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切手

こんな切手はいかが?

切手




郵○事業が苦戦するなか新たな切手が発売された。その名前は『貼り切手』


それに因み、各郵○局では『貼り切手!』、『はりきって』、『ハリキッテ』などと、ばらばらでポスターなどにて宣伝し始めた。そこで郵○株式会社では、統一性を持たすためとその売上を伸ばすために、キャッチコピーの一般募集を行ったのだった。


そして選ばれたキャッチコピーは、


『ねぇ、貼り切手ね!』


このキャッチコピーは会社の復活と民衆に元気を与える意味あいを込めて選ばれた。


そのかいがあって、少しづつ知名度を上げていったのだった。


この切手は普通の切手と違っていた。


何が違うかと言うと、クジ付き切手なのだった。


それは2重構造になっており、貼ったあとに表面だけが剥がれるようになっていた。そして、その剥がした方に『当たり』が出れば、何かが体験できるものと交換できるのだった。


ただその切手は貼ってすぐに剥がれるものではなかった。


ようするに、郵○株式会社だけに一度回収されて配達されなければならず、その時に特殊な工程を通過することによって、剥がすことができるようになっていたのだった。


その当たりの体験は公表されておらず、民衆の興味を掻き立てるのに充分だった。


『一体、何を体験できるのかしら?』


『結構すごい体験ができるらしいぞ』


自分はその『貼り切手』の当たりをどういう訳か引き当ててみたかった。


そのために毎月毎月、なけなしの小遣いをかなり使ってしまっていた。


「あなたぁ。その『貼り切手』のためにいくらお金を使っていると思っているのよ」


妻はついに怒りだしていた。


「あぁ、わかっているよ。でも、もうちょっとだけ買わせてくれよ」


確かに頭では解ってはいるがここまで買い続けて止められるものではない。


自分で購入し、自分宛に手紙を出す。


なんとも馬鹿馬鹿しいことではあるが、当たりが欲しいからこそ、仕方がなく続けてきたことだった。


そして、ついについにその時を迎えた。


「やったぁ、やったぁ!!ついに当たりを引いたぞ」


自分は急いで郵○局に向かい、当たり券とそのものと交換し、それとともにその説明書をもらった。


それはとても小さな丸い透明なカプセルだった。


『なんだこれ?』


『かなり使って当てたものがこれ?』


とにかく、家に帰る途中の公園で説明書を読んでみた。


『なるほど、。。。』


カプセルを無くさないようにズボンのポケットに入れて家に持ち帰り、半信半疑ながらも、翌日の朝に試すことにした。


そして朝食の前に例のカプセルの威力を試すために取り出し、妻の目の前で願いを込めて開けてみた。


一時、きな臭い煙りが立ち上がったが、ただそれだけだった。


「朝っぱらから、何してるのよ」


しかめっつらした妻の顔が目の前に見てとれた。


やはりそんな効果など夢のまた夢なのかも知れない。


朝食を済ませ、会社に向かうために玄関に向かった。


いつものように、期待せずに肩を落としながら声を出す。


「それじゃ、行ってくるよ」


するとそのいつもと違うことが起こり始めていた。


後ろから、それこそ長い間、聞いていなかった妻の甘ったるい声が聞こえてきたのだった。


「ねえ、。。。あなたぁ。。。『張り切って』、行ってらっしゃい!」


なんだか魔法にかけられたような気分だった。


『どんなにこの言葉で頑張れる気持ちになることか。。。』


自分は驚きと共に振り返ると、妻がにこやかな笑顔で両手を握りしめ肘を伸ばして、うっとりとする目つきとともに目をぱちぱちさせながら自分を見つめていた。


自分は驚きの眼差しで妻を見つめ返した。


これぞ貼り切手の『当たり』効果なのだ。


自分は嬉しさのあまり、声がうわずってしまった。


「行って、。。。行ってきます」


妻にいつまで、この絶大なる効果が持続するのかがすごく気になるが。。。


『できるだけ長く続いて欲しい』


『また、たくさん買い込んで、「貼り切手」の当たりを当てなくては、。。。』


ひとり心の中で呟いていた。


このようにして、不仲な各家庭で『貼り切手』の当たりを目指し沢山の購入がなされたのだった。


そのおかげで郵○株式会社はと言うと。。。


売上げがうなぎ登りになっていった。


このようにして、電子テクノロジーの媒体を抑え、昔ながらの郵○事業の持ち直しがなされたのだった。




ー Fin ー


H27.10.12.投稿作品

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