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電化製品

誰でもこんな電化製品は欲しいでしょう。。。私の旦那が捜していた電化製品は、。。。(私のショート・ショート第78弾です。)作品公開日2011/08/17


電化製品


「いらっしゃいませ」


私と旦那は店員さんの清清しい声を聞きながら、店内に足を踏み入れた。


私達は結婚して9年になる。一緒になって9年ともなれば、旦那の嫌な面も数多くみえてしまうものだ。そんな旦那が珍しく一緒に出掛けようと言い、この電気店に来たのだった。


旦那は私のご機嫌取りに、私が電気店を好きなのを理由に誘ったのだろうと思ったのだった。


そんな私達はお店の中に入ってからすぐに、別行動をとり始めた。


私は特に目当ての品などあるはずなく、適当に歩きはじめた。


久し振りにくる電気屋さんにいくぶん気持が高ぶり始めていた。


『どこにどんな製品が置いているのか、私自身で見て歩いて捜すのもささやかな楽しみなのよね』


広い店内をあちらこちら歩き回り、ついに面白そうな製品の前に来た。


すると、すぐにひとりの店員に近寄られた。


「いらっしゃいませ。今日、この製品が特売となっております。いかがですか?」


「あらっ、この商品は知っていますよ」


私はついつい知ったかぶりをしてしまった。


「あっ、ご存知でしたか。。。この商品は、半年ほど前に発売されたものなので、ご存知になられていて嬉しいです」


私は近付いてきた店員を捕まえてこの製品に対して、興味津々、いくつか質問を始めた。


「だけど、どうして、この製品は特売なの?」


「それは、新しいタイプが出てきたからです。今のこの世の中、あっという間に新しい製品がでてくるものですから」


「そうよね。確かに以前と比べて、加速度的に新しい製品が登場しているような気がするわ」


「そうなんです。ですから、こうやってすぐに旧タイプになってしまったものを特売品として売り出すしかないのですよ」


店員の苦労も伺えるようだ。


「でも、以前のタイプとどこが違うの?」


「これは、今までと違って、新鮮な緑の濃い空気を取り入れ、リフレッシュ出来るように工夫された製品となっています。以前の製品では、ただ洗うだけでしたから。。。」


「試してみることは出来るのかしら?」


「もちろん、可能ですよ」


私は洗濯機のような機械の中に入り込んだ。


「それでは、スイッチを入れますよ」


窓の外側から店員が覗きこみ、私は頷いた。


すると、回転が始まり居心地のよい、のびのびする雰囲気の中で眠りについてしまった。


いつの間にか扉を開けた店員に、肩を叩かれ起された。


「お客さん。いかがですか?」


「なんだかわからないけど、すごくすっきりした気分になっているわ」


「そうでしょう。。。これは、心の洗濯をしてくれる機械ですよ」


「確かに心の洗濯ができたみたいで、リフレッシュにはもってこいね。このほかに、お薦めの商品はないのかしら?」


「もちろん、ありますよ。それではこちらの商品はいかがでしょう?」


その店員の後をついて行くと、アイロンが置いてあるコーナーだった。


「これは、ふつうのアイロンじゃないの?」


「いえいえ、これはふつうのアイロンとは違います。お試しになられますか?」


「折角だから、試してみます」


店員はそのコンセントを接続し、電源を入れた。


「ちょっと失礼致します」


そう言って店員が、私のコメカミとほほにスチームの出たアイロンをあてがう。


そのあとで私は、鏡を見て確認をする。


「いかがですか?目じりのカラスの足跡も、ほうれい線も無くなりましたでしょ?」


「確かに凄い。。。」


私のこめかみのしわもほうれい線も伸ばされて、つやつやした肌に生まれ変わっている。


「ほかにもこのような面白い商品はあるのかしら?」


「もちろん、まだまだありますよ。」


店員は私をその商品の置き場まで案内してくれた。


ちょっと時代遅れな商品になります。


それじゃ、スイッチを入れますよ。


私はその前に立ち涼んだ。


「以外に涼しいわね。でも、これはどんな効果を期待できるのかしら?」


「これは、あなた様の髪の毛が自動的に仕上がるように設定された扇風機になります。」


「鏡でみると、流行りのミディアム・パーマに変わっている。本当に面白いわね。どれかを買いたくなるわ。でも、まだ他にも面白い商品はあるのでしょ?」


私の貪欲な心がどんどん湧き上がってくる。


「では、とっておきの商品を紹介しますよ。」


店員の後ろをついていく。次の置き場は、大きい冷蔵庫ほどの重厚な金属性で出来た箱の前だった。箱の外側にはいくつかのボタンが並んでいて、磨きあげられたステンレスでできた品物だった。


「これは何なのかしら?」


「まあ、とりあえず、お試しになりますか?」


「ええ、もちろん試します。」


貪欲さを呈した私は、店員の不適な笑みが少しばかり気になったものの、促されるままその箱の中に入った。


「それでは、扉を閉めますね。」


箱の中は鏡らしきものが、四方八方にあるだけだった。


しかし、店員が扉を閉めたにもかかわらず、金属製の箱の中は明るかった。どうやってこの灯りがきているのかは、わからなかった。


「ちょっと、設定を致しますのでしばらくお待ちくださいね」


それから、しばらくすると外側にいる店員から声がかかった。


「それでは、動かしますからね。ちょっと、眩しいので目を閉じていてください」


店員に言われたように目を閉じていると、眩しい光に包まれた。


すると、見る間に私と同じ私がすぐ隣に現れた。


扉を開ける店員。


「どうです?これはいかがですか?ちょっとお高いですが。。。」


「でも、コピーされたわたしはずいぶんとおとなしそうなひとですね。」


「ええ、性格はいかようにも設定できますので、ご主人に設定していただきました」


いつの間にか旦那がこの場所に来ていた。


それから、そばにいた旦那がなにやら店員とこそこそ話をしている。


何を話しているのかまったく聞き取れずに、私が眉間に皺を寄せて旦那を見つめていると。。。


いきなり、もう1度扉を閉められ、すぐさま眩しい光が。。。




すると、旦那の好みである『おとなしい私』だけがその場に残されていた。




― F i n ―

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