落とし穴
(私のショート・ショート 第36弾です。)
(2009.03.22.投稿作品)
落とし穴
「おっと危ない」
あともう少しで、落とし穴に落ちるところだった。
小さい頃は、よく庭先に落とし穴を作って兄弟で遊んだものだった。
子供ながらにちょっとしたスリルがあり、すぐにばれているのだけど、わざと落とし穴にはまって喜んで遊んでいた。
子供が作る落とし穴は、どう作ったところで深さが知れている。
それに、純粋に落とし穴を楽しんでいたと思う。
ところが大人になった今、場合によっては奈落の底程ある落とし穴が存在するらしい。
だから、真剣勝負で落とし穴があるのだ。それも当たり前のように、いたるところにあるらしいのだ。『一寸先は闇』とはよく言うもので、落とし穴に落ちてしまうと、本当に闇になってしまうらしい。
さっきも1人、通りの向こう側で落ちた人を偶然、見かけてしまった。
その人は、普通に歩道を歩いていた。そして、突然姿を消したのだ。
『あの落とし穴は、相当深かったんだろうな。立ち止まって出てくるのを待っていたのだけど、5分しても出てこなかった。お~、こわい。あの人は今後どうなるのだろう?心配だ』
そして、私も会社でちょっと油断をしたばかりに、ついに落とし穴にはまってしまった。
比較的に浅いものだったが、油断をしてしまったのだ。
『気をつけなければ』
なんとか、這い出ることはできたものの、その落とし穴は、私の背丈ほどあったように思えた。
この世の中、このような企みで人を落し穴に落とす人達が増えたのだ。
『ほら、またあそこで。。。。。落ちた人がいる』
嫌な世の中になったもんだ。
― F i n ―




