タオル
誰だってタオルを持っているでしょう。自分のタオルは、。。。
ここは、ごく普通の一軒家。
『あっついなぁ。。。この暑さ、いつまで続くんだろう?』
外ではセミがけたたましく、これでもかという感じで夏を謳歌している。
自分は50代なかばのサラリーマン。仕事をしながら、とある研究を細々と続けてきたのだ。
それには、20年もの月日を費やしてきた。そして、ついにその夢のような『タオル』を完成させることができたのだった。
このタオルはいろいろなものを吸収してくれるのだ。
夏にかく汗はもちろんのこと、その人にとって不要なもの、いわゆる嫌なものなどをすべて吸い取ってくれるのだ。
まずは居間でお菓子を食べながらテレビを見ている妻に試しに使ってもらって、感想を聞くことにした。
妻にそのタオルを渡して、まずは感触を尋ねた。
「タオルの感触はどうだい?」
「どうって、普通のタオルでしょう?」
「実はこのタオル、やっとの思いで作りあげた研究の成果なんだよ。普通のタオルとは全然違う効能があるんだ。だから、ちょっと、どこでもよいので身体を拭ってみてよ」
妻はいつものように面倒くさそうな感じだった。
「わかったわよ。どこでもいいのね?」
そう言うと妻は、左腕の手首から上に向かって拭きとった。
「使ってみた感想はどうだい?」
「まあ、そこそこ良い気持ちよ」
「このタオルは、身体の内側の不要なものである脂肪や癌細胞なども吸収し、その人の身体をすこぶる良くしてくれるんだよ」
「そうなの?すごいじゃない」
「そうだろ?さらに普通のタオルと同様、洗濯すれば、その嫌なものは洗い流されて何度でも使えるんだ」
妻は左腕の匂いを嗅いでいた。
「そうなのね。すごくいいわ。私の汗臭い嫌な匂いも吸い取ってもらえて、良い香りにしてくれたわ」
「そうだろう。すごいだろ」
自分は妻の反応をみて、自己満足に浸っていた。
次に妻はTシャツをめくりあげて、でっぷりしたお腹辺りをサッと拭っていた。
すると、妻のお腹はみるみるうちにほっそりしだした。
そんな妻はお腹周りを見て驚きながら、タオルを何度も往復させていた。
「素晴らしいわ。こんなタオルが欲しかったのよ。これで好きなだけ好きなものを食べることができるわ。ありがとう、あなた」
自分は久しぶりに妻から感謝されて、とても嬉しかった。
妻はさらに汗ばんだ額を拭うように、タオルをおでこにあてた。
「あら、なんて表現して良いのかわからないくらい、すっきりした気分になれるわ」
すると、しばらくして、目の前の自分に向かって不思議そうな顔をしている。
「あなた、。。。一体、だれ?」
『最初こそ、妻がふざけて言っているのかと思っていたのだけど、。。。』
そうでもなさそうな、。。。
『えぇっ?もしかしたら、もしかして、。。。。。こうなってしまうとは、まったく考えていなかった。これから妻を元に戻す?でも、元に戻すまでには時間がかかるし、そのことに意味がある?』
しばらくして、無意識に自分もそのタオルを手に取って、冷や汗を拭ってしまった。
すると晴れ晴れした気分になり、。。。
そして、意味のない不要なことも忘れることができた。
― F i n ―




