入城
石橋を渡った先にあったのは、鉄でできた黒い大門であった。
それには来る者を拒む何かがあり、僕は少したじろいだ。――しかし、ここで引き返すという選択肢はない。
僕は意を決して、その大きな門を引き開けた。
城の中へと足を踏み入れた僕は、目の前に広がっていた光景に唖然とした。
そこにあったのは、無数の柱が広がっている大きな広間であった。
灯りがあるのは僕の前方にある通路だけなので、部屋の全貌を視認することはできない。
だが恐らく、柱は広間全体に、建築物を作る際、まず初めに成される「杭打ち」の杭の要領で建っているようであった。
その通路を照らす灯りは、左右にある柱に掛けられた蝋燭からきているものであった。僕はその道をゆっくりと進んだ。
聞こえるのは僕の靴音だけで、辺りは恐ろしいほど静まり返っていた。柱と柱の間にある暗闇から何かが飛び出してきそうで、僕は始終体を強ばらせていた。
やがて、僕の目の前に両開きの扉が現れた。……どうやらここが、このだだっ広い部屋の終点のようである。
僕は自身の体に張られている緊張を解かないまま、その扉の奥へと向かった。
扉の向こうにあったのは、細い廊下であった。だが天井が無駄に高いため、閉塞感は全く感じない。
僕はその廊下を歩き始めた。
その廊下を歩いている途中、僕はいくつもの小さな扉を見かけた。しかし、僕は決してそれを開けようとはしなかった。――なぜなら、その先に僕の会うべき人がいるとは到底思えなかったからだ。これは予感でありながら、確信に近いものだった。
数分歩いたところで、僕はようやくそれらしい扉に出会った。
ここまで主人公以外の登場人物出てこなくてすいません……ですがもうじきヒロインも登場しますので、ここまで読んでくれた方は是非、続きに期待していてください!