられておらぬだった。脱走奴隷だと妾は思うがの。まぁなんにしても奴等は土のしたじゃがの。」
クリスはフフフッ!と笑っているし、なんか肌は艶やかになってるし・・・
「して、セイ。あの女子は誰なんじゃ?」
後ろを振り向いて見てみると一人の少女が鎖に繋がれていた。
気絶しているようだ、きっと起きていてこの惨状を見たらきっとトラウマになっていただろう。
「あ、あぁ、あの子ね、忘れていた訳じゃないからな!?そんな目で見るな!本当に忘れてないから!盗賊の話を盗み見聞きしたところ襲われた被害者の一人っぽいね。獣耳と尻尾がついてるから獣人なんだけど、彼女くらいなら一人なら逃げ切れたはずなんだげどな?誰か人質でも取られてたのか?ま、細かいことは気にしないでおくか。とりあえず起こして盗賊達の宝物庫まで行くか。」
「うむ、今度はそれなりに大きな盗賊団。良いものがあるじゃろう。楽しみじゃ!」
セイとクリスは少女の前に立って、鎖と手枷足枷を外し床に寝させた。
「近くで見るとどっかで見たことあるんだが気のせいか?ま、いっかじゃあクリス起こすぞ。」
「了解じゃ!」
「水生成」
セイの手のひらから水がこぼれ落ちて少女の顔を水が襲う。
「うひゃあ!あ、アナタたちはボクに一体何をするんだ!?いきなり寝てるボクの顔に水をかけるなんて酷いじゃないか!?」
狼耳をピコピコさせながら15歳くらいのボクッ娘は威嚇するのであった。




